トラブルメーカーってあいつのためにある言葉だわ。 ー潮田大翔ー
「よし! じゃあ次はぶつかり稽古だ!! 各自、くじを引いてペアを組むように!!」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
全身は汗だく、足には力が入らない。これでウォーミングアップだ。きつすぎる。
俺はフラフラになりながらも前にあるくじを引いた。結果は……
「よぉぉし! 潮田大翔! かかってこい!! この多田拓に勝てるかなぁ~?」
お前かよ。
「よし! じゃあー……初め!!」
教官が首にかけた笛に口をつけようとしたとき、女性の職員が教官のもとへ駆け寄り、なにやら教官に耳打ちした。
「施設内にノゲムが現れました。一応避難をお願いします」
「なにっ? ノ、ノゲムだと!?」
「はい、『ギアノゲム』です。まだ一体しかいませんが、早く対処しないと、合体して形態変化をする恐れがあります」
「周りにゲットリッダーは?」
「ロウルフさんに声をかけています」
「お、今日も来ているのか……うん、良い機会かもしれんな……」
教官は俺らに体を向けた。
「よし! 今から大空、ゲットリッダー・ロウルフのノゲム駆除の見学をする! ついてこい!」
避難しろと言われたろ……まあ、あんな強いゲットリッダーが対処するなら、被害もないか。
俺は心の中で愚痴を吐きながら、仕方なく教官の後をついていった。
俺たちが現場に向かうと、既に大空さんはゲットリッダー・ロウルフに変身していて、地面でクルクル回っている何かを今にも殺そうとしていた。掌に収まらないぐらいのサイズ、例えるならMサイズのピザぐらいの、歯車のような形状のノゲムだ。
俺たちは少し離れたところからその様子を恐る恐る見ていた。
「なんだこの程度か。これなら見学にもならんかもな」
教官が残念そうに言った。
「ん? なんだこれ」
横から突然素っ頓狂な声がした。声のした方向を見ると、低木の茂みの側、多田がかがんで何かを手にとっていた。
「教官、これなんでしょ?」
多田はそれを教官に持ち寄り、緊張感のない声で質問する。
気のせいか、それは今ロウルフが殺そうとしているノゲムに似た物体だった。しかしそれはまるで壊れてしまった機械の部品のように、一ミリも動いていない。
「お、お前! 早くそれをしまえ!!」
多田の手のひらにある物体を見た瞬間、突然教官は血相を変えて多田を怒鳴った。
突然の怒声に俺の体はビクっと動く。何がなんだかさっぱり分からない。
俺だけでなく、数人のチームメイト、施設の職員、そしてロウルフもこちらに目を向ける。周囲が戸惑っていたとき、ノゲムも同じように多田の手のひらを見た。
「キィィィァアァァァ!!」
突然ノゲムが奇声をあげ、暴れた。
「っ……!」
ロウルフは少し戸惑ったものの、すぐに落ち着きを取り戻し、ノゲムの腹を、手にはめた大きな針のような武器で突き刺した。
ノゲムは動かなくなり、多田の持っている物体と同じようになった。
「おい何をしている!」
「え……あ……え……」
ロウルフも多田に怒鳴り、多田はただただおどおどしている。
「多幾! 見習いを避難させろ! すぐに大群が来る!」
ロウルフは必死な声を上げる。段々と、今のこの状況の深刻さが分かってきた。
「あ、あぁ分かった!! お前ら!! 俺についてこい!」
「は、はいっ!」
俺たちは急いで現場を離れた。
必死に走る俺たちの後ろからは、キュルキュルと気味の悪い音が聞こえ、それは次第に大きくなっていった。




