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第4話 魔王の昔話

まず神が世界を作った。


その世界の中に光と闇を作った。

そこに大地と空と海を作った。

そして、生命を作った。

昼と夜を作り、昼に闇の者が困らないように太陽を作り、影ができるようにした。

夜に光の者が困らないように月を作り、夜が完全な暗闇にならないようにした。

いろいろ世界を構築していくなか、生命の1つの形として、人と魔物を作った。そしてそれぞれを助ける為に始まりの勇者と魔王が作られた。


始まりの魔王は誕生の時に神に名付けられたと言う。

「神は余達を名付けた後、光が無ければ闇は存在せず、闇がなければ光は自らを光と認識できないと言い、互いに互いを完全に染めることはできぬ。それがこの世界の(ことわり)それだけだ。と言って、後は何も我らに声をかけることはなかった」


始まりの魔王は神からの役割を果たしていた。

暗い土地でしか魔力の補給ができず活動出来なかった魔物が、強い魔物に従う事で魔力を貰い、本来動けない土地でも行動できる魔術を作ったり、獣が闇のチカラに触れ魔獣となれるようにしたり、魔力に応じて魔物の種類にランクやクラスを作ったりした。


勇者の方も、人間達に火を使い闇に明かりを灯せる様にしたり、魔力を魔法として人間が扱える様にしたりと、こちらも神からの役割を果たしていた。


長い時を経て世界は秩序を創りだしていた。そして変化した事があった。

人間達は魔物を忌み嫌うようになっていた。

人間は魔物より寿命が短いため、変化し工夫し継承していく能力が魔物より長けている。

魔物が数世代の進化しかしていない時間の流れの中で、人間達はその何倍もの世代が変化を重ねる、自分達の先祖の代から形を変えず、そこに存在する魔物に対する恐怖、畏怖が膨らみ、いつからか人間達は魔物を敵とし、人間のために神が与えた勇者のチカラは魔物を倒す為に改良、強化され使われる様になった。


そしてその矛先として始まりの魔王は人間達の最終目標とされることとなった。

始まりの魔王自体は人間に危害を加えた事はなかったが、人間達は天災や疫病を魔王の仕業として言い伝え、もはや、それが真実と信じるまでになっていた。

宣戦布告があったわけでもなく、魔王を倒すだけでなく魔物は敵の仲間とされ、いつの間にか闘いは人間対魔物の形になり闘いの時代が続いたという。


神が勇者と魔王を作った時に話した、互いに互いを完全に染める事はできないつまり、滅ぼす事はできないのだが、人間側はその言葉を忘れてしまったのか、忘れたかったのか、いつしか闘いに勝てば光の時代が来ると信じるようになっていったという。


「余にも人間にもココロがある。ココロにも強弱があり一部の弱いココロの人間がカタチの違う者を恐怖し、理解しようとせず、闘いを始め、同じ様なココロを持つ者が煽り、大きくしていったのだろう。そして、余を倒す事で自分達は強き者であると思いたかったのだろう」

魔王がつぶやくように言った。

「それって、光の存在の人間に闇があるって事だろ?なんで神は闇の部分を光の存在に付けたんだ?」

「神は人間を光、魔物を闇とは言っておらん。光と闇とは視点によって変わる話、人間にとって光の事が我らにとって闇、またその逆も然り。神が光と闇を創ったのは、人間を含めた我らが不完全である証、完全なる者、つまり神にはなれない証を与えたのだろう。勝手な余の考えだがな。………そろそろ時間の様だ」


「まだいろいろ話を聞きたい。俺は周りから、流れで魔王と言われている。魔王は何をすればいいんだ?」「好きにすれば良い。魔物のために作られた魔王は余だけ。それ以外の魔王の事など余は知らん……さらばだ」

さらばだ、時間だと連呼する、始まりの魔王を消さない為に俺はいろいろ考えた。

「魔力を俺が吸っているなら止めれば消えないよな」


「余は吸われている側だ。止めるとすればお前の方だろう」

確かに。言われてみれば何で魔力を吸ってるんだ?後で考えるとして

「それはそうだけど止め方なんて分かんないし………そうだ、さっき魔力を分け与えれば自由になれるって魔術の話あったな。それを俺とあんたですれば、消えずに済むんじゃないのか?」


「面白い。余を従えるというのだな」


「できるのか?やり方を教えろ」


「わかった魔術は余が唱えてやる、後は簡単だ。余を(しもべ)として迎えると念じろ、成功するか失敗するかいろいろな要素があるが説明してる時間もなさそうだな」

「ずっと念じるからとっととやってくれ」

「では始めるぞ」

魔王の返事を聞く前から、俺はひたすら心の中で(始まりの魔王を俺の(しもべ)として迎える)と念仏のように唱え続けた。

しばらくすると全身から力が抜けて明らか先程と感覚が違う。

「魔王!……っ…どうなった?」

一言発しただけで息が上がるほど疲れている自分に驚きながら、返事のない、しばらくの静寂が、魔術の失敗を表しているかに思えた。


「……どうやら……成功した様だな。もともと今、肉体がなかった余は、お前の精神体にのみ話ができるようだ」

魔王の方も戸惑いがあるようだ。

「よかった〜思いつきだったが上手くいって」

「だがチカラのない余を残してどうする?お前と話をするだけだぞ」

心なしか弱い口調になっている魔王の質問に

「言ったろ。俺はこの世界の事を何も知らないって。あんたの知識や見聞は何も知らない俺にとって貴重なんだよ。まぁ長い付き合いになりそうだからよろしくな。始まりの魔王」

「始まりの魔王はもういない。チカラを失い役目を果たせないからな」

チカラを失い使命がなくなったことで少し覇気がなくなったようだ。


「よし!これからお前に新しい名前をつける!」

居心地の悪い空気を変えたいのと、始まりの魔王って呼ぶのも長いと思っていた俺はそう切り出した。

また名前を付けるのか。自分自身にツッコミながら。ん〜〜。始まりだからとしばらく考えて。

「ファースト!これからファーストと呼ぶ。魔王の知恵袋としてよろしく頼むぞ!」


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