第2話 転生してすぐの話
大声で叫んだあと俺は驚いてこっちを見ている3体の魔物に聞いた。
「ここ座っても良い?」
叫ぶ前、この場所を見渡していた時に自分の右隣に豪勢な椅子があるのは確認していた、ともかく落ち着きたいので相手の返事も聞かずにその椅子に腰掛けた。
ふかふかのその椅子に座って、深呼吸を1回。
まだ唖然としている3体にこの世界の事を全く知らないので教えてくれと頼んだ。
「まずは何から?」
明らかに怯えながら老婆の魔女がきいてきた。
「そうだな、ここはなんてところ?」
すると、ここは遥か昔に勇者たちに倒された魔王の居城で、今は俺の目の前にいる3体しかおらず人間たちからも魔物達からも放って置かれている名もない城だという事。
北に海、西に平野が広がり、東から南にかけては山脈に囲まれている土地に築かれた城だという事。
3体はこの城に必ず魔王が復活するという魔物たちの言い伝えによりそれぞれの種族から選ばれてここに住んでいる事。
「他の魔物はどこにいるの?魔王の復活を待つなら3体は少なくない?」
「他の者たちはそれぞれ別の魔王の配下になるか、自ら眠りにつきその時を待つ者もおります」
霧に覆われている動く鎧が低く渋い声で喋った。
「鎧さんは話せるんだ。それに良い声。そっちの…魔獣でいいのかな?しゃべれるの?」
「はい!ご主人様」
魔獣は若く張りのある声で返事をした。
「そうだ、みんなの名前は?」
「ございません、我々のような下位の魔物は基本的に個体毎に名前はございませんので…」
魔女が恐れ多い感じで俺に話す。
「そうか…呼ぶ時面倒だな……俺が名前ってつけていいかな?」
「魔王様の仰せのままに」
3体は声を揃えてそう言ったあと改めて平伏した。
「じゃあ、魔女はルカ、鎧はミスティ、魔獣はグーリーで」
俺は思いつきと小さい頃読んで覚えていた漫画のキャラクターの名前をつけた。
「ありがとうございます魔王様」
グーリーが感謝の言葉を発すると
「魔王様の誕生が突然過ぎて…さらに個別の名前を頂き少々戸惑っております」
ルカが話しだす。
ルカたちの話によると前触れもなく急な地震があり、地震の影響を確認しようと玉座の間に来たら、卵が玉座の横に出現していて、集まって今後の対応を話し合っていたら、すぐに俺が生まれたという。
みんなにも落ち着く暇などない急な展開だったようだ。
「みんなは何でこの城の、ん〜〜担当でいいのかな?それになったんだ?選ばれたとか言ってたけど、やっぱり魔王の復活を待つ役目なら優秀だからなのか?別の魔王の配下って言ってたし、そこら辺を教えてくれ」
3体がお互いに顔を見合わせ、言葉を探しながら説明してくれた。
この世界では多くの魔物には魔力が必要で、ダンジョンだったり廃墟、墓地といったその土地が持つ魔力を使うパターンと、魔王や上位の魔物や悪魔から契約の様なもの結び魔力を得るパターンとがあるらしく、3体はこの半分朽ちている城から魔力を得ているらしい。
そして、この城は勇者たちが魔王を倒した地にあるので、基本的に浄化されて魔力を宿すような土地ではなく強い魔力を必要とする個体は長く居られない。いくら新しい魔王が生まれる場所と言われても伝承の類、かと言って放っておく事もできず、魔物の中でも扱いに困っていた。そこで3体が選ばれたとの事。
簡単に言うと、高い給料は払えないけど建前があって潰す事もできないから安月給でも文句を言わないやつが仕事を押し付けられたのだなと俺は理解した。
「そうか……」
どの世界にも貧乏くじみたいものを押し付けられる存在があるんだなと転生前の世界の自分とも重なり何とも言えない気分になる。
「魔王様は魔王なんですよね?」
ルカが意を決した表情で聞いてきた。
「ん??」
突然のルカの質問に戸惑いながら、自分もふと思う。
俺は魔王なのか?そもそも魔王って何?
言われてみれば転生するとは言われたけど魔王になった証拠はない。魔王が生まれるという城から突然生まれた存在で…そもそも俺は今の自分がどんな姿なのかもわかってない。
何と答えればいいのか答えに詰まっていると
「申し訳ございません。我々も今存在する魔王様の姿をどなたも見た事がありませんのでつい」
ルカが俺の沈黙を怒りと勘違いして謝ってきたが、返す言葉が本当になかっただけなのだが。
「今存在する魔王って何体、今いるんだ?」
少し話を逸らす事にした。
「実は、我らはもあまりこの城の外のことはよく知らないものでして、何体かいるとしか知らないのです」
ミスティが答えてくれた。
すべてを正直に話をしてくれているみんなに、自分が魔王かわからないとは言い出せなくなっているが、時間が経てばますます話せなくなるものだと思い、
「さっきのルカの……」
自分が魔王かわからないと伝えようとしたのだが、何かの気配を感じ話の途中で
止まってしまった。
確かにこの近くに何かがあってとてもそれが気になって仕方ない。
「この場の向こうに何かあるのか?何かはわからないが感じるんだが」




