第一章 第三話 俺のスキルのデメリットはキスで緩和されます
「ふう、戦闘終了。どうにか女神様を助けることができたな」
デスファンゴを倒した俺は、魔物から離れると女神様のところに戻る。
「お疲れ様。デスファンゴと戦っている姿は、とても恰好良かったですよ」
「ありがとうございます。それで先ほどの行為についてなのですけど」
俺は先ほどのことについて女神様に尋ねる。
スキルを発動後、いつものように頭痛で苦しんでいると、女神様がいきなりディープキスをしてきたのだ。
その後なぜか頭痛は治まり、俺は一人でデスファンゴを倒すことができた。どうしてキスでスキルのデメリットを打ち消すことができたのか、その理由を知る必要がある。
「先ほどの行為とは?」
女神様は首を傾げる。
先ほどの行為って、キスの件に決まっているじゃないですか! 普通察しますよね。でも、俺が言いたいことが伝わっていないみたいだし、ちゃんと言葉にして伝えないといけないのか? でも、口で直接言うのは少しだけ恥かしい。
だけど、一時の恥じでスキルのデメリットが消えた理由を知るのはでかい。なら、少しの羞恥は我慢すべきだよな。
心の中で決心を固めると、女神様を見つめる。
「そんなに熱い視線を向けられると、何だか照れてしまいますね」
尋ねる覚悟を決めると、女神様は両手を頬に持っていき、くねくねと腰を振る。
そんな行動に出られると、せっかく決めた覚悟が揺らぎそうになるな。
ええーい、俺も男だ。言いたいことは早く言え!
「女神様! どうして俺のスキルは、キスで頭痛がなくなったのでしょうか?」
「ああ、そう言えば教えると言いましたね。では、もう一度英知スキルを発動してください」
どうして説明するのに英知のスキルをもう一度発動する必要がある?
疑問に思うものの、言われたようにスキルを発動。
「あ、頭が」
いったいどういうことだ? もう一度スキルを発動したら、再び頭痛がしてくる。
両手で頭を押さえていると、女神様は俺の唇に自身の唇を押しつけ、舌を口内に入れてきた。
俺の舌と女神様の舌が絡まり、触れ合う。すると不思議なことに頭痛が収まり出したのだ。
痛みが感じられなくなった俺は、両手を頭から離す。それを見た女神様は、ディープキスを止めて顔を離した。
「ふふ。これで少しは理解できたかと思いますが、あなたのスキルはキスをすることで頭痛が収まります。ですが、一定の時間が経ち、もう一度スキルを発動させると、再び頭痛が発生するのです」
「そんな! では、スキルを使ってまともに戦おうとするならば、誰かとキスをしないといけなくなるではないですか!」
スキルを使えば、デメリットである頭痛が発生する代わりに、様々な知識を習得することができる。そのデメリットも、キスをすれば一時的に緩和することができるのだ。
だからと言って、スキルを発動する度にそこら辺の女性にキスを迫れば、強制猥褻をする犯罪者だ。
つまり俺は、結局のところまともにスキルが使えないままだ。
くそう。せっかくまともにスキルが使える方法が見つかったと思ったのに。
「別に頭痛を失くす方法は、キスだけというわけではないですよ」
「それは本当ですか!」
キス意外にも頭痛を失くす方法があると知り、俺は顔を綻ばせる。
強制猥褻意外でも頭痛がなくなるのであれば、まだ俺のスキルに価値を見出すことができる!
「そうですね。どうしましょう」
女神様は、右手人差し指を頬に持っていくと、軽く首を傾げた。
「やっぱり内緒です。知らないほうが面白そうなので」
「イジワルしないで教えてくださいよ!」
犯罪者になるのはごめんだ。こうなったら、どんな手を使ってでも女神様に教えてもらう。
「教えてくれないと、悪戯しちゃいますよ」
両手を前に出し、俺は厭らしい手つきで指を曲げる。
「ハァー、分かりました。ではヒントを上げます。なので、あとはあなた自身で考えてください。甘やかすと、人は成長しませんので」
俺の行動に呆れたのか、女神様は溜息を吐くとヒントを教えてくれた。
「人の脳は意外と単純で、複数の感覚が一緒に来ると、優先順位をつける機能があります。感覚の優先順位は一番に運動、二番触覚、三番痛み、四番冷覚、五番かゆみです。これらの感覚が同時に感じると、上位の者を優先的に感じようとするのです。痛みを感じたときにその箇所を手で擦ることで、痛みの感覚よりも触ったという感触を脳が大切だと認識して痛みが減ると言うことです」
「えーとつまり、キスをして唇が触れたことで、脳が頭痛よりも触れた唇の感触を最優先にしたから痛みがなくなったということですよね。それがどうしてヒントになるのですか?」
「考えなさい。きっとあなたなら、答えに辿り着けると思うわ。私はそろそろ次の場所に向かうわね。あなたは一人でデスファンゴを倒す実力があります。きっとこの森を抜けることができるでしょう」
女神様は優しく微笑むと、顔を近づかせてきた。そして俺の頬に柔らかくも温かく、若干の湿り気のあるものが触れると、彼女は顔を離した。
「それが最後のヒントよ。あとは頑張ってね」
もう一度微笑むと、女神様はゆっくりと歩き出し、俺から離れていく。
彼女の唇が触れた頬に手を置きながら、俺は女神様が視界から外れるまで見つめていた。
「唇意外でもキスさえしてもらえればいいってことなのかよ。それじゃあ根本的な解決にならないじゃないか」
キス意外の道しかないのだという結論にいたった俺は肩を落とす。
「本当にこんなので、魔の森を抜けられるのかよ」
とにかく今は森の出口に向かうしかない。
少しの不安を抱えながらも、俺は森の外に脱出するために歩き始める。
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