第一章 第二話 女神様のご奉仕でHスキルが条件付きで使えれるようになりました
俺を助けてくれた女性は、長いクリーム色の髪に白い肌の女性だった。胸は大きく、俺に向けて優しい笑みを浮かべている。その存在自体が、まるでこの世の男たちによる願望すべてが備わっているのかと思うほど、美しいと思ってしまう。
「助けてくれてありがとうございました。俺はユーゴ・クラークです。あなたは?」
「わたしの名はエウリュアレ、久しぶりに下界の様子を見に来た通りすがりの女神です」
「女神様!」
思わず声を荒げてしまう。俺を助けてくれた女性は、自ら女神だと名乗った。普通であれば、そんな抽象的な存在を名乗られても信じる気が起きない。だけど、彼女の身体のパーツひとつひとつを見ても、人間離れをした美しさだ。
それに死にかけていた俺を助けてくれたことを考えても、あれは人間離れをしている。
それらから考察しても、彼女が嘘を言ってはいないはずだ。つまり、彼女は本物の神様なのだ。
「どうやら元気になられたようですね。よかった」
「はい。本当にありがとうございます。ところで、女神様はどうしてこのような危険な森にいるのですか?」
「それは最近下界にいる魔物が狂暴化し始めているので、わたしの上司からその調査を頼まれたのです。手始めにこの森から調査を始めようと思ったところに、あなたが生ごみを被って倒れていたので助けたというわけです」
女神様の言葉に、俺は斬られる前に生ごみをぶちまけられたことを思い出す。
そう言えば、俺って臭い身体のまま女神様と話しているじゃないか。それはあまりに失礼すぎないか?
「すみません。生ごみ臭い中、お話なんかしてしまって」
「別にそれはいいのですが。そうですね、あなたが気になるのであれば……ウォーター」
女神様が呪文を唱えた瞬間、水が出現する。その水は俺の身体を包み込んだ。
「女神様、これはいったい?」
「直ぐに終わります。もしかしたらくすぐったいかもしれないですが、我慢してくださいね……ソープ」
今度は俺を覆っている水の中に泡が出現し、泡入りの水が渦を巻く。
しばらくすると水は俺から離れる。どうやら俺の身体の汚れを取り除いてくれたようだ。水は少し汚れていた。
「最後に仕上げといきましょう……フロー」
今度は俺の周囲に風が吹き、濡れていた衣服が瞬く間に乾く。
「これで綺麗になったでしょう」
「ありがとうございます。女神様」
「いえ、いえ、これも女神として当然のことです」
女神様にお礼を言っていると、俺はどこからか魔物の気配を感じ取る。
失礼ながらも、俺は女神様に背を向けると構えた。
どうする? 魔の森にいる魔物たちは強敵ばかりだ。女神様は俺がお守りしなければ。
敵がいつ現れるか分からないが、ここは気合で頭痛に耐えてでも、スキルを使うべきだろうな。
「スキル発動!」
スキルが発動したことを知らせる頭痛が発生し、俺は頭を抑える。
「どうしたのですか? 急に頭を押さえて?」
「こんな……姿を……見せてすみません。俺のスキルは……発動すると……頭痛がするので」
「もしかして英知スキルですか?」
どうして俺が頭を押さえているのか、その理由を説明すると、女神様は俺のスキルを言い当てる。
もしかして、女神様は英知スキルのことを知っているのか?
「は……い……そう……ですが」
「そうですか。ならユーゴ、こっちを向いてもらえますか?」
彼女の問いに答えると、女神様は自分のほうを向くように言ってきた。
こんなときにどうしたのだろうか? だけど女神様の言うことを無視するわけにはいかない。
俺は踵を返して女神様のほうに振り向く。その刹那、彼女の顔が目の前にあった。
驚いた俺は声に出すことができなかったが、口を開ける。すると女神様は、自身の唇を俺に押し当てた。
「!」
頭痛と驚きで身動きが取れない中、女神様のマシュマロのような柔らかい唇の感触だけ、脳が認識する。
唇ってこんなに柔らかいんだ。
そんなことを考えていると、俺の口内に何かが侵入してくる。それが女神様の舌だと分かると、彼女の舌は俺の上顎のザラザラした部分に刺激を与えてきた。
性感帯を撫でられ、なんとも表現しづらい気持ちよさに、思わず身体がビクンとなる。
しばらくすると女神様は口を離す。
俺と彼女の口は、透明な液体の橋でつながっていたが、それもやがてプツンと切れた。
「め、女神様!いったい何を!」
激しく脈打つ心臓の音が聞こえる中、女神様に問う。身体中も熱い。おそらく顔のほうは真赤になっているだろう。
「詳しい話は後でしますが、一時的に頭痛が起きなくさせました。これで暫くはまともに戦えられるかと思います」
あれ? そう言えば、いつの間にか頭痛がしなくなった。これなら上手く戦えられるかもしれない。
再び女神様に背を向けると、気配を発していた魔物が姿を現す。
体長三メートルはあるだろうか。口元に大きく太い牙が二本あり、手には棍棒を握っている二足歩行のイノシシだ。
「デスファンゴ!」
『ブヒー! こんなところで人間と出くわすとは運がいい。俺様が食ってやる!』
敵を視認した瞬間、デスファンゴの情報が脳に流れ込んでくる。
魔物の情報を得た俺は口角を上げた。
「魔物と言ってもイノシシじゃないか。獣が人間に勝てるわけがないだろう」
『ブヒー! 何を言う! どこからどう見ても弱そうじゃないか! お前なんか十秒で片付けてやる』
「だったら来いよ! お前程度の攻撃なんか、かすりもしないからな」
右手を前に出して手の平を上にすると、指をクイックイッと曲げる。
『ならばお望みどうりに殺してやるブヒー!』
デスファンゴが接近すると同時に俺も前に出る。
『死ね! ブヒー!』
魔物は握っている棍棒を振り下ろす。しかし、俺は一度後方に下がると攻撃を一度躱し、そのまま円を描くように走って背後を取った。
すかさず懐に忍ばせていた短剣を握り、背後から斬りつける。
『イテー!』
「お前たちデスファンゴは、基本的に攻撃は大振りだ。棍棒の軌道さえ見えていれば、躱すことは容易。そして頭に血が上りやすく、挑発に乗りやすいバカだ」
『俺様を傷つけただけで調子に乗るなよ! 人間如きが!』
ほらみろ! 言ったとおりに頭に血が上って挑発に乗っているじゃないか。これだから獣は単純なんだよな。
再びデスファンゴが棍棒を振り下ろす。そうとう腕に力を入れた渾身の一撃だったようだ。
振り下ろされた棍棒は地面を砕き、蜘蛛の巣状にヒビを入れる。
『しまった! 武器が地面に食い込んで抜けない!』
本当にバカだな。まんまと俺に誘導されている。デスファンゴは持っている得物に執着する。攻撃は基本的に獲物でしかしない。つまり、地面に食い込んだ棍棒を引き抜くことに必死になって、周囲が見えなくなるということだ。
与えられた知識どおりに、デスファンゴは棍棒を引き抜くことに必死になっている。弱点を衝くなら今の内だ。
魔物の背後に回ると、背を蹴って跳躍する。デスファンゴを踏み台にした直後、俺は短剣を構えてやつの首の後ろを斬りつけた。
『ブヒイイイイイイイイイイィィィィィィィィィィ!』
デスファンゴが断末魔の悲鳴を上げ、地面に倒れる。傷口からはドクドクと血液が流れ、止まる気配を見せなかった。
やつの首の後ろには太い血管が集中している。そこを斬られると出血が止まらなり、やがて死ぬのだ。
「ほら、お前に触れられることなく倒しただろう? 俺がスキルを発動した段階で、お前の敗北は既に決まっていたことなんだ」
俺は無様に地面に倒れているデスファンゴに言葉をかける。
だけどまぁ、話したところで聞こえていないよな。既に死んでいるのだから。
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物語の続きは明日の八時代に投稿予定です。
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