第二章 第四話 ダンジョンの主
新しくできたダンジョンの調査をする依頼を受けた俺とアリアは、洞窟の中を突き進んでいる。
しかし、今まで出会った魔物は、俺からすればザコとしか言いようがない敵ばかりだ。勇者パーティーと呼ばれたイアソンたちからすれば、ここにいる魔物たちは片目を瞑っても簡単に倒せれるはずなのに、彼らは行方不明状態になっている。
本当に不思議だ。どうしてこんなザコしかいないダンジョンで行方がわからなくなるのだろうか?
だけど、油断は禁物と言う言葉もある。慢心しないようにしなければな。
「あのう、ユーゴさん。非常に言い辛いのですけど」
「何だ?」
アリアが顔を朱に染めながら、言い辛そうにしている。もしかして熱でもあるのだろうか。それならば、ダンジョン内の調査をしている場合ではない。
風邪を引いた可能性を考慮した俺は、彼女の前髪を掻き上げる。
「ま、待ってください。まだ心の準備が!」
前髪を掻き上げた瞬間、アリアが待つように言う。だけどそんなことをしている余裕は今の俺にはない。彼女の言葉を無視して、俺は額をくっ付けた。
「別に熱はないな。ということは風邪ではないか」
額を離してアリアを見ると、彼女は先ほどよりも顔を赤くしている。
「いきなりは反則ですよ。それに危うく勘違いをしてしまいそうになったじゃないですか」
アリアがぶつぶつと小声で何かを言い出す。
「熱でもないとすると体調でも崩したか?」
「いえ、まだ大丈夫です。寧ろ、今ので元気になりました」
「それじゃあ、どうして言い辛そうにしていたんだ?」
「そ、それは……急に臭ってきたから、もしかしてユーゴさんがオナラをしたのかな? と思って」
両手の人差し指を合わせながら、アリアは言い辛かった理由を教える。
「いや、俺はオナラをしていないが……確かに匂うな」
俺は鼻をひくひくと動かし、周辺の臭いを嗅いでみる。僅かに腐った肉の臭いを感じ取った。
「この先に腐敗臭がするな。アリア、ハンカチなんかで鼻を塞いでいたほうがよさそうだ」
「ユーゴさんの返り血を拭き取ったものならありますが」
ポケットから魔物の血液が付着したハンカチを取り出し、俺にみせる。
そういえば、彼女は吸血コウモリの返り血を拭くのに使ってくれたんだったな。仕方がない。ここは俺のを渡すか。
「俺ので悪いけれど、これを使ってくれ」
「本当ですか! ありがとうございます! クンクン。ああ、ユーゴさんの匂いがします」
俺の匂いって? そのハンカチは洗濯したばかりだから、何も匂わないはずなのだけどな。
苦笑いを浮かべつつも、俺たちは先に進む。
ある程度奥に進んだころ、俺は身体に変化が起きていることに気づく。
可笑しい。腐敗臭が強くなる度に、何故か知らないがイライラしてしまう。意識をしっかりと保っていなければ、何かの拍子にアリアを怒鳴ってしまいそうだ。
いくらなんでも、精神に異常を来すほどのこの臭いには何かがある。
「流石にこの臭いは可笑しいぞ! 英知スキル発動! くっ」
スキルを発動した直後に、俺が欲しい情報が頭の中に雪崩れ込んでくる。しかし、それと引き換えに、頭痛が発生した。
ダンジョン内に入る前に、アリアとキスをしたっていうのに、もう効果が切れたのかよ。
「ユーゴさん、もしかして」
頭痛で顔を歪めてしまったからか、アリアが気付いてしまった。
「だ、大丈夫だ。問題ない」
「もう、我慢は身体に毒ですよ! 我慢しないで遠慮なく言ってください。私たちは夫婦なのですからね」
アリアが俺の腕を引っ張り、彼女のほうに振り向かせる。そしてアリアは、爪先立ちをして己の唇を俺の唇に押し当てる。
その瞬間、頭痛は嘘のように消え去った。
「ありがとう」
「もう、次からはキスをしたいときはいつでも言ってください。私の身体はユーゴさんのものなのですからね」
彼女の言葉に、嬉しいような、もっと自分を大切にして欲しいような複雑な気分になる。
だけど今ので、ある程度は自由にスキルを使えるようになった。先ほどのスキルで、この臭いはデスライガーの体内から発生させられる臭いだということが判明した。
デスライガーの悪臭の正体は、体内にあるプロピオン酸が原因だ。
プロピオン酸は酸味のある腐敗や嘔吐物の臭いが特徴であり、デスライガーの場合は口や鼻、耳や肛門などの穴から常にその臭いが漏れ出ている。
その臭いの元となる物質を鼻から吸い込むことによって、脳へと情報が直接届けらる。そして刺激を受けると、今の俺のように苛立ちが募る状態に陥ってしまう。
やつはこの臭いを嗅いだ得物が騒ぐのを察知し、近づいてさらにイライラさせる。
そして疲れさせて動きが鈍くなったところを捕食するのだ。
「原因がわかってしまえばこっちのものだ。英知スキル発動! ウィンド!」
スキルで得た魔法を発動させ、進行方向に風を送る。
イライラしてしまうのは、臭い物質を吸引してしまうからだ。
プロピオン酸さえ吸い込まなければ、精神汚染をされることはない。
風上にいる状態を常に維持しつつ、俺たちは前進していく。
しばらく歩いていると、広い空間に出た。そして俺はこの場にいる敵に対して構えをとる。
おそらく、ここのダンジョンの主だろう。
体長六メートルの四足歩行の生き物だ。顔はライオン、身体が虎であるライガーに翼が生えているが、その肉体の半分は腐っており、骨が剥き出しになっている。
『ガオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォン』
デスライガーが俺たちに気付き、勇ましく吠える。
「多分、ここが終着点だろうな。ここのマッピングを終わらせれば、依頼完了だ!」
「最後まで読んでいただきありがとうございます。アリア・クルスです。今日は作者さんの代わりに後書きというものを担当させてもらいます。もし、今回のお話が『面白かった!』『ユーゴさんはデスライガーを倒せるの! 展開が気になる!』と思いましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援をお願いします!」
作品のお願いをしたのちに、私は両手を前に出し、片方の手の人差し指を出します。
「面白かったら☆五つ、つまらないと思ったら☆ひとつでも大丈夫です! あなたの感じた評価をしていただけると、作者さんのモチベーションが上がり、今後のパフォーマンス向上にも繋がるようなのです」
続いて私は、両手を右下の方にもっていきます。
「右下にあるブックマーク登録もしていただければ嬉しいです! どうかよろしくお願いします!」
ふぅ、これで終わりですね。ああ! そういえば、もう一つ言うことがありました!
「作者さんのもう一つの作品『Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る』も連載しております! 広告の下に作品のタイトルがありますので、そちらをクリック、またはタップをしていただくと、こちらの作品が読めるようになっています! よろしければ、こちらも読んでくださいね!」
最後に伝えるべきことを伝えた私は頭を下げます。
「ではでは、アリアでした!」




