第二章 第二話 イアソンが戻って来ないので、同じ依頼を受けることになった
「よかったですね。宿屋のおばちゃんの誤解が解けて」
「ああ、本当によかったよ。これで一応野宿は免れた」
「ユーゴさんはこれからどうするのですか?」
宿屋のベッドで横になりながら、アリアが今後の方針を訪ねてくる。
「そうだな。一応、旅費を稼いでおきたいから、ギルドで依頼を受けようと思う。ある程度纏まったお金が入ったら、この町を出るよ」
「それなら、私が所属している教会がある町に行きましょう! 魔の森での結果報告もしないといけないですし」
アリアが所属している教会のある町か。別に目的があるわけでもないし、次の目的地はそこにするか。それに可能性は低くとも、教会なら、呪いを解くヒントがあるかもしれない。
「わかった。別に次の目的地を決めていたわけでもないからそうしよう」
「やった。これでユーゴさんを教会に連れていくことができます。あとは神父にキスのことを話し、正式に婚儀を行えば丸く収まります」
彼女の行きたい場所に行くことを告げると、アリアはぶつぶつと何かを呟いた。
少しだけだが、教会や神父といった言葉が耳に入った。
きっと結果報告の内容を呟いているのだろうな。
「明日はギルドで依頼を受けるから、今日は早く寝るとしよう」
「はーい!」
部屋の明かりを消して就寝しようとすると、アリアが俺のベッドに潜り込んでくる。
「なぁ、アリア? どうして俺のベッドに入る?」
「だって、夫婦なのですから、同じベッドで寝るのは普通じゃないですか」
「例え呪いで契約が成立していたとしても、別々のベッドで寝てくれ」
「むう、一緒に寝るぐらいいいじゃないですか。ユーゴさんのケチ」
「はいはい、好きなように言ってくれ。俺はもう寝るからな。おやすみ」
アリアに背を向けると、俺は両の瞼を瞑って眠りに就いた。
翌朝、俺は目を覚ますと視界がぼやけていた。
変な寝方をして眼球を圧迫してしまったのだろうか?
しばらく待ってみると、視界が良好になった。
そしてアリアが寝ているベッドを見ると、そこには彼女の姿がない。
もしかしてトイレにでも行っているのだろうか? ここの宿屋はトイレは共同になっているから、わざわざ部屋から出ないといけないものな。
それにしてもまだ眠い。もう少しだけ寝ようかな。
二度寝をしようと思ったそのとき、俺の右手は何かを掴んでいることに気づく。
うん? 何だこの柔らかくも、少し弾力があり、ちょうど手に収まるぐらいのものは? こんなものをベッドの中に置いていたか?
手が触れたものの正体を知るべく、俺は身体の体勢を横にして側臥位に変える。その瞬間、俺の心臓の鼓動は激しく高鳴った。
ど、ど、どうしてアリアが俺の横に寝ている! まさか!
掛け布団を剥いで、俺は状況を確かめる。すると、嫌な予感は的中した。
そう、俺が触っているのは彼女の胸だった。
アリアが起きないうちに早く手を離さなければ!
いくら呪いの契約で夫婦のようなものになったとしても、こんな場面を目撃されては、俺が性欲に負けて処理をしようと思われるに決まっている!
鼓動の高鳴りが聞こえる中、俺は手を話そうとする。
その瞬間、アリアの瞼が開いた。
驚いた俺は、咄嗟に両手を天井に向ける。
「あ、ユーゴさんおはようございます」
「お、おはよう……って、どうしてアリアは俺のベッドで寝ている! 入ってくるなと言っていたじゃないか!」
「こ、これは……そのう……そうです。呪いです。呪いにより私の身体が勝手に動いてしまったのですよ。やっぱり夫婦は同じベッドで寝ないといけないですね」
本当に呪いの影響で俺の横で寝ていたのだろうか? 先ほどの間がどうにも嘘くさく感じてしまう。
「それより、どうしてユーゴさんは両手を上げているのですか?」
「これは条件反射というか、お前が横で寝ていたから、びっくりしてしまったんだよ」
俺は少しだけ嘘を吐いた。さすがに胸を触っていて、起きそうになったから慌ててこのようなポーズになっていたとは言えない。
「そうですか。ユーゴさんってリアクションがオーバーなのですね」
どうやら今の嘘を信じてくれたようだ。もし、仮にも彼女の言っていたことが本当であれば、明日からは気をつけないといけないな。
「それよりも、早くギルドに向かおう。やりがいのある依頼は、すぐに取られてしまうからな」
俺は部屋の窓を開けて外を見る。そのとき、あることに気づいた。
「あれ? 太陽が高い?」
「あ、本当ですね。位置からして、もうお昼時かもしれないです。私たち相当疲れていたみたですね」
「こうしてはいられない。アリア、すぐに準備をしてギルドに向かうぞ」
「はい。わかりました」
手早く準備を終わらせ、俺たちは急いで宿屋を出るとギルドに向かう。
ギルドに辿り着いて扉を開けると、中が騒がしいことに気付く。
あれ? なんだか騒がしいな。何か起きたのか?
「あ! ユーゴさん! いいところに来てくれました! ちょと来てくれませんか?」
受付嬢が俺を呼んだ。彼女は少し顔色が悪い。
これはただごとではない感じがするな。
「何かあったのですか?」
「それがですね。この依頼を勇者様たちにお願いをしたのです」
受付嬢が依頼の紙を手渡し、それを受け取ると内容を黙読する。
えーと、なになに? 依頼内容は新しく発見されたダンジョンのマッピング作業と情報収集。報酬金額は五十万ギルか。結構高いな。
イアソンたち、こんなに報酬金額が美味い依頼を受けやがったのかよ。くそーう、寝坊さえしなければ、俺が受けたかったぜ。
「それで、この依頼がどうかしたのですか?」
「それがですね。勇者様たちがこの依頼を受けて戻って来ていないのですよ。彼らなら、とっくに戻って来てもおかしくない時間帯なのです」
「そうか。あいつらが手こずっているなんて珍しいな」
「なので、ギルド側はもう一枠の依頼を増やすことにしたのです」
「つまり、イアソンが受けた依頼と全く同じものを受けられるという訳か」
受付嬢は無言で頷いた。
「ですが、勇者パーティーが戻って来ない依頼を受けようとする人がおらず、困っているのです。なので宜しければ元メンバーのあなたにお願いしたいのですが」
「わかった。その依頼引き受けよう」
「本当ですか! それはとても助かります。細かい手続きのほうは、私がしておきます。なので、今すぐに向かってください」
今すぐにか。受付嬢が急がせるということは、相当焦っているのだろうな。まぁ、勇者パーティーが攻略できないようなダンジョンだった場合、立ち入り規制をしなければならないだろうからな。スピーディーな処置が必要ってわけか。
「わかった。それじゃあ今から向かうよ。アリア行こう」
「はい。わかりました」
こうして俺たちは、イアソンが戻って来れなかったダンジョンに挑むのであった。
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