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第二章 第一話 魔の森から帰ってきたら、死んだことになっていた件

 〜ユーゴ視点〜




 魔の森を抜けた俺たちは、現在町中を歩いている。


「なぁ、アリア? もう街中だから、はぐれる心配はないよな? だからもう俺の腕を握る必要はないんじゃないのか?」


「別に夫婦になったのですからいいじゃないですか」


「まだ正式になったわけじゃないだろう?」


「正式ではなくとも、呪いの契約は結ばれているのです。だから、現在進行形で夫婦なのです」


 アリアの言葉に、俺は少しだけ後悔した。


 俺を頭痛から助けるために、聖女様がキスをしてくれたけど、まさかキスをしたら呪いの契約が発動して、夫婦になるとは思わなかったよ。


 いや、別に彼女と夫婦になるのが嫌と言う訳ではない。アリアは可愛いし、清楚で可憐だ。だからこそ申し訳ないと思っている。


 俺はイアソンたちからスカウトされる前は、生活費を稼ぎながら世界中を旅する普通の冒険者だ。それに比べると、アリアは勇者の次に世界の希望となる聖女だ。普通に考えて釣り合いは取れていない。


 きっと、これからは彼女に嫌な思いをさせることになるだろう。それだけは絶対に回避しなければ。


「よし、決めた!」


「いったい何を決めたのですか?」


 俺の独り言にアリアが反応した。


 彼女のことだし、ここは話しておいたほうがいいだろうな。


「俺はこれから、アリアとの間で交わされた呪いの契約を解く方法を探す。もし見つかれば、こんな俺とではなく、本当にアリアが生涯共に生きたいと思う相手と結婚することができるからな」


「ええー!」


 呪いを解く方法を探すことを告げると、彼女は驚きの声を上げる。


「そ、そんなことはしなくていいですよ! 人間諦めが肝心なのです! だからわざわざ探す必要はないですから」


 彼女の言葉に、俺はじーんときてしまった。


 ああ、アリアは本当に優しいな。俺を頭痛から助けるために、自分を犠牲にしたというのに、俺のことを気遣って優しい言葉を言ってくれる。だからこそ、生まれながらにして聖女になったのだろうな。


「ありがとう。その気持ちだけで十分だ。確かに困難な道のりかもしれない。だけど俺は必ず呪いを解く方法を探し出してみせるから」


「ああ、どうしましょう。私が嘘を吐いてしまったばかりに、ユーゴさんが存在しないものを探そうとしています。だからと言って本当のことを言ってしまえば、私はきっと捨てられちゃいます」


 アリアに優しい笑みを向けると、彼女は少し顔色を悪くしてブツブツと何かを呟き出した。


 どうしたのだろうか? 顔色が悪いから、体調でも崩したのだろうか?


「大丈夫か?」


「あ、はい! 大丈夫ではないですけど大丈夫です。とにかく呪いの件は、今は考えないことにしましょう…………こうなったらスピード勝負です。早く教会の神父さまに事情を話して、強引にでも正式に婚姻を成立させなければなりません」


 心配して尋ねると、彼女は元気そうに振る舞う。


 きっと俺を心配させないように、痩せ我慢をしているに違いない。その証拠に再び何かを呟き出した。


 ひとまずは宿屋に行って宿を取るか。多分イアソンは俺の部屋を引き払っているだろうからな。


 アリアを休ませるために、俺は一度宿屋に向かう。


 宿屋の前に来ると扉を開けて中に入った。


「あのう、すみません。俺の部屋って、もしかして引き払っていますか?」


 受付のカウンターに居たおばちゃん店主に声をかける。すると彼女はみるみる顔色が悪くなり、手に持っていた帳簿を俺に投げつけてきた。


「いやー! お化け! 成仏しなさい!」


「お、お化け? お化けってなんのことですか?」


 状況が掴めず、俺は彼女に尋ねる。しかしおばちゃん店主は俺の声が届いていないのか、カウンターに置いてあるものをとにかく投げつけてきた。


 これは話を聞ける状況じゃないな。一旦引いたほうがいい。


 訳が分からない中、俺はアリアの手を握って宿屋から出ていく。


「いったいどうしたんだ? 宿屋のおばちゃん」


「まるでユーゴさんが、化けて出てきたみたいに言っていましたね」


「まったく、どう見たって生身の人間じゃないか。それにしても困ったな。アリアを休ませたいけれど、今の状況では仮にアリアだけ宿を取ろうしても、まともにとりあってはくれないかもしれない」


「私は大丈夫です。最悪のときは野宿する覚悟ですので」


 俺を心配させたくないのだろう。アリアは明るく振る舞ってくれた。


 本当にいい娘だ。俺なんかにはもったいないよ。よし、こうなったら、どうして俺が幽霊みたいに扱われたのか調べるとしよう。


「アリア、悪いけどもう少しだけ休むのを我慢してもらえるか? 一度ギルドに向かってみようと思う。もしかしたら何か情報を得られるかもしれない」


「私は大丈夫です。行きましょう。私もどうしてユーゴさんがあんな扱いをされたのか気になります」


 原因を探るべく、アリアと一緒にギルドに向かう。


 ギルドに辿り着き、俺は受付に向かった。


「あのう、すみません」


 俺は作業中の受付嬢に声をかける。


「はい何でしょう……きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 作業を中断して俺の顔を見た瞬間、受付嬢は宿屋のおばちゃんと同じように叫び声を上げる。


「ユーゴさんの幽霊! 頼みますから成仏してください!」


 宿屋でのできごとを再現するかのように、受付嬢がカウンターの上に置いてあったペンを投げつけようとする。


 まずい、これじゃあ宿屋の二の舞じゃないか。


「ちょっと待ってください。俺は幽霊ではなく、ちゃんと生きています。ほら、触れるじゃないですか!」


 握られたペンが投げ付けられる前に、俺は彼女の手首を掴む。そして生きていることを全力でアピールした。


「あ、本当です。それじゃあ幽霊ではないんですね」


「当たり前じゃないですか。それに幽霊なら、現れるにはまだ時間的に早いですよ」


「確かにそうですね。アハハ」


「ユーゴさん! 誤解が解けたのなら、次は情報収集ですよ! 受付のお姉さん、どうしてユーゴさんを見て幽霊なんて言ったのですか?」


 受付嬢の誤解が解けたことに安堵していると、アリアが何故か不機嫌そうな顔をして会話を遮る。そして俺に代わって、どうして俺を幽霊のような扱いをしたのかは尋ねた。


「それはですね。数時間前に勇者様たちが来られて、ユーゴさんは死んだと報告がありました」


 受付嬢の説明を聞き、俺は納得した。


 なるほどなぁ。だからその噂が広まって、宿屋のおばちゃんもあんな反応を示したのか。確かに、イアソンたちからしたらそう思い込むだろう。俺だって死んだと思った。運よく女神様が通りかかってくれたからこそ、今の俺はこうしてここにいる。


「どうやら勇者様の勘違いだったようですね。魔物に殺されたと聞きましたけど、そんなに凶悪な魔物だったのですか?」


「いや、正確には魔物じゃないけれど、人の皮を被った魔物のようなやつだったよ」


 俺の言葉に受付嬢は首を傾げる。


「とにかく、死亡手続きを行なってしまったので、取り消しておきますね。ユーゴさんはこのまま勇者様と合流しますか?」


「いや、あいつは俺のことを死んだと思っているのだったら、一緒にいないほうがいいだろうな」


「わかりました。では、勇者様のチームを脱退したということにします。もし、何かの依頼を受けるのでしたら、ソロでお願いしますね」


「はい。わかりました」


 とりあえずこれで、俺が死んだと言う噂はガセネタだったということが世間に広まるだろう。あとはもう一度宿屋に戻って、同じように説得をするとするか。時間が空いたから、冷静さを取り戻しているころだと思う。


 俺はアリアと一緒にギルドの外に向かう。


「おい、今の話を聞いたか?」


「ああ、聞いた。あいつ結構すごいな。あの魔の森を勇者様なしで生きて帰ってくるなんて」


 受付嬢との話を聞かれたようだ。他の冒険者が俺たちのことを話している。もし、彼らが噂を広めてくれたのなら、ガセネタであることが広まるスピードが上がるかもしれないな。


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