第一章 第一話 Hスキルができない俺はパーティーから捨てられました
「皆! 俺のHスキルを発動させる!」
俺、ユーゴ・クラーク、十六歳は、ユニークスキル英知を発動した。
「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 痛い、痛い!」
スキルが発動した直後、断末魔のような叫び声が周辺に轟く。
敵である魔物の声ではないし、仲間の声でもない。そう、この無様な声は、俺のものだ。
黒い髪に両手を置き、頭痛に耐えながら地面に転がる。
「たく、毎回毎回使えないやつだな。おい、リリス、ジョージ! こんな間抜けに構わないで、さっさと森の主を倒すぞ」
俺の所属している勇者パーティーのリーダー、勇者イアソンの声が聞こえる中、俺は起き上がることができずに地面に転がり続ける。
「ガードは任せろ!」
「魔法で動きを封じたわ! 今よイアソン」
「これで終わりだ! ファイナルブロー!」
頭を抑えながら閉じていた目を開ける。討伐対象の魔物が一刀両断され、真っ二つになって地面に横たわっている光景が映っていた。
どうやら森の主をイアソンが倒してくれたようだ。よかった。頭痛に耐えたかいがあったってもの。
戦闘が終わったころには俺の頭痛もなくなり、ようやく立ち上がることができる。
「やったわね。さすがイアソン」
「お前が強いお陰で、俺は盾役に集中できる」
「この程度の依頼なら、勇者である俺には余裕だ。寧ろ物足りないぐらいだぜ。この百倍の難易度ぐらいがちょうどいい」
皆いつも見たいに勝利の余韻に浸っている。俺も彼らに混ざらないとな。
「それに引き換え、ユーゴは本当に使えないよな」
「本当よ、スキルを使おうとすると、すぐに頭痛で戦えなくなるゴミスキルじゃない」
盾使いのジョージと魔法使いのリリスの言葉に、俺は動きを止めた。
二人は、口を歪ませ、侮蔑するような眼差しを送ってきた。
「そうだぞ! スキルをアルファベットで誤魔化しているから、どんなものかを知るために、仲間に引き込んだと言うのに、全然発動しない外れスキルじゃないか」
イアソンのやつ、何を言っているんだ? 俺のスキルはちゃんと発動している。頭痛が起きているのがその証拠だ。それなのに、どうしてスキルが発動していないなんて言う?
頭痛でのたうち回っている中、薄目で皆の活躍を見ていた。三人の動きから見ても、俺のスキルは確実に発動している。
「もしかして、頭痛が起きるというのが彼のユニークスキルだったんじゃないの?」
「アハハハハ! リ、リリス、それ、ツボに嵌ってしまったぞ。ず、頭痛が起きるのがユニークスキルってか。もし、それが本当なら、とんだクソゴミスキルじゃないか。無能力者のほうが何倍もマシじゃないか。ギャハハハハハ!」
リリスの言葉に、イアソンはお腹を抱えて大笑いを始める。
彼らは本当に気づいていないのか? 冗談だよな? 今までの戦いが全て自分たちの実力だと思っているはずがないよな。
「なぁ、この際だから、こんなゴミはここに捨てておかないか?」
「ジョージナイス! その案採用」
「私も異存はないわ。これ以上、戦闘の度に転げ回れても迷惑だもの」
まさかこんな展開になるなんて思わなかった。誤解が生じた以上、早く訂正をしないと本当に捨てられることになる。
「な! 何を言っているんだよ! 俺のスキルはちゃんと発動している!」
「そんな訳がないだろう! 発動しているなら俺たちが気づかないわけがない。そんな嘘を吐くのは止めろ! テメ―のようなゴミスキルは、生ごみと一緒にここで捨てておいてやるぜ」
イアソンは俺が背負っていたリュックの中から、生ごみが入った袋を取り出す。
そして、それを思いっきり俺に投げつけた。
「おっと、忘れていたぜ」
袋が投げられた瞬間、イアソンが腰に帯刀させている鞘から剣を抜き、袋を切り裂く。
破けた袋は中身をぶちまけ、俺の身体に降り注ぐ。
「ギャハハハ! ゴミはゴミらしく、ゴミの中に埋もれていな」
身体に着いた生ごみを払い、俺は彼を睨む。
「お、何だよその目つきは? 怒ったか? でも俺は本当のことしか言っていないだろう。お前は正真正銘のゴミ人間なんだからよ」
くそう。頭にきた。いくら仲間でも言っていいことを悪いことがある。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
俺は雄叫びを上げながらイアソンに殴りかかった。
「汚い異臭を撒き散らしながら近づくんじゃねぇよ! このゴミ野郎!」
イアソンが再び剣を構えると斬撃を放つ。その速さは俺の肉眼では捉えることができずに直撃した。
そう言いきれるのは俺の身体から痛みを感じ、鮮血が噴き出るのを目撃したからだ。
「ギャアアアアアアァァァァァァァァァ!」
自分の身体から流れ続ける血液を見た瞬間、俺は断末魔の声を上げる。
「ハハハハハ俺としたことが、手元が狂ってしまったようだ。痛みを感じさせないように一瞬で終わらせるつもりだったのに、かえって苦しませることになってしまった。まぁ、ゴミの最後には相応しい終わり方だろうな」
「ねぇ、イアソン。早く帰りましょうよ。あんな男の濁声なんか聞きたくないわ」
「そうだな。かえって今回の冒険の祝杯といこうではないか」
「お、いいな!」
意識が朦朧とする中、イアソンたちの声が聞こえた。
俺、このまま死ぬのか? ああ、本当に最悪な人生だった。あいつらに関わらなければよかったよ。正直にユニークスキルは英知だと言っているのに、あいつらはHだと思い込んだままだ。これも全て、伝えたくないスキルはアルファベットでぼかしていいという法律のせいだ。
もし、次に生まれ変わったのなら、今度は誤解を招くようなスキルを持ちたくない。
「ネイチャーヒーリング」
どこからともなく呪文を唱える女性の声が聞こえた。その言葉が耳に入った瞬間、俺は不思議な気持ちになる。
とても暖かい。まるで幼いころに、母親に抱かれていたときに感じたぬくもりのようだ。
「これでよし。聞こえていますか? もう起き上がっても大丈夫ですよ」
再び女性の声が聞こえてきた。
何を言っているんだ? 俺は瀕死の重傷で死にかけているんだぞ。今も指一本動かせられないのだから。
そう思った瞬間、俺の視界に映っている自分の指がぴくぴくと動き出した。
え? 動かせられる?
はは、そんなバカな。だって俺はイアソンに斬られて、たくさんの血を流したんだぞ。指が動くのは可笑しいって。
「うーん? わたしの魔法は効いているはずなのに、どうして起き上がってくれないんですか? あ! そうか! たくさん血を失っているから、頭が働かないのですね。それなら……ブラッドプリュース」
女性の独り言に続いて、呪文を唱える声が再び聞こえてくる。
すると、俺は再び温かい感覚になる。
「肉体回復の魔法に続いて、血液生産魔法までかけたのですから、もう起き上がれますよね」
さっきまでは半分ボーっとしている感じであったが、今度ははっきりと思考を巡らせることができる。
そうだ。指が動くと言うことは、俺は死んではいない。俺は誰かに助けられた。でもいったい誰がこんな生ごみ臭い俺なんかを助けてくれたんだ?
とにかくお礼を言うのが最優先だ。
身体に力を入れて俺は起き上がる。そして声が聞こえたほう顔を向けてお礼を言おうとした。
しかし、彼女を見た瞬間、俺は言葉を失う。
目の前には、この世のものとは思えないほどの絶世の美女が立っていた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
本日、勇者サイドざまぁ回まで投稿する予定です。
今回の作品こそ、日間総合ランキング入りを目指しております。
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物語の続きはもう少ししてから投稿予定です。
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