護衛騎士は慰めるのが苦手らしいです!
3話目です。
「はあ、はあ…逃げきれた…。」
なんなの?なんなの?この屋敷の人皆さん体育5なんですね?泣きながらこっちに迫られるとさすがに私もドン引きです…。ハルはケロッとしてますね。あ、これがイケメン補正の違い…。
「すみません…。みなさんの動きに驚いてしまって…気づいたら走ってしまいました…。」
謝るに越したことはない。せっかく部屋まで送ってくれようとしてたのに結局私のせいで絶対遠くなった。
「先程のように…話して下さらないのですが…?」
え?どうしたの?そのうるうるワンコな目は!?さっき慌てて素が出ちゃってたのか!?うわー、ないわー、お嬢様が走ることさえおかしいのにさー。庶民の私には無理のある話し方でも頑張ってたのに。
「メリア様は私よりも身分の高い方です。私に敬語を使う必要はありません。……それにすごく私情なのですが、記憶が無くなったからとはいえそこまで壁を作られるのは少し辛いです…。」
ハルはとりあえず気楽に話して欲しいってことかしら?まあ、目上って言ってもそれはメリアのお父さんの実力であって私のものでは無いんだけど…。けどずっと壁を作るわけにも行かないしね…。そんな正論ばっかり言ってるけど私、ハルの辛そうな顔に弱いだけです!
「わかりま……わかった。これからは敬語で話さないよ。私もそっちの方が喋りやすいし。」
転生して違う人間が入ったとか言ったら…みんな離れていっちゃいそうだから内緒にしよう。まだ何も分からない世界で嫌われるのは完璧な破滅エンドになる。
「メリア様…っ!嬉しいです…感激です…。」
ハルなんか拝み始めたけど無視しよう。
「ハル、ここは…どこ?」
綺麗な庭園だ…。静かなのに綺麗にされてて落ち着く…。使用人もいないな…あんなにわさわさいたのに。
「ここは…。メリア様の亡くなられたお母様が眠られている場所です。旦那様は奥様のことを深く愛しておられました…。だからこそ奥様の好きな花を植えた庭園の奥に墓を作っておられます。メリア様は毎月命日の日には来ておられていましたよ。」
どうぞ、と言われ奥に入っていくとそこには小さなお墓があった。『エルノア・フォン・アイルノーツここに眠る。』メリアはお母さんがいないんだ…。ここに毎月来て会えないのに…何を伝えに来てたんだろう…。
「メリア様…っ。お泣きにならないでください…。」
このお母さんのことなんて知らないのに、1回もあってないのに…私泣いてるんだ…。メリアが泣いてるんだ…。
「うっ…お母様っ…会いたいです…っ」
「っ…。メリア様…っ。お母様はきっと幸せです。メリア様に毎月会えて…。だから…泣かないでください…。あなたに泣かれるとどうしたらいいか分かりませんっ…。」
ハル、急に泣き始めて驚いてるはずなのに…。メリアは多分こうやって泣きたかったんだ。会いたいって言いたかったんだ…。自分の気持ちを声にするのが苦手なだけで悲しんでないわけない。記憶はないけど、チート能力はなくてもメリアのかわりに私が泣くことはできるもん。悲しいんだもん…この気持ちは偽物じゃないもん…
「ハりゅ…ぎゅーちて…」
手を広げてハルを待つ。滑舌がもどっちゃったけど許せ。…あれ?ハルが固まっちゃってる…。慰めてくれないのかな…?
「メ、メ、メ、メリア様っ!そ、そ、そのようなこと…護衛騎士である私は…っ。あーっこてんって首傾げないでくださいっ。ぎゅーしますっだからそんな顔で見ないでくださいーーーー!!」
すごい顔が真っ赤…。疲れてるのかな。走らせちゃったもんね。ごめんね、ハル…。あれ…この体もしかして思った以上に歳若いのかな…。泣いてるとすごい睡魔が…ふわふわするんだが…。手を広げていた所にハルがやってきて抱きしめてくれた。ぎこちないし、なんかすっごい慌ててるけど泣いてる時って抱きしめられると安心するよね…。
「ぎゅー…。安心しゅるね…はりゅ…。」
「っ…!?は、は、はい…あ、安心されたのであれば嬉しいです…。」
「はりゅ…あり…がと…う…。」
あー…限界です。眠い、眠たすぎる…。この体体力無さすぎる…。これは…明日から情報収集と体力回復を目指さないと…。次起きたらハルに謝ろう…。とりあえずおやすみなさい…。
「はあ……。メリア様…可愛すぎます、、なんですかっ『はりゅ』って…!うるうるした瞳でぎゅーなんて…私心臓爆発して死にそうだったんですからっ!寝顔も可愛いです…。無防備に男性に甘えるものじゃないってこと言わないと…。私じゃなかったらパクってさらわれちゃいますよぉ…。……殺される…これバレたら絶対旦那様とノワール様に殺される…。」
抱きしめたまま寝てしまったメリアをみながらハルが悶絶して、そしてバレたら行けない人たちのことを思い出して身震いしてたのをメリアは知らなかった。
読んでくれてありがとうございました。