イケメンさんはワンコでした!
2話目投稿です。
初心者です。よろしくお願いします。
号泣したイケメンさんに医務室に連れていかれてから早1時間。医務室の先生からここでは基本であろう質問を延々とされています。
「この国の名前は?」
「わかりません。」
「あなたは何歳ですか?」
「さあ…子供というのは背丈的にも片手で担がれてきたので多分そうだと思います。」
「……」
ありゃ、ごめんなさい。お医者さん。あなたが嫌いな訳では無いの。ただお医者さんって名前だけでも嫌悪感が溢れているだけです。
「メリア様は原因不明の気絶だったわけですが、もしかすると何らかのストレスや嫌なことから逃げるために行われたものだったのかもしれません。1種の防衛反応ですね。そのショックが大きすぎてこれまでの記憶を無くしてしまっているのかもしれません。」
「そんなっ!メリア様がそこまでおいつめられていた事など露知らず…。私は…これまで…そばに一番いたはずなのに…。」
「そう落ち込まれますな。メリア様は今は喋っておられますが意識が戻る前は産声以外の声を聞いたことがなかったではありませんか。」
え、お二方なに2人でしんみりしたドラマのような話しておられるのかな?置いてけぼりですけど…?てかこのメリアって子は今まで喋らずに生きてきてたわけ??いやいや、耳が聞こえない訳でもないし目が見えない訳でもないし喋る時に喉に違和感もないですが???健康な体なのになぜですかね??……こういう時にふっと声が聞こえるのが転生ってやつなんですけどね!?分かってます??……はい、聞こえないですね。はい。いいです。
「幸い私たちの言葉を理解しておられるようですし、言語は理解しているようですな。記憶喪失というのは薬で治るような体の病気でないからこそ明確な治療法はありませぬ。自然に戻るように待つしかないというのが現状ですな。」
まあ、記憶喪失ってことになりますよね。けど、記憶を無理やりに戻そうとするとそれが脳への攻撃になるとかも聞いたことがあるからあまり無理させないであげてね。この体弱そうだし。何この腕何食べたらこんな細いの?てか白すぎだし。
「メリア様のことは旦那様にもお伝えするのがよろしいかと思います。今のメリア様は喋っておられますし…これはこの家にとってめでたいことでありますし。」
「それは私が伝えておこう。……メリア様、記憶にないようでしたら私がそばにいることも不思議に思っておいででしょう。私は旦那様…あなたの父上からあなたの護衛騎士に任命されています、ハルベルト・オルトナイツと申します。貴方様が3歳のころから護衛騎士をさせていただいております。」
イケメンさん…ハルベルトさんは私の前に跪いて自分の名前を教えてくれました。あら、イケメンっ!
「はるべりゅと様???」
え、噛んだ。この体すごく喋るってことが難しい。舌の動きとかは勝手にこの国の言葉を話してるみたいだけど日本人の舌で生活してた私には少し忙しすぎる…っ。多分それだけじゃないって感じの抵抗があるから本当に声を出して生きてきてなかったんだろう。
「っっっっ!!!なんと愛くるしい…っ!私のことはハルとお呼びくださいっ!ぜひ、ハルと!!」
「ハル…と呼べば良いですか??」
「はいっ!なんと可愛らしい声を隠しておいでだったのですか!声をいつかききたいと言う願いがかなって感激ですっ!」
目をキラッキラッさせてるよー。このイケメン絶対残念くんじゃん。あ、ハルね。しっぽ見えるんじゃないかっていう喜び具合。メリア様、あなた大分大事にされてたんじゃないですか。
「ハルベルト殿。メリア様は今目覚めたばかりなのを担いできた、とおっしゃっていたではないですか。体にはなんの支障もないが、今日一日はまだ安静にした方がよいでしょうから。早く部屋に送って差しあげなさい。」
お医者さんちょっとほっぺたぴくぴくしてるよ。絶対怒ってるから、早く帰ろうっ!怒らしたらダメなタイプだよ、絶対。校長先生とかでいるタイプだよ、これ。
「ハル、私は部屋の場所が…わからない…です…。」
感激ですっ!と横で喜び続けていたハルは私の声にはいっ!と元気な返事をしてくれました。この転生は嫌われ転生ではなさそうです。また担ぎあげようとしたハルの手をぺしんとはたいて自分で今回は歩いて帰ります。また何かあって自分で歩かなきゃ行けない時に何もできない、歩けない、ではいけないでしょっ!
「………………」
沈黙…。沈黙!!いや、黙ってるの辛い!知らない人だから余計辛い!なんか…なんか…声かけよう…!
「以前のメリア……わたくしはどのような感じだったんですか?」
以前の自分も知ってないと困るだろうしとりあえず情報は金なり!だからね!けど、ハルはすごく言いづらそう…というか悲しそう…。
「以前のメリア様は…そうですね、一言であらわすと寂しそうで暗い表情の方が多い方でした。今日まで…1度もこの屋敷のものはメリア様の声を聞いたことはありませんでした。産声をあげてからは1度も泣き声をあげない赤子だったと乳母は申しておりました…。」
おお…だいぶん病んでるね。以前のメリア…。私はどちらかと言うとおしゃべりで明るい性格だから…喋らないとか無理です!!はいっ!
「そう…。じゃああなたの名前もあなたへの感謝も何も口にしていなかったのね…。」
「いえいえっ!名前を呼ばれることはありませんでしたが、メリア様は屋敷の使用人全ての人のことを名前まで覚えていらっしゃったと思います。筆談ではありましたが名指しで最近入ってきたメイド見習いの子にお褒めの言葉を伝えたり、シェフにありがとうと手紙を残したりしておりましたから…。暗い表情ではありましたが、優しい姿にこの屋敷の者であなたを嫌うものはいません。」
メリアはすごく真面目で、そして優しかったんだ…。そう言われると歩いてるときにメイドの人や執事の人たちが多い気がする…。
「今すれ違っている使用人たちだってここが持ち場でもなにかある訳でもなく、メリア様の無事見たさに歩いていただけだと思いますよ?」
くすくすと笑う姿も様になりますね???このイケメンが小さい頃から居たらイケメン耐性つくのかな?ちょっと顔熱いんですけど!
「…そ、そ、そうですか…。心配させてしまったのなら謝らなければ行けないですね…。土下座…かしら…。」
「ドゲザ…とはなんでしょうか?」
はっ!ついついジャパニーズ最大の謝罪を呟いてしまった…。どう見ても西洋よりの国だから知らなくて当然か…。
「秘密ですっ!」
ザワザワ…。え、メイドの皆さんもどうしたんですか?皆さんいっせいに私の顔をみて。また、やらかしましたか?
「「メリアお嬢様がしゃべったー!!!!!!」」
あ、みんな知らないんだった。これは…本人は隠れるべし!だね。
「ハル!逃げるぞぉーー!!」
「メリア様!!!???待ってくださいっ!」
ありがとうございました。誤字等ありましたら教えてください。