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ヤクザVS死霊ノ館【ヤクザVS怪異シリーズ】  作者: 西塔鼎
I-ヤクザVS死霊ノ館編
1/145

DAY0-<1>

 閑散とした住宅地。その外れにぽつりと佇む、一軒の木造屋敷。

 古めかしい和式の、堂々たる門構えのその屋敷の中から――門の外まで響かんほどの怒号が響き渡った。


「おんどりゃあ、今日までに耳ぃ揃えてカネ用意しとけっつーたやろが、ワレェ!」


「ひ、ひぃいぃぃ、すいません、すいません……!」


 畳敷きの居間。屋敷の外観と比して貧相な、くたびれたちゃぶ台だけが存在を主張しているその空間で、一人の男を数人の男たちが囲んでいた。

 囲まれて土下座しているのは、見るからに貧相な体躯、ばさばさの髪の毛の不健康そうな壮年の男性。

 そしてその周りを囲むのは、革ジャンを着た坊主頭だったり、パンチパーマにサングラス、毒々しいアロハシャツだったり――見るからにその筋と分かるような連中である。


「テメェよぉ、俺らみたいな“筋モン”にカネ借りといて『返せません』たぁ、よくそんなこと堂々と言えたもんだなァ、あぁ!?」


「すいません、すいません……! 確かにお支払いする予定だったんですが、急に仕事をクビになったり、かと思ったらやっとの思いでかき集めてきたお金が風で飛ばされて川に落ちたりして、そのせいで――」


「悪いのは“社会(マワリ)”や言いたいんか、あぁ? ちゃうやろ、悪いのは返済プランをしっかり組み立てられんテメェの頭やろがい!」


「ひぃぃ……!!」


 ……まあ、この会話の流れで解説するまでもないが。

 今現在この家で行われているのは、いわゆる借金の取り立てである。

 それも――見ての通りあまり大きい声では言えない連中の。


 がん、とちゃぶ台を蹴飛ばすと、パンチパーマのヤクザがしゃがみこんで静かに口を開く。


「八幡さんさぁ。俺たち、お金貸す時に言ったよねぇ。今日が“返済期限(シメキリ)”だって。なのにそれをブッ千切るってことはさぁ――うちの組の代紋に唾吐くのと同じなわけよ。分かるかなァ?」


「あ、ひぃぃ……そんな、そんなつもりはなくて、だからその、次こそっ、次こそ働いて返し――」


「次っていつじゃっつーんじゃい!! 明日か? 明後日か? おぉ? それによォ、働くっつってお前、働いてねえからこうなっとんじゃろうが! 何なら俺らが“仕事(シゴト)”斡旋してやろうか? 色々と教えてやるぜぇ? ……そういや八幡さん、娘さんいたよな。なんならそっちにイイ仕事回してやってもいいんだぜ?」


「ひっ、それだけは、それだけはご勘弁ぉ……」


 凄まれた借金男の顔面は、それはもう哀れなほどに真っ青だった。

 泡を吹き始める男を雑に放り捨てると、パンチパーマはすっくと立ち上がって周りのヤクザに告げる。


「仕方ねえ。こいつ返す気ねーみてぇだから、しょうがねえからこの家で勘弁してやる――おいお前ら、若い衆呼んで掃除させとけ」


「まっ、待ってください、この家は! 家だけはっ……」


「口答えできる立場だと思ってんのかよ! あァ!?」


 パンチパーマの怒号に気圧されて沈黙する借金男を、周りのヤクザが両脇で引っ張り上げて。

 ……すると、そんな時のことだった。


 がたん、と。聞こえた物音に、パンチパーマは眉根を寄せて辺りを見回す。


「……あん?」


「どうしました、アニキ」


「いや――気のせいか」


 そう呟いてパンチパーマが首を振った、その時だった。


 がたがたがた、と。今度は先ほどよりも大きな物音がして、今度はその場にいた全員が音の発生源に視線を向ける。


 すると――先ほどパンチパーマが蹴飛ばしたちゃぶ台。それがかすかに、震えていた。


「……な」


 なんだこれ、と言おうとしたその瞬間、ちゃぶ台がふわりと宙に浮かんで――


 ヤクザたちの悲鳴が、オンボロ家の中に響き渡った。


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