後編
はぁ……はぁ……か、書けたぞ……
僕の半生を参考にした百万字の大作……題して!
【人生詰みかけのデブハゲニートが実家から追放されたから土下座して戻りたいとお願いしたけどもう遅い! 両親は海外に移住済みの上に兄弟親戚友人だれもいないから野垂れ死ぬしかない!】
ふふふ……これで一発当てて、僕を馬鹿にした奴らを見返してやるんだ……
いや、その前に神様にチェックしてもらって、それから次の流行を教えてもらうんだ! 神様ー! お願いしまーす!
『この……愚か者がぁ! 我の言うことに逆らうとは、まさに神をも恐れぬ大罪! 貴様のような低脳の穀潰しに助言を与えようとした我こそが愚かだったわぁ!』
そ、そんな! ちゃんと言われた通り【追放】からの【もう遅い】をタイトルに盛り込んでますよ!
『愚か者ぉ! それだけでなく流行を取り入れろと言ったであろうが! 貴様何を聞いていた! その耳は飾りか! いや、その汚さでは飾りにすらならぬ! ちぎりとってくれようか!』
ひっ、ひぃぃ! お、お助けを! ど、どこが悪かったんですか!
『どこがだと!? 全部だ! 一言一句にいたるまで全てゴミだ! えーい仕方ない! 貴様のような腐れ脳にも分かるように解説してやる! もしこれでも理解できぬと言うのであればこの世に未練がないと見なし、転生させてくれるわぁ!』
て、転生? それ、いいかも……
『まずは冒頭だ。タイトルやあらすじも最低だが、冒頭はもっと酷い』
「僕の名前は田中太郎で35歳なんだけどついさっき家から追放されちゃって困ってるんだけどお金はないしお腹はへるしどうしたらいいか分からないからとりあえず歩いてるんだけど23年ぶりの外だから道に迷っちゃって困ってるんだけどどうしたらいいと思う?」
『ちっ、これを最低以外にどう評価しろと言うのだ? 解説すると言ったが撤回する。論外だ。修正不可能だ。せっかく牛の糞の中に生まれる蛆にでも転生させてやろうと思ったが、貴様には蛆でも上等すぎる。賽の河原の石にでもなるがいい。よかったな。蛆ならば再び転生することもあろうが、石ならもう二度と転生することもない! 貴様のような愚か者は生きているだけで虫唾が走るわ!』
そ、そんな! 僕は一生懸命書いたのに!
『軽々しく一生懸命という言葉を使うなぁ! 我はあのような最低の駄文を百万字も読まされたのだぞ! 宇宙創造を上回る苦行であったわ! しかもその続きがこれだ!』
「そうだよね。僕もそう思うよ。だって君は僕の天使だもんね。らんらんらーん。るんるんるーん。たりらりらーんのらりらりるーん。へっけっけーのおっほっほー」
『このような糞以下の文章を百万字も! よくも読ませてくれたな! なぜ冒頭からいきなり独り言を声に出して喋っておる! なぜ独り言に自分で同意している! 君って誰だ! 何と会話をしている! いや、よい。もうよい。愚か者に使う時間がもったいない。転生させてやるのも面倒だ。地獄に堕ちろ』
えっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 僕そんな悪いことしましたか!? 何もしてないじゃないですか!?
『そうだ。貴様は何もしていない。勉強も就職も、労働も生産も。そんな貴様が何を思ったか文章を書くことに情熱を燃やしているように見えたから助け舟を出してやったが……無駄だったようだな。貴様のようなクズは輪廻の輪から追放だ。助けてくれと言ってももう遅い!』
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