前編
はぁ……ランキングに載りたいなぁ……
一日で千ポイントとか稼いでみたいなぁ……
そうだ!
無職の穀潰しニートが人助けをしたらトラックにはねられて異世界に転生して無双してハーレムを作ってやりたい放題する話はどうだろう!
『作者、作者よ。聞こえるか? 今お前の心に直接話しかけている』
なっ? 幻聴か!? 僕は危ない薬なんかやってないぞ!?
『いいから聞け。我は神なり。愚かなお前に助言をくれてやる』
か、かみ? 髪!? 神!?
『……お前が今考えた話はすでに他の者が書いている。ごまんとな。もう遅いのだ』
う、嘘だ嘘だ! 僕は知ってるんだ! 今の流行りは異世界転生なんだ!
『愚か者め。今の流行りは【追放】からの【もう遅い】だ。そんなことも知らぬからお前は底辺なのだ』
そ、そんな……じゃ、じゃあ僕が必死に考えた異世界転生のプロットは全てゴミなのか……
『そうとも限らぬ。しょせん流行など泡沫に過ぎぬ。お前がその話でのし上がることが出来ぬとは断言できぬ。誰にもな』
じゃ、じゃあ僕はこれで書くぞ! い、いいんだな!?
『好きにせよ。せっかくの神の助言、生かすも殺すもお前次第だ』
神の助言……も、もしかして!
ほ、本当に神様なら! 次に何が流行るか分かるんじゃないんですか!? お、教えてください! 次の流行は一体何なんですか!?
『ほう? 愚か者にしては真っ当な質問だ。神の目は全てを見通しておるゆえ、そのようなことぐらい当然知っておる』
ほ、ほんとですか!?
『だが今のお前には教えられぬ。まずは【追放】からの【もう遅い】で一作仕上げてみよ。話はそれからだ』
そ、そんな……
『流行を知らぬ者に流行を生むことはできぬ。神の知恵が欲しければ流行を取り入れた作品を書いてみるのだな』
くっ、やるしかない……僕は神の知恵で底辺を脱出するんだ!
よし、まずはランキングをチェックしてみよう。ここ五年ばかり見てなかったからな。一体どんな作品が上位に来てるんだろう……
なになに……
【無能と蔑まれた底辺ドラゴンライダーがギルドから追放されたら愛龍が実はエンシェントドラゴンだったから戻ってこいと言われてももう遅い! 俺は龍の山で龍王としてスローライフをおくる!】
ふむふむ……
【役立たずでパシリの俺がA級冒険者パーティーから追放されたけど道端で女の子を拾ったら実は聖剣でSSS級冒険者になったからまたメンバーに入れてやると言われてももう遅い! 俺は聖剣とイチャイチャライフを堪能する!】
ほうほう……
【落ちこぼれ錬金術師が追放された先の辺境の山奥で拾ったのは賢者の石でした! 今日から俺は何でもできるが助けてくれと言われてももう遅い! 全員に復讐します!】
ふーん……
【美しすぎるせいで嫉妬されて皇帝のハーレムを追放されたけど才色兼備な私はどこでも生きていけるから思い切って娼婦になってみたら天空神に身請けされました! 帰ってきてくれと言われてももう遅い! 天空から帝国の滅亡をのんびり眺めます!】
へ、へー……
【婚約破棄された上に王国から追放された悪役令嬢だけど今までこの国を守ってきたのが誰か分かってないのかしら? 私がいなくなったら国中を魔物が襲うけどもう遅い! もふもふな魔物ちゃんたちとスローライフをおくります!】
ほー……
よし。傾向は分かった。こんな感じでタイトルをつけてストーリーがすぐ分かるようにすればいいんだな。で【追放】から【もう遅い】を入れたらいいんだよな。よーし、やってやるぞー!