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第0話

待ちに待った新刊発売日。

定時で仕事を終わらせ、予約した本屋へと急ぐ。


いよいよ最終話が載っている。

もうこれを読めれば思い残す事なんてない。


なんて考え事をしながら歩いたのがいけなかった。

踏み外した階段、宙を舞う体。


気付けばそこは……



「宮里美波さん。ようこそ天国へ」


キラキラと銀色に光る長い髪。白い衣装に白い翼。

聖母のような眼差しで話す美少女。


これ漫画でよく見るやつだ。


「って、天国!?」


まさかあのまま死んだの。え、いや嘘でしょ。


「急な事で驚かれるその気持ちよく分かります」


美少女天使がそっと寄り添うように手を握ってくる。


「突然の事で受け入れられないかとは思います。ですが私が責任を持ってあなたを導きますので」


「新刊……」


「はい?」


「新刊はどうなったんですかー!!」


大きく目を見開いて驚いた表情を見せる彼女を気にせずまくしたてる。


私はこの日のために生きてきたといっても過言ではない。

上司のあやふやな指示にイライラしながら残業しつつ、『これも全ては推しの為の軍資金稼ぎ』と休みもせず働き楽しみにしていたのに。


「結局健也は優斗と章太どっちと付き合ったの!」


「あの何の話を」


「知らないんですか!」


ずいっと彼女の前に顔を近づけ語気を強める。


「入社以来何かとお世話してくれる先輩優斗と、生意気ながらも何かと話しかけてくる後輩章太。その二人に告白される主人公の健也。その主人公が遂にどちらか決めるのが今日なんですよ」


コミック派の私はこの日のために大好きな先生のSNSも見ないようにしていた。

ネットも極力みないように徹底して今日を迎えたのだ。


なのに、結末も見れずに終わってしまうなんて。


がっくりと肩を落とす私におろおろしながら彼女が話しかけてきた。


「そ、そんなに現世に未練があるなんて」


「未練なんてものじゃないですよ~」


「でも安心してください。そんな方々の為に私たちがいるのです」


後光がさして来そうな微笑。


「まさか新刊を読ませてくれるとか?」


「新刊とやらはお渡しする事ができませんが」


『来世体験へご招待します』

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