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令嬢13歳・パラディスコの日本人・前

星祭りの時の異様なほどにちらついていた日本人の影。

それがどうしても気になって『あのイカ焼きに使われていたソースの開発者に心当たりってあります?』と翌朝の朝食の時にミルカ王女に訊くと……。


「ああ、発明家のサイトーサンの事?」


彼女はサンドイッチを頬張りながらあっさりと答えてくれた。ミルカ王女、知ってらしたのね!

サイトーサン……気持ちいい程日本人じゃない!?

パラディスコには転生者じゃなくてこの世界に日本から転移してきた……転移者がいるのね。

シュミナも転生者だったしこの世界には意外とそういう人がいるのかもしれない。


…………。

サイトーサンに、会いたい。どうしても会いたい。

日本の話を久しぶりにしたいし、パラディスコでサイトーサンが成した事に関するお話も聞きたい。


「ミルカ様……わたくし、サイトーサンに会いたいですわ!お願いします!」


わたくしはミルカ王女の手を取って、誠心誠意を込めて目を見つめお願いした。


「ビアンカは発明家に会いたいのか……。相変わらず勉強熱心だな」


フィリップ王子がクロックムッシュを丁寧にナイフで切り分けフォークで口に運びながら言う。

……流石に綺麗な所作だなぁ……なんて感心してしまう。

美形の綺麗な仕草はそれだけで見応えがある。


「だって発明家なんてドキドキしません事?」


日本人だから会いたいです、とはとても言えない。

わたくしはマクシミリアンに濃い目に淹れて貰った紅茶を口にしながら誤魔化すようにそう言った。


「サイトーサン引きこもりだからなぁ」


ミルカ王女がうーん……と唸りながら言う。

サイトーサンはその発明の腕を認められ、王宮に研究室を与えられて引きこもりっ放しで研究をしているらしい。

わたくしはミルカ王女の耳元にそっと唇を寄せた。


「日本の話がしたいです、とお伝え願えませんか?これで会ってくれるかもしれません」


ミルカ王女は目をぱちくりさせたけれど、頷くと早馬を飛ばして伝言を伝えてくれた。


……二時間後。サイトーサンから会っても良いとのご連絡があった。


「やったぁ!」


思わず優勝が決まった高校球児のようにガッツポーズをしてしまい、皆様に不審気な目で見られてしまったけれど……。

日本人に会えるという喜びは筆舌に尽くしがたいのだ。

出来れば二人きりでお話したいなぁ。

サイトーサンは、一体どんな方なのかしら?


「サイトーサンはどんな方なのです?男性ですか、女性ですか?年齢は?」


わたくしが食い気味にミルカ王女に訊ねるのをマクシミリアンが不思議そうな顔で見ている。

……サイトーサンに興味を持つ理由を知らないとそんな顔になるわよね。

でも前世の記憶が……なんて事話せないしなぁ。

マクシミリアンに頭がおかしくなったなんて思われたくない。

……いつかは、彼には話すべきなのかしら。


「サイトーサンはね、線の細い感じの男性ですごく美形なんだよー。前住んでたとこではこくりつだいがく?に行きながらファッションモデル?をやってたんだって」

「まぁ!そうなのですね!」


国立大学に行きながらファッションモデルって……すごくハイスペックな男性なのね。

前世だったら絶対縁が無かったわ。

色々な意味でなんだかとても楽しみになってきたわね!


「お嬢様が興味津々の……美形の男……」


マクシミリアンがなんだか剣呑な表情で対抗心を燃やしている。


「くっ……どれくらい美しい男なんだ!?」


フィリップ王子もなんだか目付きが怖い。

貴方よりも美しい男性はなかなかいらっしゃらないと思いますよ……?


「サイトーサンがあの香ばしい香りのソースを作ったの?神様みたいな人だね!」


ノエル様はサイトーサンの功績に目を輝かせている。

でしょうでしょう、と醤油を褒められてわたくしの鼻も高くなる。


「マリアさん、新しい美形ですってよ……!?」

「ゾフィーさん、楽しみね」


ゾフィーさんとマリアさんは顔を見合わせて頷き合っていた。

お二人の審美眼に叶う美形さんだといいわね!


「じゃあ王宮へ馬車を出すわね!」


ミルカ王女がポンと胸の前で手を打つ。

わたくし達はそれぞれ色々な思いを抱えて、サイトーサンが待つ王宮に向かったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「優勝が決まった高校球児のようにガッツポーズ」 ついそんなガッツポーズをしたビアンカちゃん面白い(*´∀`*)
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