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令嬢13歳・魔法の授業とヒロイン・前

魔法学園の授業は、座学と実技の2通りがある。


基本的には座学の授業が大半で、算術・薬草学・魔法学・歴史・語学…が授業のほとんどの時間を占めている。

魔法実技の授業は週に2回。これはわたくしが最も楽しみにしている授業だ。

マクシミリアンのお陰で魔法に関しては授業に先行して様々な事を学んでいるけれど、我がクラスの担任であり魔法実技の教師でもあるアウル・ライモンディ先生の論法はマクシミリアンとは角度が違う捉え方をしている事も多く、楽しく授業を受けさせて頂いている。


実技には選択科目もあって剣術(これは男子しか選択出来ない)・美術・家庭科実習・課外探索(これは薬草学で学ぶ薬草を実際に自分で採りに行く、というもの)から1つを選んで履修出来る。

わたくしは課外探索を選んでおりノエル様も同じ科目を選んでいた。

剣術を選ばないんだ、と思ったのだけど考えてみれば彼の日常は剣術と共にあるものね。授業くらい別の物を受けたいんだろう。

シュミナ嬢は……家庭科実習を選択している。

授業の後に作ったお菓子を男子に配っている姿を良く見かける。なんとも狙いが分かりやすい。

そういう彼女の潔さは嫌いじゃないんだよな、うん。

ゲーム内のイベントでもヒロインがノエル様にお菓子を差し入れして、お菓子が大好きなノエル様の好感度が上がる…みたいな物があったと思うんだけど。

シュミナ嬢は先日ノエル様にお菓子を持って行って……すげなく断られていた。

そして何故かわたくしが睨まれた。解せぬ。

貴女のお菓子が不出来だから貰って頂けないのはわたくしのせいじゃないからね!

だって貴女のお菓子、見るからに焦げてたりしててやばそうじゃない……!

……料理に関しては人の事は言えないんだけど。


今日は魔法実技の授業の日。

わたくしはワクワクしながら授業の準備をしていた。

今日は攻撃魔法の授業で危険度も高いから……という事で実技が得意な生徒と苦手な生徒がペアで授業を行う事になっている。

実技が得意な生徒は苦手な生徒のカバーをして頂戴ねって事だ。

わたくしは一応、実技のテストもトップの成績だ。

そして本日はノエル様とペアを組む事になった。ノエル様は魔法実技がとても苦手でテストも最下位に近かったから、妥当なペアだと思う。

実技が苦手な生徒の魔法は出力が上手く行かず威力に乏しい事が多いのだけれど、それでも当たれば人に軽い火傷程度の怪我は負わせられる。

更に実技が苦手で膨大な魔力を持っている……なんていうバランスが悪い人の場合は暴発で大事故が起きる可能性もある。

だから実技が得意な生徒は人に当たらないように軌道を変えたり、力を抑え込んだりの補助の役割をする事になる。

生徒で対処出来ない場合は、先生がフォローをしてくれる手筈になっているから安心だ。

ゲーム内のシュミナ・パピヨンはヒロインらしく希少な光魔法が使えて魔力量が膨大という設定だった。

今の転生者であるシュミナ嬢も、それは変わらない。

それを制御出来なくなってしまい、たまたま居合わせたフィリップ王子が彼女の魔力を制して助けてくれる……というイベントがあった。

……その事を、実習室に突然いらした王子がひらひらとわたくしに手を振りながら近づいて来る姿を見て思い出した。

実習室内は女生徒の悲鳴ですごい事になっている……鼓膜が破れそうね。


「ビアンカ、お前の雄姿を見に来たぞ」


わたくしの所に来たフィリップ王子は、ニコリと微笑みながらそう言った。

うう……、本当は大勢の前で話しかけて欲しくないんですけどねぇ。

一層遠巻きにされちゃうじゃないですか……。


「フィリップ様がわたくしの平凡な魔法なんて見ても、楽しくないと思いますわよ?」


だってわたくし使える魔法の種類が人より少し多くて、制御が人より少し上手いだけなのよ。

他の生徒よりは多少派手な事は出来ると思うけど、王子みたいに王家ならではの膨大な魔力を使った大魔法を!みたいな事は一切出来ないから……王子からするとつまらないんじゃないかしら。


「では……可愛い婚約者が頑張るところを見に来た、と言い換えようか?」

「お止め下さいまし!婚約者候補ですわ」


この一線は守らねばならない。

婚約者候補、の駆け落ちならばまだなんとかなる……と思う。

けれど王家の婚約者の駆け落ちは、まずい。国を揺るがす大事件になってしまう。


「相変わらずつれないな?婚約者候補のビアンカ?」


そう言ってフィリップ王子は、わたくしの額にそっと口付けた。

お……お止め下さいまし!マジで!!

シュミナ嬢がすごい目で見てますわ!!!他の生徒も!!

貴方どう考えてもこうやって既成事実を積み重ねて外堀から埋めようとしてらっしゃいますよね!

赤くなったり青くなったりしながらあうあう言っているわたくしに微笑み、軽く手を振って。

王子は観覧の為にアウル先生が用意した椅子に腰を下ろした。


「大変な騒ぎだねー女の子達の悲鳴やっばい」

「ええ……本当に」


ノエル様がのんびりとした声音で話しかけて来る。

わたくしは王子を横目で見ながら溜め息交じりに答えた。

ほぼ全ての女生徒の視線が王子の方へ集中している。


「宜しくね、ビアンカ嬢。迷惑かけちゃうかもしれないけど」


えへへ、と人懐っこい笑みを浮かべながら言うノエル様は、本当に大きい犬みたいだ。

その笑顔を見ていると安心するというか……とても和む。

……ノエル様は悩みが多すぎる生活の中の癒しだなぁ……。


「ノエル様、ビシバシ行きますので、覚悟して下さいまし?」


冗談めかしてわたくしが言うと、ノエル様も冗談っぽく驚く仕草を見せてから笑った。

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