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ヒロインは苦悩する(シュミナ視点)

私……シュミナ・パピヨンは、寮の部屋でベッドに横たわり、柔らかなシーツに爪を立てながら強く唇を噛みしめた。

寮は上位貴族用と下位貴族用で建物が分かれており、私は勿論あの悪役令嬢……ビアンカ・シュラットとは違う下位貴族用の寮に住んでいる。

下位貴族用の寮の部屋でも、前世の6畳間にパイプベッドを置いた飾り気も何もあった物じゃない部屋と比べると比較にならないくらいに豪華で可愛い。

最初は『これが乙女ゲームのヒロインの部屋なのね』ってかなり浮かれた気分だった。

だけど……今はただただ腹立たしい。あの女よりも劣った部屋に居る自分が。

ああ……あの女が特別扱いだなんて。

私が、私がヒロインなのに!!


ああ、上手く行かない。どうして、どうしてなの??

フィリップ王子は会いに行っても冷たいし、ノエル様には『嫌いだ』と直に言われてしまった。

マクシミリアンに至ってはビアンカ・シュラットに従順で、いつも彼女に優しい笑みさえ向けている。


上手く行かない原因の中心には、いつもあの女が居る。あいつは本当に何なのよ……!

まずは入学式の、マクシミリアンとの出会いイベントからおかしかった。

本来ならマクシミリアンが転んだ私を助け起こすはずのあのイベント。

なのにビアンカ・シュラットがマクシミリアンにお姫様抱っこなんてされて、その場から立ち去ってしまったのだ。

それと入学後の実力テストでのフィリップ王子とのイベント…。

実力テストで1位を取ったフィリップ王子を私が無邪気に褒めるイベント。

あれもあの女が1位を取ったせいで、無くなってしまった。

しかも何故か……あの女がフィリップ王子に褒められていた。

2つとも好感度の上がり自体は小さいイベントとはいえ、ビアンカ・シュラットのせいで潰れたと思うと腹立たしい。

ノエル様も何故かいつもあいつの側に居る。貴方が守るべきは私でしょう!?

そして何故か、サポートキャラまで取られてしまった。

サポートキャラなんて正直どうでもいいんだけど、自分の物だと思っていた存在があちらに付くと腹が立つものね。

ビアンカ・シュラットも転生者なんだろうか……という事を考える時もあるのだけど。

あいつはゲーム通りに私に高慢な態度だからいまいちどちらか判別が付かない。

あの女が転生者なら……マクシミリアンはあげてもいいから、他の攻略対象とのイベントは邪魔しないで、なんて相談も出来るのかもと思うけど。

あの女にそんな事を頼むのも癪だし、そもそもあいつは私と話そうとしないから転生者かどうか確かめようもない。


攻略キャラとの関係がなかなか進まないのはステータスのせいもあるのかもしれない。

そう……ステータス上げ……それも私を不快にさせる要因。

この世界は前世と同じで勉強をちゃんとしないと成績が上がらない……その事に気付いた時には愕然とした。どうして、ここはゲームの世界のはずでしょ?ボタン一つで上がるようにしておきなさいよ!

……私は、勉強をしにこの世界に転生した訳じゃない。恋愛をしに来たのよ!!

なんで恋愛をしたいのに勉強を頑張らなくちゃならないの!!……なんて思っている間に成績は地を這う物になってしまった。

それなのにビアンカ・シュラットは……澄ました顔で、トップの成績を取って行く。

ゲームのビアンカ・シュラットは馬鹿だったはずなのに。絶対に……何か秘密があるはずよ。

悪役令嬢なんだから、ずるくらい平気でするに違いない。

あいつの秘密を暴いて私もステータスを上げないと。


ハーレムルートを目指すはずだったのに、どうしてこうなるのよ!!

うるうるしながら見つめると、攻略対象外の男子はかなりの確率で優しくしてくれるけど……。

あんな雑魚達ばかり従えていても仕方が無いじゃない。

攻略キャラが落とせないんじゃ、意味が無いわ。


多分、隠しキャラの――――の攻略は、上手く進んでいると思う。

それとメイカ王子。彼は会いに行っても拒みはしないから……嫌われてはいないはず。

これから慎重に好感度を積み重ねて行かないと。

メイカ王子は嫌われてしまったサポートキャラの兄なのが気になるところだけど……。

あの2人の好感度を上げて、どうにか上手く利用して……ビアンカ・シュラットを排除出来ないかしら。

……まだ3年間のゲームの、1年目だもの。

フィリップ王子やノエル様、マクシミリアンもあの女が居なくなればきっとこちらへ戻って来るはず。

ああ、あの女が居なくなったらあの女の美しい兄も手に入るかもしれない!

ビアンカ・シュラットが居なくなった空虚を、美しく優しい私が慰めてあげるの。


私はヒロインだから、きっと私が望まない存在は排除出来るし、欲しい物は手に入るわ。


だってこの世界の中心だから!





――今は息を潜めて。

彼女を排除する機会を伺おう。

ビアンカ・シュラット、覚悟しててよね。

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