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令嬢13歳・マクシミリアンと放課後デート・後

着いたお店は店構えからしてとても可愛らしいというか…童話のお家のような可愛らしい外観にピンクの屋根で店の前には沢山の綺麗な花の鉢植えが置かれている…前世で言うイ○スタ映えしそうなお店だった。

店内は満席のようで店の前に並んだ女性達が順番を待ちながら楽しそうに店員から渡されたメニューを眺めていて、わたくし達もその列に並んだ。

ノエル様、貴方一人でこの店によく行くって言ってたわよね?この女子の群れの中に貴方のような体育会系美丈夫が並んでいるの?根性があるというか神経が太いというか…。


「ノエル様は…心が強いな」


マクシミリアンの思わず呟いた一言に、わたくしは深く頷いて同意を示した。

並んだ女子達がマクシミリアンの方を赤い顔でチラチラと見ている。

ふふふん、素敵でしょう、うちの執事は!

格好いいだけじゃなくて優しくて気遣いも人一倍出来て甘やかしてくれて…とにかくパーフェクトなのよ!

わたくしは見た目は美少女だけど非モテコミュ障ですけどね!

今日もクラスの女の子に勇気を出して話しかけたら『恐れ多い…!』って逃げられたわ。

……恐れ多いってなんなの。わたくし悪代官か何かなの?


……悪役令嬢でしたね。


ノエル様は高嶺の花だから近寄り辛い、なんていい風に言ってくれたけど…。

普通高嶺の花に話しかけられたら嬉しいんじゃないの?

…やはりコミュ力の問題か、本当は嫌われているのか…。

それともシュミナ嬢の流す噂が深刻なレベルで影響を齎しているのか。


はふり、と溜め息を吐くとマクシミリアンが心配げにこちらを見た。


「お疲れになられましたか?お嬢様」


繋いでいる手にぎゅっと力を込めてくる。

……そういえば……先程は茫然とし過ぎてあんまり気に留めて無かったけれど、マクシミリアンにずっと手を繋がれて引かれていたのだ。

しかも恋人繋ぎ。しかも、執事服じゃないから素手。直にマクシミリアンの体温が、伝わってくる。

その事を急激に意識して顔が真っ赤になった。


非モテには、キャパオーバーじゃありませんかね!!


彼にはいつもお姫様抱っこされたり、ハグされたりしてる訳だけど…。

今日は、そう、自分でそう仕向けた訳だけど…プライベート感が強いのだ。

その上、マクシミリアンが、当社比2倍で、なんだか空気がピンクなのだ。

だから調子が狂うんだ。


「疲れてないわ!」


繋いだ手をぶんぶん、と振るけれどマクシミリアンの手はそんなに強く掴んでいる訳でも無いのに離れない。

ぐ…ぐぬぅ…。


「……お嫌ですか?」

「嫌じゃないから!困るのっ!今日のマクシミリアン変よ!」

「お嫌じゃないなら、繋いだままでいましょう」


その言葉に唖然としてしまう。対して、マクシミリアンは何故だかとても満足気で…にこにこと微笑みながら私を見つめて来る。

わたくし怒ってるのよ?どうしてそんなにいい笑顔なの?

……もう……やっぱり変よ……。


「お客様。2名席が空きましたのでお通しします」


むくれながら嬉しそうなマクシミリアンを睨んでいたら、ウェイトレスが席が用意出来た事を知らせに来た。

いつの間にか列の最前列まで進んでいたらしい。


『は~美男美女のカップル…』

『どちらも貴族様かなぁ。すごいね、キラキラだねぇ』


後ろから聞こえた声に『違います!カップルじゃないです!』って言い訳したかったけど…。

あれ、なんで言い訳したいんだろ…?とふと思う。

マクシミリアンとカップルでも……別にいいのかな?なんて考えてしまうのは…。


(……なんだか、マクシミリアンの変な雰囲気に毒されている気がする……)


遠い目で、ふっと溜め息を吐いてしまった。


店内は外観とイメージを違わずとても可愛い装飾で、見ていて心が浮き立った。

薄いピンクに白のボーダーが縦に入った壁。大きな窓には贅沢に布地を使った白いカーテン。

天井には豪奢、というよりも可愛らしいデザインのシャンデリアが掛かっている。

並べられた白の丸テーブルに座っているのは、女性かカップルかの2択だ。

ノエル様…貴方って本当にすごいわ…。

2人で向い合わせで席に着いて、ようやく気持ちを落ち着ける。

そうよ、今日は本題があるんだから!

マクシミリアンに遊ばれてる場合じゃないのよ!

気合を込めて両手でぐっと拳を作る。

それをマクシミリアンになんだか熱の篭った眼差しで見つめられてる…。

うう…そんな目で見ないで…気合を入れたのに溶けてしまうじゃない!


「お嬢様、ご注文は何にしますか?」


マクシミリアンがにこり、と笑ってテーブルに備え付けられているメニューをこちらに向けて開いた。

そう!そうだ!本題もだけどケーキも注文しないと!


「わぁ…!流石ノエル様のおススメね!ケーキの種類が豊富…!マクシミリアンは何を食べますの?」


メニューには色とりどりのケーキの名前とイラストが並んでいる。

ガトーショコラ…ミルフィーユ…!フルーツタルトにモンブラン…!

どれを食べようか迷ってしまうわ…!


「私はこのパウンドケーキで」

「シンプルでいいわね!わたくしは…うう…2個食べるのは無茶かしら…」


食べる事自体は可能なのだ。余裕で。だけどお腹回りが心配なの。

胸は無いのに腹だけある令嬢ってダメだと思う…!


「お嬢様は細身なので、3個くらい食べても大丈夫だと思いますが」


マクシミリアンが苦悩しているわたくしを見ながら少し可笑しそうに言う。


「……脱いだらお腹がすごいの」

「……脱いだら……」

「そう、脱いだらほんとに…意外とすごいのです」

「意外と、すごい…」


はー…っと溜め息を吐きながらメニューから目を逸らす。

うん、1個だけ、1個だけにするわ。このフルーツタルトにしよう。

そう決めてマクシミリアンに視線を向けると、何故か顔が真っ赤だった。

わたくし何かおかしな事を言ったかしら?

こほん、と咳払いをした後にマクシミリアンがウェイトレスをスマートに呼んで、オーダーを済ませてくれた。

しばらくすると、注文した品々が並べられる。

ああ…お皿やカップまで可愛い…!こういう気遣いが人気店の秘訣なんだろう。


そろそろ、本題に入らないと。


「ねぇ。マクシミリアン」

「なんですか?お嬢様」


ニコニコと機嫌の良い顔で返されると、言い辛いじゃない…。

わたくしは一口紅茶を口にして、口の中を湿らせてから本題を切り出した。


「……メイカ王子と話していた時、貴方……どうして様子がおかしかったの?」


そう切り出すと、マクシミリアンの紅茶を口に運ぶ手が止まった。


「あのね、マクシミリアンには昔から、色々相談に乗って貰ったり、励ましたりして貰っているでしょう?わたくしも…貴方が悩んでいるのであれば、力になりたいの。わたくしに出来る事があればなんでも言ってね?」


マクシミリアンの目を、見つめながら誠意が伝わるようにと願いながら言葉を紡ぐ。

するとマクシミリアンが眉を下げて少し困ったような顔で、口を開いた。


「……なんでも、ですか?」

「ええ!なんでもよ!」


安心させるように頷いてみせる。

マクシミリアンが何か不安なら、出来るだけ取り除いてあげたいもの!


「……お嬢様は……昔、平民と南国に駆け落ちしたいと……仰られていましたよね」

「!!!!!!!!!!!」


マクシミリアンから発せられた言葉に、呼吸が止まった。

昔……そんな事を口にした事が……あったのだろう。

まさかマクシミリアンに聞かれていたなんて…!


「……今も、そう思っておられますか?南国に、移住をされたいと」


ああ。聞かれていたから、パラディスコ王国にバカンスに行くのを反対したんだ。

あちらで条件に適した人を見つけたらそのままパラディスコ王国から戻って来ないと、マクシミリアンは思ったんだろう。

シュラット侯爵家に仕えている彼が…それを喜ぶはずがないものね。

言葉に詰まって、マクシミリアンの方を見ると彼の顔はとても真剣で。

『子供の頃の戯言よ』と誤魔化す言葉を口に出せずに、わたくしは俯いてしまった。



「――――お嬢様が南国での生活を共にするのは、私では、ダメですか?」



――――え……。

マクシミリアンから聞こえた言葉の意味が、最初は理解出来なかった。


「私はお嬢様を……昔からお慕いしております」


マクシミリアンが……私の事を、お慕い、している……ですと??

彼からのまさかの告白に、頭が真っ白になる。

彼の顔は冗談なんかを言っている様子ではなく、真面目そのもので…。


「お返事を急かすつもりはありません。学園の卒業までに……お嬢様が私でいいと思って下さるのなら。攫っても、宜しいですか?」






あの、告白イベントって、卒業パーティ後、ですよね?

まだ1年生の1学期ですよ。

イベント……早すぎやしませんか!?

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