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令嬢13歳・後夜祭に至る幕間・後

 結局わたくしたちはクラスの仮装喫茶へと戻り。ユウ君が淹れてくれる紅茶や珈琲を頂きながらのんびりと過ごしていた。

 ケーキはとっくに完売していて甘味が無いのが寂しいなぁ、なんて思っていたらハウンドがどこからかクッキーを持ってきて皆に振る舞ってくれた。ほんと……見た目に反してハウンドはできる子だ。

 だけどこういう時チラリとこちらを見てドヤ顔でニヤリと笑うから腹が立つのよね。どうしてわたくしにドヤ顔するのよ。ミルカ王女の執事だけど頬とか抓っていいかしら。


「ビアンカ嬢。そんなに見つめられても俺本命がいるんで、困るッスよ」


 しかも薄い唇を上げて無駄に官能的に微笑まれるし。すんごい無駄に! 官能的に!


「誰か見つめてますのよ。マクシミリアンの十分の一の色気もない人を見たりしませんわ!」


 手で招いて頭を下げさせてからその形のいい頭をぺしりと叩くと彼はケラケラ楽しそうに笑う。……なんだかなおさら腹が立ってしまったわね。


「……俺もビアンカに叩かれたい……」


 フィリップ王子がぼそりと呟き、結局ミルカ王女に引きずられるように付いてきたベルリナ様が紅茶を吹きそうになる。フィリップ王子、貴方それじゃドMみたいよ。


「お嬢様、私もいつでも叩いて構いませんので」


 紅茶のお替りを用意しながらマクシミリアンもそんなことを言い出した。

 ……マクシミリアン、貴方までなにを言い出すの! ゲーム中で悪役令嬢に叩かれていたのは実は趣味とかじゃないわよね!?

 嫌だ。わたくし色々な男性を叩きながら躾けるような令嬢だとは思われたくない。


「――で、後夜祭なんだけどさ」


 ミルカ王女が紅茶を飲みつつ目をキラキラとさせながら切り出した。

 後夜祭は学園の庭園を使ってガーデンパーティの時と同じように行われる。

 そしてもちろんダンスパートナーが必要なんだけど……。

 後夜祭は学内への入場が許された身分の方なら学生じゃなくても参加できるからマクシミリアンをパートナーに選んでもいいのだ! ぜひマクシミリアンと参加したいわ。

 でもフィリップ王子とマクシミリアンがパートナーのことで揉めそうな気がする……こんなことを思うのは自意識過剰みたいで嫌なのだけど。多分揉める。


「フィリップ王子とマックス、絶対にビアンカのパートナーの件で揉めるでしょ? だから皆パートナーを変えつつ踊ろうよ! 私もビアンカと踊りたいし!」

「……女性同士でダンスですか?」


 ミルカ王女の言葉にマクシミリアンが首を傾げる。


「後夜祭は無礼講みたいなものだしいいでしょ? 私これでも男性パートは得意なのよ!」


 彼女はマクシミリアンに逆らうなよと言わんばかりの凄みのある笑みを浮かべ、彼も珍しく言葉に詰まる。……ミルカ王女は、お強い。


「……まぁ、パートナーを変えつつというのは揉める面倒がなくていいかもな。だがビアンカのファーストダンスはマクシミリアンには譲らないぞ」


 フィリップ王子は紅茶を口にしながら揉め事の火種になりそうなことを言い出した。マクシミリアンも剣呑な目でフィリップ王子の方を伺い見る。


「フィリップ王子、ビアンカのファーストダンスの相手は……」


 ミルカ王女が立派なお胸をドン、と叩く。


「もちろん私よ!」

「むぅ……!!」


 ミルカ王女の言葉にフィリップ王子が唇を尖らせてものすごく不満そうな顔をした。


「いいじゃない。マックスにファーストダンスを取られるわけじゃないんだから」

「そ……そうですわよ、フィリップ様。丸く収まりますし楽しいですわよ、ええ!!」


 わたくしもミルカ王女の援護射撃をする。揉めずに楽しくが一番よね!


「その後夜祭って僕も行っていいのかな?」

「ミルカと踊れるなら俺も行くッス!」


 ユウ君がニコニコしながら話に入ってくる。そしてハウンドも。


「大丈夫だと思いますわ。学園に立ち入れる方ならどなたでも参加できるイベントですし」


 貴族の学園なのでその『立ち入れる』が難題なのだけど。


「じゃあビーちゃんと踊れるね。楽しみだなぁ」

「ユウ君はダンスが踊れるの?」

「ふふ。僕は一応伯爵様だよ? 実は社交用に結構練習したんだ」


 そう言ってユウ君はくるりとターンしてみせる。さすが元モデル、綺麗な動きだなぁ……。

 周囲でお茶を飲んでいた令嬢たちからもピンク色のため息が漏れた。ユウ君、またモテてしまいそうね。

 ユウ君は昔からそつなくなんでもこなしてしまうのだ。

 そういえばユウ君ってこの世界に来て魔法を使えるようになったりしたのかしら? ユウ君のことだからなにかチートな魔法が使えそうな気がする。今度聞いてみようかな。

 ……わたくしもチートが欲しかったなぁ。


「俺もビアンカ嬢とも踊ってあげるッスね」

「結構ですわ」


 ハウンドがニヤリとしながらわたくしの手を取りながら言うので、その手をぶんっと振り払うと彼は声を立てて笑った。……この人、わたくしへの軽い嫌がらせを楽しんでる節があるわね。


「えっと……ミルカ王女とわたくしが女性同士で踊るってことは……。男性同士もペアで踊るのかしら?」

「それは死んでも嫌だ」

「虫唾が走りますね」


 ふと思いついた疑問を口にするとフィリップ王子とマクシミリアンが即座に返す。まぁ、そうですよね。

 ジョアンナと彼女のお付き? の学園祭の準備をお手伝いしてくれていた女の子も誘ってみようかな。

 ……マクシミリアンとジョアンナが踊ったらすごく面白い反応が生まれそうね。うん。正直わたくしは、それが見たい。

 ゾフィー様とマリア様も合流できたら誘ってみよう。そして……。

 チラリとベルリナ様の方を見ると頬を染めてフィリップ王子の方を見つめている。


「……わ……私も、フィリップ王子と踊ってもいいのかしら……」

「ああ、ペアを変えつつなら当然そうだな?」


 ベルリナ様の独り言にフィリップ王子が耳聡く反応する。

 それを聞いてベルリナ様の頬はさらに真っ赤になった。


「……ふぁあ……」


 ベルリナ様は、年相応の恋する乙女そのものといった様子で小さな両手で顔を隠した。

 フィリップ王子、貴方に恋する可愛い女の子がそちらにいますよ!

 そんなベルリナ様に無関心で紅茶を飲んでいるフィリップ王子に目配せをしたら、軽くウインクをされてしまった。

 ……違う、そうじゃない。

南国はこのお話で199話らしいです(*´ω`*)

次回は200話…!

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