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閑話26・短編まとめ12

活動報告にアップしている短編まとめその12です。


『愛しい棘だらけの花』(ゲーム世界線上のマクシミリアンとビアンカのお話)

『私が彼女の盾となる』(時系列は学園編お付き合い後)

『二人のとある噂』(ビアンカ幼少期。マクシミリアンとジョアンナのとある噂)


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『愛しい棘だらけの花』


「この駄犬! わたくしに恥をかかせて!!」


 そう声を荒げるとお嬢様は私に花瓶を投げる。

 当たると大惨事だが、当たらなくてもお嬢様が癇癪を起こし大惨事だ。

 私はお嬢様に気づかれないように風の魔法で防護膜を張って花瓶が当たるのを防いだ。お嬢様の角度からはきっと、当たっているように見えただろう。水は多少引っかぶっているしな。

 ちなみに私はお嬢様に欠片も恥をかかせていない。

 食堂へお嬢様と行ったら、お嬢様の婚約者フィリップ王子がピンク髪の令嬢と楽しそうに食事をしていた。

 それに対してお嬢様が激怒をしてもフィリップ王子はどこ吹く風……そんな出来事があったのだ。


「申し訳ありません、お嬢様」


 フィリップ王子の浮気の責任の所在が、私にある訳がない。

 けれど頭をここで下げておかないと後が面倒だ。苦々しい気持ちを隠して私は彼女に詫びを言い、許しを乞う目を向けた。

 だけど彼女の怒りは収まらない。


「駄犬、あの小娘はなんなの! わたくしのフィリップ様に手を出すなんて、どれだけ身の程知らずなのよ! 駄犬、あいつを殺しなさい!!」

「……お嬢様。私は執事で暗殺者でもなんでもございませんので。そういうものは他所にお願いしてください」


 ため息をつきながらそう言うとお嬢様の癇に障ったらしい。彼女は小さな手を振り上げて、小気味よい音を立てながら私の頬を打った。


 ――あのピンク髪の令嬢のことがなくても、これじゃ婚約者に好かれるわけがないだろうがこの馬鹿女。いや……婚約者以外にも愛されるはずがないな。


 そんな本音は綺麗に心に包み隠す。


「力が足りず、申し訳ありません」


 私がそう言うと彼女はふん、と鼻を小さく鳴らした。


 そう、こんな苛烈な花を愛せるのは私くらいのものだ。


 この見た目だけは美しく、だけど内面は醜くて愚かで苛烈なこの少女に私は歪んだ恋をしている。

 私まであのご令嬢に興味を見せたら……お嬢様はどんな顔をするのだろうか。

 怒るのだろうか、喚くのだろうか。興味を示さない、ということもあり得るが……。

 ああ、愚かなお嬢様の歪む顔がもっと見たい。

 ピンク髪の令嬢のからそっと渡されたランチのお誘いの手紙を私は開く。王子も側にいたのにあの女もよくやるものだ。

 ……だが試してみるのも、いいかもしれないな。

 私はお嬢様に負けず劣らずの、歪んだ笑みを浮かべた。


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『私が彼女の盾となる』


「ねぇ、従僕ごときが私に何の用なの?」


 私はとある令嬢を校舎の裏へと呼び出していた。

 呼び出された当の令嬢はなんだかソワソワとしているが……別に私は彼女に告白などをしにきた訳ではない。


「お嬢様に、要らぬ手出しをしようとしていたようですが。計画が破綻したことをお伝えにまいりました」


 私が表情一つ動かさずに言うと、ご令嬢の顔が醜く歪んだ。

 彼女はフィリップ王子の婚約者候補の一人である。

 『犬』を放ってお嬢様へ害をなす存在がないか嗅ぎ回ったところ、このご令嬢がお嬢様に危害を加える計画を立てているとの情報が入った。

 フィリップ王子の婚約者に相応しくない見た目になるよう、人を雇って顔を傷つけるという陰湿な計画だったようだが……。


「なっ……なんのことよ……!」

「貴女が依頼した男はもう捕まえて騎士団に送りましたし、シュラット侯爵家にも報告済みです。追って処罰に関する連絡もあるかと思いますので」

「なっ……!!」


 私の言葉に令嬢は言葉を無くし立ち尽くした。

 ……彼女の家は伯爵家だ。上位の存在であるシュラット侯爵家の令嬢に傷をつけようとしたとなると、どんな厳罰が下るだろうな。

 旦那様も娘を傷つける者には容赦をしないから……本気で家を取り潰しにかかるかもしれない。


「では、失礼いたします」


 私はそう言って彼女に一礼し、その場から去った。

 以前は存在をバレることを恐れ使用を控えていた『犬』達だが、近頃は大いに活用している。もちろん、細心の注意を払って見つからぬようにしながらだが。

 ……忌み嫌っていたこの力だが、活用し始めると便利なことこの上ないな。

 影が、ぞわりと動いた。

 『犬』達がまた、新たな情報を運んできたのだ。

 今度はどこの馬鹿がお嬢様に手を出そうとしているんだろうな……。


 お嬢様を傷つける者は、私が全て排除する。

 それが執事の嗜みだ。


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『二人のとある噂』


「ねぇ、マクシミリアン。ジョアンナとお付き合いしてるって噂が流れてるのだけど、本当?」


 自室でマクシミリアンのお膝の上に抱きあげられ、のんびりとした午後を過ごしていた時。

 わたくしがそう訊ねると、彼は目を丸くした後に今まで見たこともないくらいに渋い顔をした。

 ……どうしてそんなに嫌そうな顔をするのかしら。もしかして知られたくない秘密のお付き合いだったとか?

 マクシミリアンもジョアンナも美形だから、噂が本当ならお似合いだと思うのだけど。……マクシミリアンを取られたような気持ちには、少しなってしまうけど。少しだけね!


「……そんな噂、どこから」

「メイドたちが噂してたわよ? 二人がとても気心が知れている様子だからお付き合いしてるんじゃないかって」


 ジョアンナとマクシミリアンは少し年が離れてはいるけれど四、五歳差くらいだったら全然許容範囲よね。


「お嬢様。アレとお付き合いするなんてことは、起こり得ません。ジョアンナですよ、ジョアンナ!! あの性悪な女と付き合うだなんて虫唾が走ります!」

「――私だってマックスとなんて嫌ですよ。性格悪いしすぐ暴力を振るうし。取り得なんて顔だけじゃないですか」


 いつの間にか部屋に来ていたジョアンナもマクシミリアンと同じような苦虫を嚙み潰したような顔をしている。


「……顔だけが取り得なのはお前だろう。ジョアンナ・ストラタス」

「なぁに言ってるのよマックス。私には溢れんばかりの知性が宿ってるんですよぉ」

「お前のは賢いではなくずる賢いと言うんじゃないか?」


 ……確かに二人は気心は知れているようだ。だけどこの雰囲気は恋人というよりも姉弟って感じね。


「噂の元を絶たねばなりませんね……。これ以上そんな噂が広まると私の名誉に関わる」

「それは、同意よマックス」


 二人はそう言って目線を交わし頷き合うと部屋から急ぎ足で退出した。

 ……二人が付き合ってるかはともかく、とても仲はいいわよね。

マクシミリアンは苛烈なお嬢様にも恋をしたままというお話などでした。

ジョアンナとマクシミリアンはジョアンナが結婚するまで定期的に突き合っているという噂が流れていた様子。


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