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ノエル・ダウストリアは負けられない(ノエル視点)

 ゾフィーに、プロポーズをした。


 いや、前々から婚約の打診を彼女にはしていたんだけどね。ゾフィーが自分に自信を持てないという理由で、のらりくらりと断られているんだ。

 どうして彼女は……あんなに自信がなさげなのだろう。とても可愛いのにね、うん。

 ……実はゾフィーを介せず、カロリーネ子爵家に直接申し込めば婚約の話はすぐに通るんだ。家格はうちの方が高いし、なにより近衛騎士の家系で王家とも密な関係だしね。平均的な子爵家である彼女の家にとっては二度とないくらいの良すぎる条件だと思う。

 それをしないのは、ゾフィーの気持ちも欲しいという俺の我儘だ。

 だけどのんびりしていたら、彼女が他の男に妙なちょっかいを出されそうで正直怖いのだ。だから早く、婚約という形のあるものが欲しい。

 欲目じゃなくてゾフィーは可愛い。隠れて彼女を好いている男は結構多いんだよ。

 その……ゾフィーのふくよかな体と大きなお胸には男の夢が色々と、詰まっているしね。もちろんそこだけが彼女の魅力じゃないんだけど!

 キラキラとして大きな紫色の瞳には好奇心と愛らしさが溢れているし、白い肌はきめ細やかで思わず触れたくなるほど綺麗だ。唇はピンクで瑞々しくて、お喋りをする時にその口角がきゅっと楽しそうに上がるのを見るのが好きだ。小さな鼻に浮いたそばかすも可愛らしい。

 のんびりした優しい性格も素敵だし、彼女の欠点にも思える傷つきやすい繊細さは人への優しさの裏返しだと思う。

 よく食べるところもとても可愛い。体重を気にしながらも我慢ができずに葛藤しているのを眺めているのはとても楽しいし、美味しいものを口にした時に綻ぶ顔は愛らしいにもほどがある。

 ゾフィーのいいところは、語っても語り尽くせないよ。


 ……つまり俺は、彼女に夢中なのだ。


 ロマンチストな彼女のことだ、騎士祭の勝利を口実にすればきっとプロポーズを受けてくれる。その思惑は見事に的中した。

 真っ赤になって多少正気じゃなさそうだったけど……きちんと頷いてくれた。


 ――彼女が頷いてくれたことに喜んでいるばかりじゃなくて、まずは優勝しないといけないんだけどね。

 あれだけ啖呵を切って勝てないなんて情けないことにはなりたくない。

 カーウェル公爵家、エイデン様の子飼いのリュオンにはライバル視をされているけど……俺の敵は彼じゃない。彼には一度も負けたことがないしね。筋が悪いわけじゃないけど、猪突猛進な性格が災いして彼の剣技は愚直で読みやすい。

 三年にいる騎士試験に先日受かったアイン様に、剣技の授業で近頃頭角を現している二年のシュヴァルツ様……警戒すべきはそちらだと思う。

 特にアイン様は魔法もお得意だからね。騎士祭では魔法の使用も認められている。動きながらの魔法の使用は練度の高いものは難しく、大きな攻撃は飛んでこないと思うのだけど……魔法が不得意な俺には命取りになりかねない。


「まぁ、ゾフィーの愛の力が俺にはあるから。負ける気はしないけどね」


 そんなことを嘯きながら俺は銀色の鎧を身に着けていった。公の場で剣技を披露するのはこれが初めてだ。さすがにそのことに緊張を覚えてしまう。だけど俺には今回の参加者の誰よりも訓練をしてきた自負がある。

 しかもそれは生半可なものではなく、あの『ダウストリア家』の訓練だ。

 ビアンカ嬢の美しいかんばせが脳裏に浮かぶ。……父の厳しい訓練に耐えられたのは、彼女のお陰だ。

 彼女の騎士になりたいと願ったあの日があったから。父の激しい罵倒や、訓練で精も根も尽き地面に倒れたまま翌朝を迎えるような、そんな毎日に耐えられたのだと思う。

 それに俺はね。将来フィリップ様の盾と鉾となるべき、ダウストリアだ。

 そういう意味でも在野の騎士に負けるわけにはいかないのだ。

 勝たなければならない理由は、山ほどあるね。


「よし、頑張りますかね」


 剣を腰に差し、俺は大きく息を吐いた。

ノエル様は頑張るのです!

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