閑話17・短編まとめ4
活動報告にちょこちょこ上げている短編のまとめその4です。
今回はミーニャ王子のお薬を使ってマクシミリアンとビアンカがイチャイチャしているだけのお話。
『お嬢様のお耳』(ミーニャ王子後、学園祭前)
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『お嬢様のお耳』
お嬢様がミーニャ王子からの贈り物の『獣人化』できるお薬を自分も飲みたいと言い出した。
学園祭の仮装で使用したいらしい。
しかしあの薬……特殊なものであるし、何が入っているか分からない。
お嬢様のお体に万が一のことがあったら困るので、ジョアンナに頼みストラタス商会の薬学部門で確認してもらったところ人体に全く害はないようで一安心した。
……私自身はなんの確認もせずに飲んでしまったが、お嬢様の手ずから頂いたものに害があるのならそれは仕方がないと思っている。
それを聞いたお嬢様は『もっと自分を大事にして! 貴方私が渡したら毒でも飲みそうよ!』と悲鳴を上げた。
当然、毒でも頂いたら飲みますが……。
「じゃあ、飲むわね」
お嬢様はキラキラと瞳を期待で輝かせ小瓶に入った青い液体を一口飲んだ。
ちなみにこの薬を……というかこの薬を飲んで狼の獣人になった私をお嬢様が大変お気に召している為ミーニャ王子からはダース単位で在庫をもぎとって、いや、頂いている。
生温かい目で『お盛んだな……』と呟かれたが、なんのことやら。勝手にいかがわしい想像をしないで頂きたい。
液体を飲んだお嬢様は見るからにわくわくしながら、今か今かとその時を待っている。
その様子はとても可愛らしく私は内心悶えながらも平静な顔を保つ努力をした。
うちのお嬢様は本当に可愛い。
一見聡明で凛とし近づき辛い印象を与える彼女の柔らかで愛らしい本質は親しくならないとなかなか人には伝わらないし、伝わらなくてよいと私は思っている……主に彼女に恋慕の眼差しを向ける男共には。
そんなことを考えながらお嬢様に見惚れていると、お嬢様の頭に可愛らしい白い二本のお耳が生えた。
お嬢様の頭に生えたのは、可愛らしいうさぎのお耳だった。
ああ、なんということだ……!可憐で守りたくなるお嬢様に、か弱き草食動物の耳がこんなに似合うとは……!
お嬢様が私の狼獣人姿に執着するお気持ちがたちまちに理解できてしまった。
「う……うさみみだわ!すごいわね、マクシミリアン!」
彼女は鏡の前に立ち嬉しそうに白い耳を揺らしてみたり、スカートの下に生えているのであろう丸い尻尾を触りながら気にしていたりと楽しそうだ。
「お嬢様、お似合いですね」
そう言いながら両手をお嬢様に向けて差し出すと、お嬢様はなんの迷いも見せずに無防備な笑顔を浮かべながら私の胸に飛び込んできた。
……お嬢様が幼い頃から習慣づけた甲斐があったな。
しかしこんなに無防備だと、悪い狼に食べられてしまわないか心配だ。
細い体を少しだけ強く抱きしめるとお嬢様はくすぐったそうに笑い声を上げながら、湖面の色の大きな瞳で私を見上げた。
「可愛いうさぎさんになれているかしら?」
そう言ってお嬢様は白い頬を染めはにかんで笑いながら長いお耳を少し揺らした。
この世で一番可愛いです、お嬢様。
「可愛すぎて……食べてしまいたいです、お嬢様」
悪い狼は、私だったらしい。
目の前でふらふらと揺れるお嬢様のお耳をそっと食むとお嬢様の体がびくっと揺れた。
「ママママクシミリアン! それ、くすぐったい!」
「私が狼の獣人になった時……お嬢様は遠慮なく触れてらっしゃいましたよね?」
「触ったけど! ひゃあっ!」
お嬢様の体から手を放し今度は長い両耳に両手でそっと触れ、ふにふにと感触を確かめた。
「マ……マクシミリアン! くすぐったいんだってば! ハウス! ハウスよ!!」
お嬢様、私は犬ではないのですが……。いや、お嬢様の犬という意味では間違っていないな。
それにしてもうさぎの耳というのは柔らかくてよい感触なのだな。
お嬢様がくすぐったさに耐える様子もとても可愛らしいし。
「お嬢様、もう少しだけ……」
「マクシミリアン!!!」
お嬢様が本気で泣き出しそうだったので手を放すと、彼女はまるで本物のうさぎのように部屋の隅へと駆けて逃げて行った。
その後、お嬢様がご機嫌を直しこちらへの警戒心を解いてくれるまでに2時間を要し、私は少しだけ後悔をした。
本日もご閲覧ありがとうございました。
うさぎのおみみは可愛いですよね(*´ω`*)