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令嬢13歳・わたくしは秘密道具を手に入れる

 ミーニャ王子からの先日の件での賠償の品が届き、わたくしとマクシミリアンは興味津々でそれを荷解きした。

 魔法が使えない獣人の為の魔法の補助具だそうだけど、それは進化を遂げ補助具というよりは便利道具のようなものになり、単価の高さがネックであるものの(最も高価なものだと1つで大きめの邸が買える値段になる)あちらの貴族の間ではかなり普及しているそうだ。

 贈られた品はミーニャ王子の私物らしい……そんな高価なものを持ち歩くなんて流石王族ね。

 ミーニャ王子から頂いた箱を開くと、3つの物が入っていた。

 1つは姿を変えられる髪留め。

 2つめは身に付けると透明になれるマント。

 3つめは攻撃を受けた時に自動的に弾いてくれるネックレス。

 ……最も高価なものが、3つも入っているんじゃないかしら、これ。

 父様……かなり吹っかけたのね……。

 ミーニャ王子からのお手紙も入っていて『髪留めとマントは製作した魔法師よりも優れた魔法師には看破されてしまうが、かなりの力がある者に作らせているので大抵の事では見抜かれないだろう』と書かれていた。

 マクシミリアンに念の為見て貰うと、『……私以外のこの学園に居る者にでしたら、効果があると思います』と太鼓判を押してくれた。

 マクシミリアンには看破されちゃうのね。でもすごいものを貰ってしまったわ。

 こんなものどうやって作っているんだろう。

 マントの方は高度な光魔法を使用してるのかな……髪留めは光魔法と目くらまし用の闇魔法のかけ合わせ? 何にしてもすごい物だ。


 ……それにしても、姿を変えられるなんて。

 あくまで自分がベースなので誰かそのものには変化出来ないそうだけど……だからマクシミリアンになったり、なんて事は出来ないみたい……それでもちょっと嬉しい。

 ま……魔法少女みたいでテンションが上がってしまう。


「この髪留めを使ったら、男装の時にいちいちお着替えしなくて済むのね。ちょっと試しに……『ペルフィディ』」


 髪留めを付けて男装の時の姿を想像しながらミーニャ王子のお手紙に書いてある言葉を唱えるとキラキラとした光の粒子が体を覆って、男装のわたくしに姿が変わった。

 肩幅が少し広くなって、喉仏もちゃんと出ていたりと身体的にもちゃんと男性のようだ。

 男装じゃなくてこれでは性転換ね。

 あくまで幻視のようなものなので声は変わらないけど……。

 次にジョアンナっぽいメイドさんをイメージしながら『ペルフィディ』と唱えるとジョアンナよりも身長が小さいジョアンナに少し似たメイドさんに変化した。

 なるほど、こういう範囲で変化するのか。


「すごい! 便利!!」


 鏡を見ながら思わずはしゃいでしまう。


「この学園では看破されないのであれば……エイデン様対策に使えるわね」

「そうですね。攻撃を弾くネックレスも結構な耐久力がありそうですし」


 マクシミリアンがネックレスを手に取り値踏みするように言う。

 そういえばシュミナ嬢はどんなご様子なのかしら。

 ……補助具の効果確認ついでに様子を見に行ってみようかな。


「早速これらの道具を装備して、シュミナ嬢の様子を見に行きたいのだけど」


 わたくしがそう言うとマクシミリアンは微妙な顔をする。

 大変な目にあったばかりなのに……とその目が訴えているけれど。


「行かせて? マクシミリアン」


 マクシミリアンの目を見つめて首を傾げると、彼は小さく溜め息を吐いて仕方なさそうに了承してくれた。


 髪留めで男子制服姿の男の姿になり、制服の上からばさりとマントを羽織る……マントも合言葉で透明になれるものだ……、そして首からネックレスを下げて準備は完了。

 影には勿論『犬』達が入っているし装備的にはかなり万全である。

 ……むしろ本体はそんなに強くないのに装備がチートな気がする。

 マクシミリアンを連れ寮をこっそり出て校舎に入ろうとすると、執事のハウンドを連れてふわふわと赤い髪を揺らして歩くミルカ王女の姿が目に留まった。


「ミルカ様」


 声をかけると後ろを振り返ったミルカ王女は、目を丸くした。


「……声でビアンカだと思ったのだけど……。貴方は、誰?」

「正真正銘お嬢様ですよ、ミルカ王女」


 マクシミリアンが楽しそうに言うとミルカ王女は目をぱちくりとさせた。

 わたくしは人気が少ない校舎の隅にミルカ王女を連れて行って、ベルーティカ王女との一件とその賠償でミーニャ王子に補助具を頂いた事、そしてシュミナ嬢に男装で時々勉強を教えている事も話した。


「惚れ薬の件はマックスからの報告で知ってたけど、そんな便利な道具を貰ったのね。……そしてあの女に勉強教えてるんだ。面白い事になってるのね」


 ミルカ王女に体調の回復を伝えに行った時になんだか訳知りな感じだったけど……マクシミリアン経由で伝わっていたのね。

 マクシミリアンはパラディスコの貴族になるのだし、そうなるとミルカ王女は主筋なので当然の事かもしれない。


「ね、今日もシュミナ・パピヨンと会うから男の姿になってるんでしょ? 私も行っていいかなぁ?」


 ミルカ王女がこてんっと首を傾げながら無邪気に言う。


「構いませんけど……。約束をしている訳じゃないので会えるとは限りませんよ?」

「……ふふ。こんな美少年と校内を歩けるだけでも僥倖よ。腕を組んでもいい?」

「いいですよ、ミルカ様」


 腕を差し出すとふわり、と腕に寄り添われる。そして腕に大きなお胸の感触が……とても羨ましいです。

 ミルカ王女といいジョアンナといいゾフィー様といいどうして周囲にはお胸が立派な人が多いのだろう。少しはわたくしに恵んで欲しい……。

 ミルカ王女は背が小さいから身長がさほど高くないわたくしの男姿ともなかなかバランスが良い気がする。

 コスプレ的な意味で、非常にテンションが上がった。

 ミルカ王女と腕を組んで図書室を目指すと驚いたような視線がチラチラと向けられる。


「ふふ、明日になったら私に恋人が……なんて噂になっちゃうかしら。ああ、女の子のビアンカも勿論素敵で可愛いのだけれど、男の子のビアンカは本当に素敵でかっこいいのね」


 ミルカ王女はとても楽しそうだ。……そんな噂になって困らないのかしら。

 彼女は恋人にするようにうっとりとした顔ですりすりと頭を腕に擦りつけて、熱を含んだ目をこちらに向けてくる。くっ……美少女の上目遣い可愛い……。

 危ない世界に目覚めたらどうするんですか……!

 先程から後ろ頭に突き刺さるハウンドの視線が痛い……そんな視線で刺すくらいならとっとと告白すればいいのに!! へたれパリピ執事!

 図書室の扉を開けて中を伺うと、シュミナ嬢は隅っこに腰をかけて相変わらず必死な顔で勉強をしていた。

 マクシミリアンはハウンドと一旦使用人サロンの方に下がったけれど、『犬』でエイデン様の様子を探ってくれている。……エイデン様との鉢合わせを心配しないでいいのは本当にありがたいわ。

 わたくしはシュミナ嬢にそっと近づくと『頑張ってるね』と耳元で声をかけてみる。

 するとシュミナ嬢は一瞬びくっとした後にこちらを見て目を丸くし、満面の笑みを浮かべた。

 そして腕に張り付いたミルカ王女に目を向けて疑問符が沢山浮かんだ顔をする。


「今日は友達も一緒なんだけど、いいかな?」

「ふふ、何度か顔は合わせた事はあるわね。ミルカよ」


 ……そういえば、すごーく悪い状況でこの二人は顔を合わせた事もあるわね。

 男装の方……『ヴィゴ』と名乗っている……では知らない情報なので知らんぷりしておこう。

 シュミナ嬢もあの時の事を思い出したのか顔を青くして慌て始めた。


「あのっ……ミルカ王女、私……無礼ばかり働いてしまって……! 申し訳ありません……!」

「ふふ。水に流すかどうかは、貴女の反省の度合い次第ね。謝ってくれたのはプラス加点よ」


 と言いながらミルカ王女はにこにこと笑う。

 いつも通りふわーっと笑っているように見えて、その目は注意深くシュミナ嬢を観察しているようだ。


「えっと、ミルカ様。ひとまず座りましょう?」


 ミルカ王女に席を勧めて、自分も着席する。

 ヒロインと、サポートキャラと、悪役令嬢(男)の勉強会……ゲーム中では起こり得ないシチュエーションだなぁ……。

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