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令嬢13歳・謎の美少年徘徊す

 秋も深まり学園祭も近付く昨今……。

 ルミナティ魔法学園には、一つの噂が飛び交っていた。


 ――とてつもない美少年が時折現れる。

 ――シュラット侯爵家の執事マクシミリアンに『様』付けで呼ばれているのを見た、シュラット侯爵家の縁者らしいぞ。

 ――ビアンカ様に会いに学園を訪れてらっしゃるのだろう。


 そんな、謎の美少年の噂が。


「……お嬢様、話題になっておりますね?」

「や……止めてマクシミリアン! なんだか恥ずかしいから!!!」


 シュミナ嬢の様子が気になって、男装で様子を見に行った姿が誰かの目に留まってしまったのか。

 男装のわたくしは『謎の美少年』として学園の噂になっていた。

 ああ……なんて恥ずかしいの! 羞恥プレイにも程があるわ!!

 シュミナ嬢にノートを届けると約束してしまったので、来週も男装で彼女と会う予定なのだけれど……。

 あまり目立つとエイデン様にまたちょっかいを出されるかもしれないのよね。


「……マクシミリアンにノートを届けて貰った方がいいのかしら?」


 それが接点でマクシミリアンとシュミナ嬢が仲良くなってしまったら、焼き餅を焼いちゃうかもしれないけど。

 だって『まとも』になろうと頑張っているシュミナ嬢は、本来のヒロインみたいでとても可愛いんだもの。

 ……こんな事を考えてしまうわたくしは、『悪役令嬢』の素養があるのかもしれない……。


「お嬢様が望むのならそうしますが……」

「……やっぱり自分で持って行く。マクシミリアンとシュミナ嬢が仲良くなったら、焼き餅を焼いてしまうもの」


 わたくしがそう言うと、マクシミリアンは嬉しそうに笑った。


「私の浮気が心配なのですか? お嬢様」

「マクシミリアンは、そんな事しないって分かってるわ。わたくしが疑り深くて性格が悪いだけなの。だって悪役令嬢ですもの」


 ぷくりと頬を膨らませると、マクシミリアンが優しく抱きしめてくれる。

 いつものミントの香水の香りに包まれて……安心感に思わず彼の胸に頬を摺り寄せてしまう。


「お嬢様の焼き餅は、嬉しいですよ? お嬢様と両想いになれた事自体が私にとっては奇跡のような事なのです。その上焼き餅まで焼いて頂けるなんて……」


 ……マクシミリアンは、わたくしを甘やかしすぎだと思うわ。

 悪い時にはきちんと叱っていいのに。

 大好きな人が彼氏の上に甘やかしなんて、わたくしダメになりそうよ。



 数日後。

 わたくしはシュミナ嬢との約束を守る為、図書室に向かっていた。

 今日はジョアンナが用意してくれた男子の制服を着ている。

 チラチラと視線を投げてくる生徒もいるけれど、気にしていても仕方ないわよね。

 全教科、シュミナ嬢が苦手なところを噛み砕いて説明したノートを作ってみたけれど……。役に立つといいなぁ。

 図書室に着くとシュミナ嬢が参考書を広げて一生懸命勉強している姿が目に入る。

 シュミナ嬢はわたくしに気付くと、嬉しそうに笑いかけてきた。


「頑張ってるね」


 手を振り、声をかけながら席に着く。


「まだまだわからない事だらけだけどねー。でも少しずつ勉強が楽しくなってきたの!」


 シュミナ嬢は言いながら、要点のチェックで真っ赤になった教科書を見せてくれた。すごく頑張ってる!


「はい、これ約束のノート」


 シュミナ嬢に数冊のノートを渡すと目を丸くされた。


「……こんなに用意してくれたの?」

「全教科分あるからね」


 彼女はパラパラとノートを捲って感嘆の息を吐いた。


「すごい……こんな丁寧なもの、ありがとう。お礼をどうやってすればいいんだろう」

「お礼なんていらないよ。強いて言うなら君の成績が上がるのが一番のお礼」


 そして是非エイデン様バッドエンドを回避して欲しい。

 シュミナ嬢はわたくしの言葉を聞いてコクコクと勢いよく頷いた。


「頑張る! 人生もかかってるし!」


 ……本当に切実な問題よね。

 わたくしだって監禁お薬漬けは遠慮したいもの……。


「おにーさんほんといい人! 好きになっちゃいそう!」


 彼女の言葉に、思わずピシリと体が固まる。

 わたくしがこんな紛らわしい格好をしてるのがいけないのよね……!

 頃合いをみて、ちゃんと正体を明かそう……。

 ……ゲーム中のヒロインは限りなく百合に近いミルカ王女とのエンディングがあった気がするけど。

 悪役令嬢とのエンディングは無かったわよね、うん。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ビアンカさんが、男装して「謎の美少年」と言われたり、シュミナちゃんのお勉強見てあげたり、エイデン様と対立したりする所、好きです!! 男装して学園かけまわるのって、読んでる方もワクワクして楽…
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