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令嬢13歳・メイカ王子は危惧する

 泣いてしまったゾフィー様をノエル様が追いかけて……そのまま授業の時間に入ってしまい。

 ハラハラとして気持ちで二人の帰還を待ちわびていたわたくしとマリア様は、授業が終わった後仲良く手を繋いでお二人が戻って来た事にとてもホッとした。

 ゾフィー様の逃走からシュミナ嬢とわたくしのひと悶着まで、一連の流れを見ていた他のクラスメイトの方々もなんだかホッとした顔をしている……。

 仕方なかったとはいえ、わたくしみっともないところを彼らに見せてしまったわね……なんて思うとなんだか落ち込んでしまった。

 ……高慢な令嬢に見えてしまったかしら。

 ちなみにシュミナ嬢とその取り巻き達も去ったまま戻っていないので授業はなんだか閑散としていて、担当の先生が少し可哀想になってしまった。


「ご心配おかけしまして、申し訳ありませんでしたわ」


 そう言ってゾフィー様はぺこり、と頭を下げた。

 彼女の目はまだ赤いけれど表情が今はとても生き生きとしている……ノエル様が上手くやってくれたのだろう。


「ゾフィー様の元気がお戻になられたのでしたら、本当に良かったですわ」

「ゾフィーさん、お帰りなさい!」


 わたくしとマリア様はゾフィー様とノエル様をニコニコとしながら迎え入れた。

 ノエル様はゾフィー様の手を離さないままで、ゾフィー様も少し照れた様子でその手を握りしめている。

 お二人は本当に、幸せなご様子だった。

 いいなぁ、青春……。

 マクシミリアン相手だと、まだ何一ついかがわしい事なんてしていないはずなのに……なんだか彼の雰囲気がいかがわしいから青春感が全くないのだ。

 わたくし前世は18歳、今世はまだ13歳なのよ。青春みたいな恋愛にだって、ちょっぴり……いや、かなり憧れる。

 マクシミリアンはゲーム中ではクールキャラではあってもお色気担当では無かったはずなんだけど。

 お色気担当といえば、メイカ王子だったもの。ミルカ王女の計らいで彼とはパラディスコでは遭遇しなかったけど……学園に戻ったしそのうち顔を合わせる事もあるんだろうなぁ。

 そんな事を考えていたら、教室の入り口辺りがなんだか騒がしい雰囲気になった。

 そちらの方を伺うと……メイカ王子が入口に立っていて、こちらへ手を振っている。

 わたくしは少しげんなりした顔をしてしまったが無視をする訳にもいかず、メイカ王子の方へと向かった。


「ごきげんよう。何か御用ですの?」

「シュミナ・パピヨンの事で、ビアンカ嬢の耳に入れた方がいいかなって事があったからね。来ちゃった」


 不機嫌な様子を隠さずに挨拶をするわたくしに、メイカ王子は『来ちゃった』の部分で色気たっぷりにウインクをした。

 すると周囲の令嬢達がその色気に当てられてざわめく。

 ……いかがわしいのは、マクシミリアンでもうお腹いっぱいなのよ、わたくしは。

 それにしても……シュミナ・パピヨンの事で? 何の話なんだろう。

 メイカ王子にもシュミナ嬢とわたくしの不仲が知られているのね……なんて思ったけれどシュミナ嬢は取り巻きを連れて衆目がある中わたくしに絡んでくる事が多かったので知っていても不思議はないし、ミルカ王女経由の情報かもしれない。


「ちょっとだけ付いて来て貰えない?」

「……少しだけ、なら」


 正直断りたいのだけれど、シュミナ嬢がまた何かをやらかしそうなら聞いておきたい。

 メイカ王子はミルカ王女やご両親に釘を刺されたみたいだから、多分変な事はしないだろうし。


「メイカ王子久しぶり。ビアンカ嬢、俺も一緒に行った方がいい?」


 ノエル様がいつの間にかこちらに来ていて、笑顔でメイカ王子に挨拶をしながらわたくしをそう気遣ってくれた。ノエル様が一緒に来てくれるのなら安心なのだけれど。

 でも……ノエル様には、今はゾフィー様のお側に居て欲しいわ。


「大丈夫ですわ、ノエル様。すぐに戻りますので」


 そう言ってわたくしはメイカ王子の後に続いて廊下に出た。

 彼が歩く度に赤い髪がふわりふわりと揺れてその様はなんとなくミルカ王女を彷彿とされる……双子だから当たり前なのだけれど。


「今うちの教室に、シュミナ・パピヨンが来てるんだけど……」


 そう言ってメイカ王子は彼の教室にわたくしを連れて行った。

 そして教室の入口からこっそりと、中の様子を覗かせた。


「彼女が話してる相手、こっそり見て」


 そう言われ彼が差す方を見てみると……シュミナ嬢が、一人の男性と話をしていた。

 オレンジ色の瞳、肩口で切り揃えられた青い髪。屈託なく笑うその顔は透明感のある美貌だ。彼が与える印象は優しげだけれど……本質は違う事を、わたくしは知っている。……どうして?


 ――ああ、そうか。彼は隠しキャラだ……。


「……エイデン・カーウェル様……公爵家子息ですわね」

「そ、シュミナ・パピヨンがすごい剣幕でうちのクラスに来てね。彼に君の愚痴を語るもんだから、ちょっと老婆心でお知らせにね? エイデンは家格が君より上だし面倒事にならないといいなと思ってさ」


 確かに……今までの取り巻き達とは話が違う。彼に出張られたら面倒だ。

 わたくしは楽しげに話すシュミナ嬢とエイデン様から目を離して、溜め息を吐いた。


「エイデンは一見穏やかで優しげなのに、女の趣味は歪んでるから……。シュミナはストライクだろうな」


 メイカ王子が軽く口笛を吹きなからそう言う。確かに……そんなキャラだった気がする。

 わたくしは彼に関する情報を正確に思い出さんと、記憶の糸を辿った。

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