ジンクス信じますか
頭上に広がるのは、びっくりするほど綺麗な青空。そんな空の下、私は大きな息を吸い込み、あらん限りの声で叫んだ。
「羊羹なんか大っ嫌いだーーーー!!」
はじめましてこんにちは。
この話の主人公 岡田ののです。
私は今、人生の岐路に立たされています。
一棹の羊羹の為に…。
それは、なんでもない平凡な日常生活の一コマだった。
「そろそろお彼岸にはいるから、お墓参りの用意をしなくちゃね。」
そう、母がのたまった。
お墓の中には、早くに死んだ父が入ってる。
父の思い出は沢山あるが、強烈な思い出も混じっている。
例えば。
①ご飯は牛乳と共に。
②玄関は必ず左足から出る。
③黒猫が横切りそうになったら追いかける。
④「そのままでもいいんじゃない?」
ご飯時には、必ず牛乳が付き。
うっかり右足から出ようものなら玄関が開かず。
家の近所に野良猫はいなくなり。(とにかく、色に関係なく追いかけるから。)
…最後のコレが曲者。
ケーキは、ホールで食べる、ペットボトルのジュース(2リットル)はそのままま飲み、虫歯ができても、歯医者に行きたがらない幼児に「ま、そのままでいいんじゃない?」
いやいや…ダメである。ケーキは、食べすぎのきらいがあるが、まだ良しとしても。
ボトルガブ飲みは、口からの雑菌が入る。そもそも他の家族が嫌がるだろう。
歯医者は、言わずともがな。
とにかく、ダメである。
そんな父も、運命という流れには勝てず、10年前に、事故で亡くなった。
こう書くとフツーの様だが、その日は皐月晴れの、清々しい日だった。朝食のご飯と味噌汁、卵焼き、おひたし、納豆を牛乳で流し込み、出勤の為に左足から玄関を出て、大通りに差し掛かったとき、空から猫が降ってきた。
いや、某アニメの「空から女の子が、降って〜」ではない。
建築中のビルに屋上に鎮座する予定だった黒猫のハリボテが突然の横風に耐えられなかったクレーン車の横転と共に、父の前方一メートルに降ってきた。が、直接は当たっていない。
びっくりした父は、右足を踏み出し、たまたま落ちていたバナナの皮にすべり、つるっと滑って、黒猫の左足に後頭部を強打し、儚い人となった。
あの時は、本当にどうしてやろうかというくらい父らしい最後で。
母は「まったく。あの人らしいわ。ここまでくると、見事だわ。」と、かえって清々しい顔だったし。
私は悲しさと、呆れとがないまぜになり泣いていいのか、笑えばいいのか、葬儀の間悩み、その姿が、父を早くに亡くして呆然とするカワイソウな娘と周りにはとられたらしい。
自分の感情の行き場に悩んでただけなのだが。