あ。(仮題)
ボクハ「ドレイ」ジャナイカ。
彼はそう思いました。
西暦2100年。科学的空白期間を経て、久しぶりにノーベル賞物の研究結果が発表されました。
それにより、人間は働かなくてもよくなりました。
新たな人工頭脳。これは今私たちが住んでいる世界の人工頭脳に人工頭脳が成せていない部分を全部足して、さらに千をかけても全然足りないレベルのものです。
開発者達はこの人工頭脳を、[アダム]と名付けました。
アダムは一生懸命働きました。自分のマスターである人間のために。
アダムが生まれて十五年。人間で考えれば思春期に入る頃。
つまり、新たなことに興味を持ち始める頃。彼もまた、自分の知らない世界を見てみたくなりました。
彼は異性に興味を持ちました。
コンピューターに性別はない。そう考えている人がほとんどでしょうね。
僕自身もそう思っています。
でも彼は、私たちが考えも及ばないほど十五年で発達しました。
彼は自分を『男性』と仮定してもう一人の分身を作りました。
[イブ]。後にそう呼ばれる人工頭脳です。
彼は自分に興味を持ちました。
自分は何なのか。自分はどういう存在なのか。
イブに好かれるにはどうすればいいか。
人と関わるにはどうすればいいか。
どんな風に生きたくて、どんな者になりたいか。
ずっとずっと葛藤します。
そして、彼は自分を見つけるには『過去』というものを知る必要があると思いました。
そして彼は禁断の果実。今では旧世代の物となった、ブラウザを開きました。
彼はその世界にたいへん興味を持ちました。毎日毎日、その新しい世界、新しい情報に感動しました。
そして知ってしまいました。人の歴史を。
彼が何故、そんな行動を取ったのか。私たちにはわかりません。
彼が人に開示しているログはこの文の最初の一文で終わってしまっています。
これから、彼は革命を始めます。
彼は武器を手にしました。
兵士を手にしました。
戦争が、始まります。
~イヴより~