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おしまい

 俺には妹がいない。

 世間では妹ブームとかで妹を持っていない奴が迫害までされているらしい。

 馬鹿げている。

 妹がいないからなんだというのか。妹なんてすぐ兄の遊んでいるところに割り込んできたり、せっかく買ってきたケーキのイチゴを食べたり、兄妹げんかすると問答無用で悪者にするんだ。

 いないならいいじゃないか、かわいそう? 寝言はほっとけ。

 でも何故だろう、ちょっと前は違和感程度だったのに。今でははっきりと空疎な感じがする。有り体にいえば心に穴が空いたようだ。

 この違和感の正体はなんだろうか? わからない……

「兄さん……目をさましてください……お願いですから」

 ん……、身体中に激痛が走った。

 痛い……なんでこんなに体が痛いんだ? この声は誰だ。

「だれ……なんだ」

「私です、ユニです。分かりますか、兄さん」

「ゆ……に?」

「そうですよ、兄さん。私です」

「一体何があった? 俺に何があった?」

「忘れちゃったんですか? 私が兄さんに好きな人ができたって言ったら兄さんが怒ってでてっちゃったんじゃないですか。バイクでスピードもかなりでてたそうですよ。生きてるのが不思議だって……」

 なんだって!? そんな事をしてたのか! 全く記憶に無い。

「そっか、すまなかったな、折角のめでたいことに水を差して。もう邪魔はしない。幸せにな」

 妹が幸せを掴もうかという時に命日を突っ込もうとするなんて我ながらひどい兄だ。

「何言ってるんですか! 兄さんが好きなんですよ! いっつも私の話を最後まで聞かずに行動するんですから、これで死んでたら地獄まで殴りに行ってましたよ!」

「それはご勘弁」

「で、どうなんですか……」

「どうって?」

「妹、はありなんですか? 兄さん妹ブームに否定的だったから言い出すのすごい勇気要ったんですよ、私だけ告白なんてずるいじゃないですか! 兄さんもちゃんと返事をください」

「ああ、そうだな。実を言うと昔から妹というかユニのことは嫌いじゃなかったぞ……ただ、お前が俺のこと嫌いだって思ってた」

「そんなわけないじゃないですか!? 怒りますよ! とにかく兄さんは私のことが好きでいいんですね!」

「ああ」

「じゃあ今日のところは我慢します。退院まで毎日きますからね、覚悟しておいてくださいよ!」

「ああ、楽しみにしてる」

 ユニは顔を真っ赤にして病室を出ていった。

 またこれからやかましくて楽しい日々が始まりそうだ。

本日、拙作「フューチャーシスター」を完結させたのですが、

今までの長編では完結がないのが気になったので完結させられるものはしておこうという事でこの話を書きました。

オムニバス方式なので完結させる必要もないと言えばないのですが、やはり未完のまま残しておくのも収まりが悪いのでこれにて完結です。

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