えいが
僕は妹が好きだ。
なのに最近、妹との距離感がわからなくて困っている。
妹に「好き」と言うと、
「気軽にそんなこと言わないで」
と言い返されてしまった、そんなに深い意味はなかったんだけど。
妹は妹で僕に対して「好き」や「結婚して」とは言わなくなった。
年を取るとはこういうことなのだろうか、まだ若いつもりなんだが……。
とにもかくにも、人間関係というのは難しい。
久しぶりに妹と買い物にでも出かけよう。
というわけで誘ってみたわけだが、
「しょうがないお兄ちゃんだね、まあいいよ」
なんだか嫌々と言った感じがしないでもないが、
こうして妹と出かけることが出来た。
そして当日、妹を呼ぶと……一言で言うと、めっちゃ勝負服だった。
意識のしすぎだろうか?
兄妹の買い物にしては気合入ってないか?
「なあ、今日ってただの買い物だよな、しかもひと駅先のショッピングモールだぞ」
「分かってるわよ!新しい服があったんだからしょうがないでしょ」
わざわざ買ったんかい……とは思ったが、言うと怒られそうなのでやめといた。
そうして会話をしているうちにショッピングモールについた。
ここまで来る間に、今まで離れていたような気のする距離感が少なくなった気がする。
「お兄ちゃん、他に一緒に行く人居ないの」
「居ない」
お前がいいと言いたかったが、流石にやめておいた。
ショッピングモールとは言ったものの、田舎暮らしの経験があれば分かってもらえると思うが、
あそこには何でもある。
服からおもちゃ、映画館、書店もある、大抵のものはここだけで揃ってしまうんだ。
とりあえず映画を見ることにする、興味があるのはホラー映画だが、コイツの好みに合うだろうか?
「コレ見るか?」
「大丈夫、平気平気、スキダヨコウイウノ」
あからさまに動揺している、怖いの苦手だっけ?
まあ配慮して変えたらバカにするなと言われそうだからまあ良いか。
映画は怖くなかったと思うんだが、妹が腕を必死につかむので終盤辺りから腕が痛くなった。
「この映画、どうだった?」
「面白いんじゃない?次は別の人と見てね」
意地でも怖いとは言わないようだ。
その後もモールのアパレルから食事まで店舗を制覇して帰途についた。
「なあ、つまんなかったか?」
「ううん、まあ、楽しかったかな」
今日で妹と大分昔のように仲良く慣れたような気がする。
これからは時々誘おう。
「今でなくてもいい、僕はいつか昔みたいに仲良くなりたいな」
「昔みたい、か。やっぱりそこまでなんだ」
どことなく不満げに、否定はしなかったのでいいとする。
「また今度も行こうな」
「うん」
すごい笑顔で返された、きっとこれならまた仲良く慣れるだろう。
離れた心をまた近づけることになるまで頑張ろう。




