かぞく
「兄さん、私のことすきー?」
「好きだぞー」
このやりとりはいつものことだ、シスコンと言われればそうなのだろう。
「家族」としては僕は妹が大好きだ。
ただ、最近の妹はそれ以上を求めている気がしてならない。
「兄さん、あいしてるよー」
今では気軽にこういう発言をしている、家族としてのことだと思いたい。
「兄さん、今度一緒に遊園地に行かない?」
断る理由が思いつかなかったので「いいぞ」と答えた。
日曜になってバイクを出して妹とタンデムした。
電車で良い気がするのだが妹はこっちの方が良いらしい。
「兄さん、私以外は乗せないよね?」
「そりゃそうだ、家族でもないやつの命を預かるの怖いよ」
「ここは私の指定席だよ、他の人は乗せないこと!」
「はいはい」
などとやりとりをしているうちに目的地についた。
いろいろなアトラクションに乗ったが、妹の元気がなさそうだったので、そちらの方が気になっていた。
「これで最後、観覧車乗ろう」
何故かとてもさみしそうに言う。
ゴンドラに乗って少しして、妹が訥々と語りだした。
「今日は付き合ってくれてありがと、これでわがままはおしまい」
「まるで今生の別れみたいに言ってるけど次があるんだろ」
「無いよ、今日で本当に最後、ホントはもっと早く普通の兄妹になってたほうがよかったんだけどね」
「何かあったのか?」
「友だちがね、兄妹でベッタリは気持ち悪いって、私は気にしないって言ったんだけど、兄さんの迷惑になるって言われるとね」
「別に迷惑じゃないぞ」
「きっといつかは終わらなくちゃいけない関係なんだよ、だから、今日にしたの」
「そんな……」
「今までありがとう、兄さん」
こうして僕達は普通の兄妹になった、いや、あれから普通より距離が広がった気がする。
遊園地から帰って以来、心が満たされなくなった。
確かに健全で世間が言うところの「普通」なのだろう。
それでも不満は募っていた。
数日後、妹が泣きながら帰ってきた。
さすがに何があったのか訊くことにした。
「友だちがね、彼氏作ったらって言うの。だから友だちのおすすめって人とデートしたんだけと……駄目なの、兄さんじゃないとちっとも楽しくない!」
そして僕の胸に飛び込んでしばらく泣いていた。
「ごめんね、迷惑だよね……」
「いや、俺も前の関係の方が好きだったぞ」
こうしてひとしきり二人で泣くと、
「世間なんて大したもんじゃないさ、二人で生きる、そんなのも悪くないな」
「ありがとう、兄さん」
こうして僕達は新しい一歩を踏み出した。




