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冬の戯れ  作者: 有月 晃
Segundo Capítulo / 第二章
14/52

8. 図書館

2008.04.20 13:43



 あの後、蕎麦が気に入ったらしいアストリッドは、オレの仕草を見よう見まねしながら無事に完食。


 蕎麦湯も飲み干して、店主の「また来なよ!」という威勢の良い言葉に「コンドハ、オロシダイコン、タベルヨ!」と笑顔で返しながら店を出た。負けず嫌いなのか、この人。


――――――


 いまは図書館にいる。


 彼女が物色しているのは、平仮名で書かれた幼児向けの絵本。どうやら本気で日本語を習得するつもりらしい。そういえば、いつまで滞在する予定なんだろう。そう思って彼女の方を見ると、同じ絵本コーナーにいる子供達に囲まれていた。


 小さな女の子がしゃがみ込んだアストリッドの髪を珍しそうに撫でる一方、男の子は「女なのになんでそんなにデカいの?」と言葉を選ばない質問をブツけるが、機嫌を損ねることもなく対応している。子供が好きなのだろうか。


「Very hungry caterpillar? コレ、シッテル」

「ああ、はらぺこあおむし。懐かしいね。オレも子供の頃、持ってたよ」

「ニホンノ、ムカシバナシ、ドレ?」

「んー そうだなぁ、定番だけど桃太郎とかかな……」


 数冊の絵本を確保すると、今度は美術書コーナーへ向かう。漢字が使われている大人向け書籍にはまだ歯が立たないらしいが、美術書なら文字が読めなくても目で見て楽しめる。


 書道、水墨画、それから仏像の写真集をいくつかピックアップした。


「そういえば、この図書館って外国人でも本借りられるのかな」

「ダイジョブ。ヴィクトル、コノトショカンノ、カードモッテル」


 受付カウンターに座っている女性に新規でカードを作りたい旨を話すと、登録用紙が差し出された。彼女はまだ日本語が書けないので、オレが代筆する。用紙を提出してしばらく待っていると、カードが出来上がってきた。


「お名前の欄にご署名お願いします」

「アルファベットでも大丈夫ですか?」

「ええ、結構ですよ」


 アストリッドにペンを渡すと、なにやら考え込んでいる。


「どうしたの?」

「タカオミ、ナマエ、カイテ」

「え、アルファベットでも良いらしいよ?」

「ニホンゴデ、カキタイ。ワタシ、マダデキナイ」


 なにやら彼女なりのこだわりがあるらしい。ペンを受け取って、カードの名前欄に彼女の名前をカタカナで書き込む。それを見ながら、なぜかニコニコしている彼女。外国人の喜ぶツボというのは、よくわからない。いや、そもそも相手は女性なので、それだけでもオレにとっては不可解な生き物だ。外国人だからわからないとか、いまさらか。


 無事に本を借りることが出来た。

 図書館を出ると、目の前に広い空間が待っている。


 春の穏やかな風を受けて、樹々がサワサワと鳴る。昼下がりの柔らかな日差しの中、大型のアスレチックを駆け回りながら嬌声を上げる子供達。それを見守りながら木陰で談笑している母親の集団。父親の姿もちらほら見られる。最近、流行りの「イクメン」とかいうヤツか。


 他には、愛犬を散歩させている人、スポーツウェアに身を包んだランナー、バドミントンに興じる若いカップルに、手を携えてゆっくり進む老人夫婦。


 休日の公園をみんな思い思いに楽しんでいる様だ。


 大きな池を囲む様に遊歩道が伸びている。

 そちらの方を指差して示すと、彼女は無言で頷いてから踊る様に歩き出した。

 初デート編、思ったより長くなってしまってますが、明日終わる予定です。終われたら良いなぁ。



 あ、「有月 晃」ってIDで初ツイッター始めたんですが。なんか凄いんですね、ツイッターって。こう、同じ様な趣向の人達があっという間に繋がって、それがまた連鎖していって。不思議な感覚です。

いや、いまさらですけど。


 拙作を広めてくださった方に感謝!です。



有月ウヅキ コウ

http://twitter.com/UdukiKo/

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