一つ夢
ーー来る。
不穏な地鳴りのような響きを全身に感じて身構えた。一方で何処か諦めている自分がいた。同じ体験を何度も何度も気が遠くなる程に繰り返していた。
もう知っていたのだ。この不快な地鳴りを聞いたときにはすでに遅い、もう抗えないのだ、と。
ガガガガガガ…!!
一瞬のうちに凄まじい音が耳を覆い、雷に打たれたみたいな衝撃が全身を包んで地に打ち付ける。起き上がれない、動けない、身をよじろうとももがこうともびくともしない。唇さえ動かせず声も出せない。息の仕方も忘れてしまう、長い長い苦痛と頭の割れるようなノイズに耐えるだけ。
いずれ遠のくことは知っている。だけど毎度のように言い知れぬ恐怖心が起こる。そんな中で毎度のように頭をよぎってしまうのだ。
もしこれが終わらなかったら?
動かない唇から喉へ、そしてゆくゆくは気管、肺、心臓へと広がり全てが麻痺してしまったら?
こんな暗闇にたった独り、閉じ込められてしまったら…?と。
どれくらい経った頃か、やっと息が通り始めた。ずっと前から叫んでいたはずなのにここに来てやっとそれが放たれる。
あ…あああ…あああ…!!
自らの奥から呻く、その大きさに自分で驚いてしまうことも。
助けて…
助けて助けて助けて
誰か…!!
慣れ始めたばかりの息、言葉にはさすがにならない。だけど私は確かにそう言っている。波が引くように遠ざかるノイズ。その中にやっと一つの声を耳にする。
浅葱!?
浅葱っ!!
またなの?ねぇ…
大丈夫!?
暗闇の中に響く声。そこへ向かって手を伸ばして掴む。
アサギ…浅葱……繰り返される名が自分のものだとわかる頃、私はやっと目を開く。未だ辺りを占めている、暗闇。ぼんやりと視界に映る顔…緊張を走らせた若菜の顔。それが本物なのかもまだわからない。
本当に戻ってきたの?
私…
夢中で息を切らす。声にならずに問いかけるそのとき、私は何故だかいつも、泣いているんだ。




