一つ夢
ーー薄暗い広間が見える。真ん中に誰か座っている。私はそこへ目を凝らす。
年の頃は20歳前後と言ったところか。愛らしい顔立ち、お姫様みたいな衣装に身を包んだ彼女の顔が何かに気付いたように強張った。迫り来る足音を私も聞いた。
武装した男たちがなだれ込む。槍を手にした一人が怯える彼女を容赦なく突き刺した。私は胸の内で叫んだ。
やめろ、何してんだ。
彼女が何をしたというんだ?
一体何があってこんなことに…
恐怖に足がすくんで動けず当然言葉にもならない。数人に抱えられたお姫様姿の彼女の姿が遠のいていく。待って…蚊の鳴くような声をこぼした。誰に向けたかもわからない問いが、続いた。
これ以上何をする気?
そして
ここは、何処?
答えが返ってくることもないまま、視界が揺らいで別の場所へと移り変わった。
次に広がった景色は空だった。重力を感じないふわりと落ち着かない足元。空中。
目の前、少し遠くに何人かが浮いている。見たこともない何処の国ともわからない衣装に身を包んだ彼らは二手に分かれて向かい合っている。こちらの気配になどまるで気付いていないように見える。
ピリピリとした静電気みたいな感触が伝わる。肌で感じた。争いの前兆であると。
異世界にでも投げ出されたみたいな感覚を覚えつつ固唾を飲んだ。自身の位置づけもわからない私にできることなんて所詮はない。これから起こることを見届けようとしていた。
その景色がまた揺らいだ。揺らいで揺らいで、霞んで、消えた。