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神ちゃま、領地の視察をします! 2

進み出した馬は林に入り、木々を器用に避けていく。馬の速度は私を気遣っているのか少し遅めだ。大きく揺れる馬の上にいるのに慣れた私はゆっくりと歩く馬の上から落ちないようにしながらも外の光景を眺めていた。


「そろそろ町に着くけど。大丈夫かい?」

「うん。ちょっとおしりが痛くなっちゃったけど、景色も綺麗だったから全然平気だよ。それよりもこれから向かう町はどんな場所なの?」

「そうだね、主に小麦や野菜などを育てている町でバルト伯爵領の中で一番栄えている町でベリアノールというんだ」


ベリアノール。どんな場所なのだろうか。栄えているということは一番安全な町ともいえるだろう。その場所で誰かと友達になれないかと胸を高鳴らせた。


「そういえば、レミィと同い年の娘さんが町長にいたな。レミィ、仲良くなれると良いな」

「うん!」


馬は更に進み、ついに林を抜けて小高い丘に出ていた。そこには金色の小麦畑が家々を囲むように並んでいて、とても幻想的な光景だ。真ん中に商店街や少し大きめの住居が立ち並んでいる。


「うわぁ~~~!!綺麗!!」

「そうだろう。私もこの場所はお気に入りだ。悩んでいる時もここに来ると吹っ飛んでいて、自分はこの美しい領地を守ることが出来ると思って、誇らしく感じていたよ」


私が大きく観声をあげるとお父様はうんうんと頷いて懐かしむように話す。お父様がこの場所をお気に入りにするのも無理はないと思う。私もこの景色を見て、感動していた。


黄金色の小麦はしっかりと根を張っていて、生き生きとした生命力が見られる。


「これほどまでに見事に育ったのはエアラール様のおかげだろう」

「えあらーる?」


聞き覚えのある言葉に思わず首を傾げた。お父様は馬を走らせながら話したこと無かったか?というように私を見て話した。


「?知らなかったか?信じられている神様の一人でこの地に恵みと豊穣をもたらしてくれる神様だよ」


やっぱりエアラ姉様のことだ。下界に降りてもお姉様のことが聞けるとは思わなかった。少し私が考え込んでいるとすでに私たちは町の近くまで迫っていた。


「そうだ。この町の中では私のことはお父さんと呼んで欲しいかな」

「?どうして?」

「あまり悪目立ちをするとやっかい事に巻き込まれる可能性があるからね。私ならまだ対処出来るけど、レミィが巻き込まれたらということを考えると、普段の呼び方だと危ないと思うんだ」


真剣そうな様子で話すお父様、いやお父さんは私を危険な目に遭わせる人がいたら絶対に後でその人を闇討ちにでもしてしまいそうだった。慌てて頷くとお父さんの周りの空気は柔らかくなっていったので私は安堵のため息をついた。


 ***


馬から降りて町の中に入ると商人達が必死に呼び込みをする声が聞こえてきた。物珍しくキョロキョロと見回すとお父さんはくすりと笑う。


「折角来たのだから何か買い物をして行くかい?」

「うん!」


私は早速気になっていたお店へお父さんを引き連れていった。扉を開けると、カランカランと軽やかなベルの音がした。そこには色鮮やかなアクセサリーが並んでいた。ここはアクセサリー型の魔道具を売り出しているお店だ。


「ふむ。なかなか良い雰囲気のお店だね。髪飾りも売っていることだし、フローラにお土産を渡そうか」


そう言ったお父さんは雫の形をしたサファイアのような髪飾りを手に取った。私だから分かるが、髪飾りには青の魔力と光の魔力が混ざっている。


「これ、障壁の魔法と治癒の魔法が込められてる…」

「!?」


ぽつりと呟いた私の言葉を聞いて、驚いた様子で私をぎょっと見たお父さんは何も声が出ないといった様子だ。


「おや、お嬢さん。この髪飾りの価値が分かるのかい??」


後ろから現れた店主らしき初老のおじいさんは私を見た。


「はい。この飾りには青い壁のような物と白い癒やしの光が見えます」


ふむと顎に手をやって髭を手で一撫でして考えるおじいさんにお父さんは話しかけた。


「申し訳ありません。娘のことはどうか内密にしていただきたいのですが……」

「大丈夫じゃ。わしだってそれくらい心得ているわい。ただなぁ、お嬢さんに是非貰って欲しいものがあるんじゃ。ちょっと、そこで待っていてくれんかの」

「はい。分かりました」


私はお父さんと顔を見合わせ頷いた。少しすると、おじいさんは店内に戻ってきた。


「これなんじゃが、なかなか使い手が現れてくれなくてな。貰って欲しいのじゃ」


そう言って差し出されたアクセサリーは宝石のような濃い紫の石がはまっているネックレス。しかし、ただのネックレスではないようで不思議な存在感を放っていた。


「こんな高そうなものを貰っても良いのですか?」

「むしろ、買い手がいないから困っている。こんな誰も扱えないような物この店に置いていても意味無いわい」


少し迷ったが、このネックレスは初めて手に取った感じは全く無く、何だか懐かしいような気がしたのだ。


「それでは、ありがたく貰わせていただきますね」

「あぁ。貰ってくれ」


そうして、いつの間にやら髪飾りを買っていたお父さんと手をつないで店を出るのだった。私たちは今度こそ寄り道をしないで町長さんの家へとたどり着く。家の前には町長さんと奥さん。それから話で聞いていた通りの同い年のような女の子が側に立っていた。


「やぁ。お久しぶり、元気そうでなにより」

「こちらこそ。領主様。ご無沙汰しております」


 大人同士の会話を無視して、お父様の邪魔をしないように少し離れてから女の子に話しかけた。女の子はこの国にはよくいる茶色の髪に緑の目をしている。腰まで髪があるようでリボンで三つ編みした髪を纏めていた。


「…初めまして。私はレミィアナ・ライ=バルトっていうの。長いからレミィでいいよ」


ふわりと笑って自己紹介すると、女の子は可愛らしく頬を桃色に染め上げる。それからぽつりと言葉を紡いだ。


「………初めまして。私はアリア=ベリアノール。えと、仲良くしてね」

「勿論!」


私は満面の笑みで微笑む。アリアはその笑顔につられたかのように楽しげに笑うのだった。




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