神ちゃま、転生する!
あるところに五神の神々が創った『フィローラル』という世界がありました。この頃、世界には何もなく神々は動物と人間という生き物を生み出しました。
しかし、人間には身を守る方法がなく、絶滅寸前にまで追い込まれることになりました。
その事を不憫に思った神々は非力な人間に身を守ることが出来る力を授けました。
___これは五神の末娘の物語。
この広く豪華なロココ調の部屋の天蓋ベッドに寝転がりながら綺麗なラピスラズリの瞳を輝かせ、本を読んでいるのはレミィーア・ホープ=フィローラル。
艶めいている金髪が肩まで下ろし、二本の少し長めもみあげが特徴の少女、いや幼女。おそらく、十人に聞いて十人は可愛いと言うような容姿だ。そんな彼女は美と愛の女神を務める女神でもある。
「ん〜〜本で読むのは、いいけど下界に降りてみたいなぁ〜〜」
私は本を読むのが疲れたので約十センチもあるような本をパタンと閉じた。
下界というのは、人間達や動物が住む世界で私達が住むのは神界。主に神や天使、神達を守護する神獣が住む世界だ。
神界では千年の時が流れることによって、一歳の歳をとる。だから七千年の時間を過ごしている私は、実際には七歳で人間からしたら長くても私はまだまだ子供なのである。
そんな私は、下界に行くのが夢である。
神様は生まれて七歳になると下界に降りて修行をする決まりになっている。そのため昨日七歳を迎えた私は今日その夢が叶えられることになる。
ふと、部屋にコンコンという軽やかな音が響いた。
「誰?」
「レミィーア様。エアラール様とハルバート様がいらっしゃいました」
「姉様と兄様か、入っていいよ」
ガチャリと部屋の扉が開き、ひょっこりとエアラ姉様が顔を出した。
「レミィ!やっぱり、ここにいたのね!」
パタパタと金髪のポニーテールを揺らして近寄ってくるのは、私の姉のエアラール姉様。土地に豊作を齎す豊穣の女神でもある。
「エアラ、走ると転ぶぞ?」
「もう!ハル兄様ったら。私、そんなに子供じゃないから簡単に転ばないわよ!」
エアラールは頬を膨らませて、ハルバートをジト目で睨んだ。それでもハルバートは懲りずに笑う。
「そうだったか?」
「そうです!」
エアラ姉様を笑いながら揶揄って遊んでいるのは、ハルバート兄様。魔法を専門とする神で黒髪に私と同じラピスラズリの瞳をしているの。たまに意地悪だけどとても優しくて頼りになる。
「エアラ姉様!ハル兄様!私に何か用ですか?」
私が二人を見上げながら言うと、エアラ姉様が今思い出したとでもいうように手を叩いて話し出した。
「そうだったわ!レミィを書斎に連れてきてって母様と父様に言われてレミィを探しに来たのよ!」
「?分かりました!」
用事といえば、あの決まりの事についてだと思うけどなんで書斎?少しよく分からないまま、書斎へと案内する侍女件天使の後について行った。
私が書斎に着いて軽くノックし、返事がなかったので取り敢えず中に入ろうとした瞬間。私は扉を直ぐに閉めた。
「レミィーア様?」
「ごめんね。今入るから」
少々嫌々ながらゆっくりと扉を開けた。そこには母様と父様がゆったりとソファに座っていて、その中で一番目を引いてしまうのは母様の顔がほんのりと赤く色づいていることだ。さっき、扉を開けた時に見た光景は頭の中でなかった事にした。
「レミィ!」
母様は嬉しそうに駆け寄って私を抱きしめた。ちょっと苦しかったけど、母様は最近忙しかったので我慢。いつものように母様はエアラ姉様と同じエメラルドの瞳で私を慈愛の眼差しで見つめた。
確か、部下の天使が任されていた仕事を失敗し、地球人の日本という国の人間を間違って死なせてしまったと聞いている。仕方ないから母様はその地球人をフィローラルに転生させるという処置をとったそうだ。
勿論、そんなことを起こした部下は厳しく罰せられた。
「クレア、そんなに抱きしめたらレミィが苦しいだろう?」
そんな母様の後ろに立っていたのは、父様だ。二人は私の大切な家族だが、もちろん私が神なら親の二人も神であり、母様は最高神で創造神のクレアティーネ・ホープ=フィローラル。父様は最高神の破壊神でルークディオール・ホープ=フィローラル。
そして、二人はとても有名なのだが、あまりにも溺愛なカップルな所為で良縁の神々と呼ばれ下界では、人々に良い縁が出来るようにと拝まれている存在でもある。
それに私を離した母様は父様と見つめ合い甘々な雰囲気を醸し出し始めていた。またかと思わず小さく溜息を漏らした。
「父様、母様。エアラ姉様とハル兄様に呼ばれて来たのですが、なんでしょうか?」
私がそういうと二人は、はっと思い出したというようにすぐに切り替えた。
「コホン。では、本題に移ろう」
その話から離れたのは、父様達の所為でしょうがと思いジト目をして、父様はそれに気づき苦笑をしたが、話を始めた。
「そろそろ、レミィも下界に降りて修行をする歳になっただろう」
「?はい。修行をするのは七歳になってから楽しみにしてますが?」
「それがな…なかなか、レミィが入ることになる器が現れないのだ」
そう、修行をするには私が入るための器がいる。下界で私がそのまま下りるとまだ、神として未熟なので下りた瞬間に消えてしまう。そこで神が入っても死なない器を探して中に入らないと下界には、行けないのだ。
「それでな。レミィにはこれから産まれる器の中に入って欲しいんだ」
「別にいいですけど…いつ行けばいいの?」
そう聞くと父様は、苦笑いをして答えた。
「それがな……今すぐだ」
「ふぇ?今行くの?」
今すぐという言葉に頭で処理できずに茫然と立ち尽くした。しかし、その一瞬の油断が悪かった。
「あぁ。ということで行ってらっしゃい!下界へ!!」
そういうと突如私の足元に穴が開いた。咄嗟のことに何も出来ず、真っ逆さまに落ちていった。
「う、嘘〜〜!?」
どんどん落ちていく側で聞こえた。
母様の呑気な「お土産よろしくね〜」という声が…
そんな場合じゃなーい!!
◇◆◇
下界にて
一つの産声が聞こえた。
そこは、バルト伯爵家。王都の近くに位置する領主の屋敷である。
この世界にまた一つの命が誕生した。
私が産まれて初めて聞いた声は、優しい母親の声と侍女達の声だった。
「奥様!おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」
「貴方の名前はレミィアナよ。これからよろしくね」
母親は産まれた赤子を優しく抱き上げた。いずれ世界を揺るがすことになる少女の誕生であった。
この少女には数多の逸話が存在する。その美貌や災厄級の強さを持つことから『美と愛の女神』の生まれ変わりなのでは?と言われるようになるのは、まだ誰も知らない。
これが一人の神が宿った命が誕生した瞬間である。
遅くなってしまいましたが、やっとできました!是非、次の話もよろしくお願いします。