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第四話:後悔


前回のあらすじ


早朝ランニングをしている仁は、海山神社をランニングのコースに選ぶ。そこで巫女をやっている美山楓に出会う。楓のいれるお茶に和み、毎日行くことを決意する仁であった。


高校生の恋と青春を描いた青春ラブストーリー。

入学式まで残すところ後一日、前日を無事迎えることができた。俺がここに来て丁度2週間が経った。

俺は早朝ランニングを済ませ、服に着替えていた。赤のインナーに黒の上着、そして黒のジーンズ。

早朝ランニングはちゃんと続いている。今日で6日くらいは続いている。生憎あいにくご褒美である楓さんのお茶は毎日飲めるわけでもなかった。毎日同じ時間に掃除しているわけではなさそうだ。


1階へ降りると、いつものジャージ姿じゃない俺を見てばぁちゃんがニヤニヤしている。


「美穂ちゃんとデートじゃから張り切とるのぉ」


ばぁちゃんは笑いながらからかった。


「ばぁちゃん、朝も言ったけどデートじゃねぇって」


今日の朝、俺はばぁちゃんに本屋の場所を聞いていた。ばぁちゃんの説明では全くわからない。恐らくここら辺の地理に詳しければわかるのだろうが。その時丁度玉子を持って来ていた美穂が、「私が案内する」と言い今に至っている。それで朝からばぁちゃんはデートデートうるさいわけだ。


「ほんじゃ、行ってくるから」


俺はニヤニヤしているばぁちゃんに別れを告げ、俺は美穂の家に向かった。


家の前で待っていると、「いってきま〜す」という声が聞こえた。約束時間丁度だ。


「おまたせ〜」


いつもは後ろで結んでいる髪は今日は結ばれず靡いている。ジーンズに赤のインナー。白いジャケットを着ている。なにやらボーイッシュな感じだ。


「仁君のジャージじゃない姿初めて見たかも」


美穂は笑いながら俺の服装をジロジロ見ている。


「お前だってそうだろーが。ほれ、早く案内した案内した」


俺は少し照れくさく、先を急がせた。


本屋は一番麓にあるらしく、歩いて下まで降りなきゃならない。帰りにまたこの坂道を登ってこなければならないと思うとゾッとする。なぜ本屋に行くのかというと、アメフトについての情報が欲しかったからだ。そんなものインターネットでちょちょいと調べればすぐわかるものなのだが、家にあるわけもない。じいちゃんやばぁちゃんはそんなもの必要ないからな。それに美穂の家にはあるらしいが、アメフトの事を調べるのは少し気が引ける。だから仕方なく本屋に買いに行くわけだ。


丁度坂道の半分辺りを過ぎたころ、横の通りから自転車を押す二人組の男が叫んできた。


「おーい美穂〜」


知り合いだろうか?美穂も手を振り返していた。二人組みの男が近づいてきて一人の男が美穂に話しかけた。


「よう、美穂。買い物か?」


美穂が返す。


「うん。ちょこっと本屋にね」


美穂に話しかけている男は、身長が高く、ロンゲの黒髪の男だった。


「そっちの彼は?」


もう一人の男が話しかけてきた。こっちの方は俺と同じくらいの身長だろうか?くせっけのあるカールのかかった髪型だ。二人ともジャージ姿だ。


「えっと、こちらはこないだお隣に引っ越してきた、橘仁君。私たちと同じ今年高1だよ」


美穂が自己紹介をしてくれたので、俺も続いて軽く挨拶をした。


ロンゲ男が、


「お〜転校生か。よくこんな田舎に来たもんだぜ」


カール男が突っ込む。


「転校生じゃないでしょ。まだ僕たちも入学してないしね。あ、僕は長瀬誠ながせまこと。よろしくね橘君。ちなみに誠でいいからね」


お柄かな優しそうなしゃべり方だ。


「俺は、西城剛さいじょうつよし。西城でも剛でも好きな方で呼んでくれよ」


二人とも性格は正反対なような気がした。ただの目測なのだが。


「二人は何処に行くの?」


美穂が二人に尋ねた。二人はお互い顔を合わせてニヤリと笑い。


「内緒だっつうの。悪いな美穂。俺たち急いでるんで。ほら行くぞ誠」


「ごめんね美穂ちゃん。じゃぁまた明日、橘君」


そういうと二人は自転車で坂を下って行った。この坂道を自転車で降りると気持ちよさそうだ。美穂は頬を膨らませて、


「秘密だなんてひどいよ二人とも」


と怒っていた。俺はその顔を見て思わず噴出してしまった。なにせちょっと可愛かったからだ。


「あ、仁君笑ったな〜。ひどいひどい」


そういって美穂は俺を殴って来た。怒る美穂の機嫌を直しつつ、俺たちは目的地の本屋についた。

俺は美穂に「ここで待っていてくれ」と言い中に入っていった。あいつにアメフトの本を買いに来たとは言っていないからだ。

俺は本屋に入り本を探していた。10分くらい探し回ったが、小さな町の本屋だ。アメフトの本があるわけもなく俺は店の人に取り寄せてもらうようお願いした。

店の人が電話をしてくれてる時、ふと外を見ていると、美穂が男の人としゃべっていた。年は30代後半くらいだろうか。眼鏡をかけた黒髪の男の人だ。


「いよいよ明日入学だね。君が入学してくれるのを楽しみにしていたよ。もし良かったら僕の部活に入ってくれよ」


「良かったらだなんて。絶対先生の部活に入りますよ。その時はヨロシクお願いしますね」


生憎、俺にはその会話は聞こえなかったが、美穂があんなに楽しそうな顔を見るのは初めてだった。初めて出会った時に見せたあの美穂の笑顔でさえ、偽りの笑顔かと思ったほどだ。俺はすこし変な気分だった。別に焼もちとかそういうのじゃない。でも何か胸の中がすっきりしない。

俺は店の人に取り寄せる日にちを聞き、店を出た。そこにはもうあの男はいなかった。


「さっきの人は?」


さりげなく聞いてみた。


「あの人は高校の弓道の先生。お父さんの後輩さんなの。それでね私の憧れの人」


俺は聞かなければよかったと後悔した。多分憧れの人っていうのに後悔したのだろう。

俺たちはその後何処に寄ることも無く家に戻った。美穂が、「ほかにも案内しようか?」と言ってくれたのだが、俺はそんな気分じゃなかった。美穂には悪いことをしたと家に帰り自分のベットの上で後悔した。


今日は二回も後悔をした。


俺はスッキリしない自分の胸をどうにかスッキリさせようと頑張りながら眠りについた。




いよいよ明日は入学式だ。









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