第1話:行方不明
あの日、一緒について行けばよかった・・・。
「ねぇ、そろそろ帰る時間よ」
「・・・」
「聞いてる?帰るよ・・・ねぇってば!」
周りを意識して小声で話しかけていたが無視され腹が立ち、
「歩!ほら早く本閉じて、帰るわよ!」
本に夢中で話し掛けられているのに気がついていない歩と呼ばれた少女から本をひったくった。
「!?何すんのよ」
「いいかげん帰るよ。もう図書館、閉館するんだから」
「もうそんな時間?」窓を見ると真っ暗で時計はまもなく九時になるところだ。夕食後、二人は家の近所にある図書館に来ていた。
「続きは借りて家で読みな、ほら早く」
「その前にトイレ行ってきていい?ずっと我慢してたの」
「いいよ、それじゃあおねぇちゃんが本借りとくからね。で、入り口のところで待ってるから、早く来てよ」
「ありがと、じゃ」と小走りで駆けていった。
そんなに夢中になるほど何を読んでいるのかとタイトルを見ると、妖精辞典と書いてあった。しかもかなり古くて表紙にビニールのカバーがしてあった。中をぱらぱらとめくると写真と説明書きがあるだけで物語らしき文章が無かった。
「変な本・・」と姉の茜はつぶやきながら入り口に向かった。
遅い!イライラしながら待っていると携帯が鳴った。 「もしもし?」
「あなた達、まだ図書館にいるの?いいかげん帰ってきなさい」
「今、帰るとこ。歩待ってるんだけどトイレから中々戻ってこないのよ」
「見にいってきたら?とにかく、気をつけて早く帰ってきなさいね」電話を切り茜はトイレに歩を探しに行った。
「歩!あんたいつまできばってるのよ!」そう声をかけたが返事が無い。
「歩?」端から順に扉を押して開けてみたがどこにも歩の姿は無かった。あの子ったらまた本でも読みに行ったのかな、と思いトイレから出た。出たところで司書の人に呼び止められた。
「もう閉館のお時間ですので」
「あ、妹がまだいるんです多分。その辺で本読んでいると思うんですだから見てきていいですか?」
「でも、さっき見回ったけど誰もいなかったわよ。あとここのトイレが最後だから」
司書の女性は自分よりかなり若い茜を見て言葉使いをくずし親しげになった。
「えっ・・だけど入り口にも来てないしトイレにもいないからきっとここにいると思うんです」
「電気、半分消してたから暗くて気がつかなかったのかしら・・そうねあなたがトイレに戻ったのも気がつかなかったし見落としたのかもしれないわ。もう一度見回ってくるわね」
「ありがとうございます。あっ、私も一緒に行きます」トイレを出て一旦入り口を見たが歩の姿は無かった。
「ここ広いからね、広いって行っても一階しかないけれど」ゆっくり歩きながら歩の名前を呼び探したが結局どこにもいなかった。受付に行き数人の司書達に聞いたが少女が出て行く姿を誰もみていないと言う。案内してくれた人が心配そうな顔で「受付の人たちが気がつかなかっただけで家に帰ったかも知れないわよ電話してみたら?」「いえ、すぐそこなのでこのまま帰ります。すみません、迷惑かけました」お辞儀をし別れ、大急ぎで家に帰った。
「ただいま!」