scene2 ― 清水レミ ― 凸凹地平(アップ・テン・ダンプ)
レミの足元がグラグラ揺れ出す。
その場を離れようとしたが 地面の揺れで
体のバランスが保てず動けなかった。
『凸凹地平』
道化師少年が言い放つと レミの足元の地面が
ゴゴゴッと音を立てて 隆起し始めた。
レミは足元を崩され地面に転がり、
隆起する地面の凸凹に体をぶつけて
あっという間に 全身 砂まみれになった。
転がり落ちた先でようやく普通の地面にたどり着き、
レミはヨロヨロしながら立ち上がった。
レミが始めにいた所は 3メートル前後の凹凸の山々が
出来上がり、普通の校庭にはない地形が存在していた。
レミはそこから 凸凹の山にぶつかりながら
ふもとに落ちた。
顔と脚に擦り傷を作り体は打撲だらけになった。
それでもレミは
凸凹の山の頂上にいる道化師少年を睨んだ。
『凸凹地平』の能力を
目の当たりにし、直にくらったレミは
道化師少年への接近戦は不可能だと理解した。
地面から出た「壁」に2回も拳を塞がれ
地面からは凸凹の山を
出現させて足元を奪われる。
道化師少年から10メートル近く離されたレミは
その距離からでも攻撃が出来る術を考えなければならなかった。
天性の格闘センスを持つ格闘家のレミは
得意の接近戦を 封じられてしまった。
(今ある「天然石」で なんとか出来るものは………)
レミは右腰に下げているポーチの口をあけて
対抗できそうな「天然石」を探した。
(そうだ、これなら!)
レミはポーチから
ある花の花びらの形に似た
変わった「石」を出して飲み込んだ。
『何を食べたの?』
レミが「石」を食べたのを見ていた道化師少年が質問をした。
レミは 少年の質問に答えず
「石」の力を発動させた。
校庭の渇いた砂が 風もないのに巻き上がる。
砂はある花の形になって大きく造り出された。
『うわぁ、スゴい!砂のバラだー!!』
道化師少年は
レミが作った砂の造形を見て感激した。
「『デザートローズ(砂漠の薔薇)』よ」
レミは砂の薔薇の下に構えて
砂に命令した。
砂の薔薇は その形を成したまま道化師少年に飛び込んでいった。
大量の砂の塊が少年を押し潰す。
砂埃が舞い上がり
風が砂を巻き上げる。
レミはもう一輪の砂の薔薇を作った。
時間制限のあるレミの能力は
1つの石で、だいたい 3分しか使えない。
レミは『デザートローズ』の効果がなくなる前に
攻撃の手を止めない事にした。
出来上がった砂の薔薇が 再び道化師少年の元へと飛んでいく。
その瞬間だった。
地面から何本もの「柱」が勢いよく飛び出て
砂の薔薇は少年に当たる前に砕けて散った。
「あぁっ!」
『残念だったね』
「えっ!?」
10メートル先にいるはずの道化師少年の声が
レミの近くから聞こえた。
『こっちだよ』
レミは足元を見た。
レミの足のすぐ近くに「穴」が出来ていた。
「何これ!!いつのまに!?」
レミが驚いていると
レミの周辺で次々と「穴」が出来上がっていく。
「!!」
深さはおよそ3メートルくらいの
マンホールのような「穴」は
レミの周りを取り囲んで レミの逃げ場を無くした。
レミは孤立した小さな島に一人で立っている状態になった。
『「凸凹地平」は山を作るだけじゃないよ』
穴の底に道化師少年がいた。
少年は重力に関係なく
ふわっと浮き上がって地上に出た。
「こンのッ………こっちに来い!!」
『ふふふッ』
少年が笑うとレミの下の地面が揺れだした。
「ちょっ!……やめっ やめて!!まさかアンタ!!」
『乱暴な娘はキライだよ。じゃあね』
次の瞬間にはレミの足元がひび割れて崩れていった。
レミは逃げることが出来ず
崩れていく地面と一緒に穴の底へと落ちていき
生き埋めになった。
『ふふっ……ふふふ』
校庭には道化師少年の笑い声だけが響いた。
レミは冬の冷たい地面の中へと
堕ちていく。
(ユエちゃん……!!)
息が出来ず、冷え込む真っ暗な
限られた空間の中で
レミは 大事な親友の顔を思い浮かべていた。




