突然の不穏
季節は寒い冬へと入っていった。
12月の中旬。
クリスマスの話で盛り上がったり
冬休みの予定を語り合ったり
学期末テストで教科書と にらめっこしたり……
にぎやかに騒ぐ生徒で 学校は満たされていた。
だが、不穏は突然やってきた。
―――――――
~ 生徒会室 ~
―――昼休み。
生徒会 会長、薄野ソウタが
いつもどおり生徒会室に入った。
「………?」
ソウタの座る席の机の上に
5枚の白いカードが並べられていた。
ソウタは その内の1枚を手に取ってカードをひっくり返した。
そこにはトランプの『スペード』のマークが一つと
アルファベットの『 E 』が書き記されていた。
ソウタは 全部のカードをひっくり返した。
『ダイヤ』には『 Y 』
『ハート』には『 M 』
『クローバー』には『 I 』
『ジョーカー』には『 H 』。
5枚のカードはトランプのエースとジョーカーだった。
ソウタは眉間にシワを寄せた。
―――――――なんだこれは?
ソウタがカードに疑問を抱いていたところに
エナとリュウが生徒会室にやってきた。
「会長、イズミの姿が見えません」
「またかい?」
「たぶん、エイジが探してくれていると思いますが……」
イズミは 前にも校舎内で失踪した事がある。
ソウタはカードを机の上に置いて
自分の能力である『空間』能力を使って
イズミの所在を調べようとしていた。
―――――――
生徒会室でソウタがカードを見つけた時と同じ頃。
レミは図書室にいた。
いつもなら 決まった所に座って
本を読んでいるユエの席が空だった。
頭をキョロキョロと横に振って周りを調べた。
(教室にはいなかったし……どこ行ったんだろ?)
レミは図書室を出ようとしていた。
―――――――
ソウタがカードを見つけ
レミが図書室でユエを探していた時と同じ頃。
トールとアキトは 1学年の風紀委員会で
定例集会があり、多目的ルームに一緒にいた。
担当の教員がまだ姿を現さないので
他の風紀委員の生徒たちと雑談をしていた。
「クリスマス前だから浮かれてる奴等が多いだろ?
それを取り締まれって話じゃないか?」
「そうだね、きっと」
2人は何気ない学生たちの日常的な会話をしながら
早く集会が始まらないかと待っていた。
それぞれが、違う場面で
何かをしようとしていた時
――――それは襲った。
生暖かい空気が ふわっと頬をかすめるような感覚がした。
その直後、トールとアキト以外の風紀委員の生徒達が
突然 膝から崩れ落ちるように倒れていった。
「!?」
「えっ!?」
2人は倒れていった生徒達を見て その場で固まった。
何が起きたのか理解が出来ず硬直してしまった。
トールは同じクラスの女子生徒の名前を呼んで肩をゆさぶった。
女子生徒は すやすやと眠っている。
アキトも他の生徒達の名前を叫んだり体を叩いたりして
起こそうとした。
だが、全員気持ち良さそうな寝息をたてて眠っている。
そして何をやっても起きない………。
トールとアキトは互いに目を合わせて異変だと感じ
多目的ルームを出た。
すると、廊下にも何人かの生徒が
その場で倒れたかのように眠っていた。
「なんだよ………これ……」
アキトが顔から冷や汗を流しながら
あり得ない状況を目の当たりにして呟いた。
「おかしいよ……こんな……なんで……」
トールもアキトと一緒だった。
ただ、トールの頭には すでにこの状況の推測をし始めていた。
「………能力」
「え?」
「能力者の仕業だよ………こんなの」
「能力者って誰だよ、俺たち以外に
いるわけないだろ?」
「そ、そうだけど……もしかしたら
若林先輩みたいに目覚めた人が……」
「先輩!」
アキトはトールの言葉でハッとした。
モモは今どうなっているのか。
眠らされたのか、自分達みたいに起きていて
今の状態に戸惑ってるかもしれない。
アキトはトールに「行ってくる」と言って
2学年の階へ走っていった。
残ったトールは他の教室を見回って起きている生徒を探した。
だが、全員 机や壁などに寄り掛かるように眠らされていた。
「トール君!!」
「…………清水さん!!」
レミはトールを見つけて駆け寄った。
レミもこの状況の異常に戸惑っていた。
「武藤さんは?」
トールは尋ねた。
この状況で目を覚ましている共通者は「能力者」。
自然とユエも起きているだろうとトールは思っていた。
「探してるんだけどいないのよ」
「いない?」
レミの顔は不安で満ちていた。
ユエの姿がない。
するとアキトが血相を変えて戻ってきた。
「樋村、先輩が……先輩がどこにもいないんだ!」
「えっ!?」
「モモちゃん先輩もいないの!?」
3人は互いに 不安感を募らせる。
――――バタバタバタッ
「樋村くん!!」
トール、アキト、レミのいる所に
生徒会の3年生 ソウタ、エナ、リュウが駆け付けてきた。
「薄野会長!!これはなんですか!?
何が起きたんですか!?」
「……………………ッ」
ソウタは トールの泣きつきを
沈痛な面持ちで受け取るしかなかった。
そして静かに ある事を告げた。
「仲間が………人質にされた」




