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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆大騒ぎ・2学期編◆
80/228

使い方次第

「レミちゃん?」


不明(アンノウン)』に突然の訪問者が現れた事で

イズミは驚いている。

レミは険しい表情でイズミを睨んだ。


「何してるのよ!他人を引き込まないって約束したじゃない!」


イズミの隣で眠っている男子生徒に目を向けた。

この男子生徒は能力者ではない。


イズミは この生徒に自分の能力(チカラ)

明かしてしまった事になる。


「レミちゃん、聞いて」


イズミが立ち上がり

近付いてきたレミの手首を掴んだ。

イズミが触れた事で

レミは『石』の力からイズミの本来の能力(チカラ)による

作用に切り替わった事に気付いた。


イズミの顔は真剣だった。

闇笑(やみわら)い』の異名を持つイズミが笑っていない。


「彼がここを求めたんだ」


「え?」




――――――




「受験ノイローゼ?」


「うん」



イズミは 眠る生徒を背に話し出した。

生徒の顔を見ると 目の下にクマができ

少しやつれているように見えた。


「家族や塾からのプレッシャーが凄いらしくてね、

トイレで うずくまってたの。

たまたま そこでボクと会って 彼の話を聞くことになって……」


イズミがいつもと違った。

男らしくなく、ヘラヘラした顔に

言葉語尾を伸ばす………

これがレミの抱く イズミの印象だった。


まるで今、自分の前にいるイズミは別人に見えた。


「『誰もいない静かな所に行きたい』って(つぶや)いたの」


「………それで引き込んだって事?」


「うん」


レミは複雑な思いで ため息をついた。


「ちゃんと眠らせてから連れてきたよ。

だから彼はここがどこだかわからないし、

ボクの能力(チカラ)も教えてない」


「……………うぅん」


レミは(うな)った。

イズミは 以前のように自己中心で他人を引き込んだのではなかった。



「みんな心配してるのよ」


「…………ごめんね」


「それに………やっぱり一般人をこの中に

入れるのは良くないわ」


「………………」



イズミの表情が 曇っていった。



「ねぇ、レミちゃん………

ボクは会長の創る世界で何ができるかな……」


「え?」


「ボクの能力(チカラ)は人の役に立たない……

会長はボクの能力(チカラ)を好きだって言ってくれるけど」


「………」


「今日だって、ボクは彼の求めた事に

応えてあげられるって思ったからやったんだ。

『頼りにされたら応えろ』って教えてもらったから」


「影井………」


「これでもダメなの……?

ボクの能力(チカラ)は どこにも生かせないの?」


イズミの悲痛な思いが伝わってきた。

薄野(すすきの)ソウタが創りたがる理想の世界で

自分は仲間や人の役に立ちたいと思うようになっていた。

だが、影の中に引き込む能力(チカラ)

その役目を見出だせずにいた。


「……目覚めたきっかけがボクを(いじ)めたモノだから?

だから人助けは出来ない能力(チカラ)なの?」


イズミの目が少し潤んでいた。

レミはイズミの訴えに心を痛めた。


「攻めたりして悪かったわ」


レミは最初に怒鳴った事を侘びた。


「あたし達の能力(チカラ)は使い方次第で良くも悪くもなるわ。

……要は能力(チカラ)じゃなくて使用者自身なのよ」


「………?」


「お金と一緒よ。使い方次第で良くも悪くもなるでしょ?

でも「お金」が悪いんじゃなくて「使用者」の問題なのよ。


あたし達の能力(チカラ)だって一緒だと思わない?

あたし達が能力(チカラ)を悪いように使わなければ

どんな能力(チカラ)だって役に立つわよ!」


「……レミちゃん、会長と同じ事言ってる」



イズミは まだ頭をかしげて困惑の表情だった。


「そうだ!前にあたし達の事

咄嗟(とっさ)に守ってくれたじゃない!」


ハルマとソウタが戦った時

爆発で揺れる旧校舎からユエ、レミ、エナを震動から守るため

影の中に引っ張った事があった。


「そーゆー事よ!わかる?」


「う、うん」


「難しく考えなくていいのよ!ね?」


レミはイズミが元気になるようにと

笑ってみせた。

イズミは 理解したのか目の光が少し戻ってきた。




―――――――




「うぉお!!イッイズミ!!」


「レミ!!」


レミとイズミは 元の世界に戻ってきた。

地面から這い上がるように出るので

いきなりエイジとユエの影から出てきた2人に

エイジは かなりビックリした。


イズミによって引き込まれた生徒は

眠ったままレミに抱えられて一緒に戻ってきた。


イズミの代わりにレミがエイジに事情を説明すると

エイジはイズミの頭をゴツンと殴った。


「バカタレッ!会長の話をなんも理解してないんか お前は!?」


「うぅ……」


「と、時任さん まぁまぁ……」


レミが 殴られたイズミを見てちょっと不憫に思えた。


「ホンマに悪かったわ、レミちゃん。ありがとうな。

ほれ!お前も言わんかい!」


「ごめんなさい……」



しょんぼり顔のイズミを見て

レミは 母性本能が働いたせいか

励ましてやろうという気になっていた。



「レミちゃん………」


イズミが(つぶや)く。


「なに?」


「……………付き合って」


「…………しょうがないわね」



レミはこの「付き合って」を

イズミの孤独を癒すための「付き合って」だと思った。

前回の経験があったから。



「わぁーい!!」


イズミが いつもの笑顔のイズミに戻って

歓喜の声をあげた。


「ん?えっ?なに?」


レミは気付かない。


「レミちゃん………ホンマかいな」


「レミ…………あなた」


「えっ?えっ?………ぅええぇッ!?」


ようやく気付いた。レミは冷や汗をどっぷり流した。


「ちがっ、ちがうわよ!そーゆー意味で言ったんじゃ……」


「わぁーい わぁーい♪」


「コラッ!ちょっと影井ッ!!」


「聞いてたよねー?時任くーん♪」


「聞いてしもたな……」


「レ……レミ……」


ユエは 今にも吹き出しそうになる笑いを(こら)えていた。


「イヤーーーーーーーーッ!!」




こうしてまた 公認(レミ以外)のカップルが誕生した。


※後日 生徒会宛にブラックダイヤモンドの請求書を叩き付けに行きましたとさ。

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