スタート地点
トールは立ったまま ハルマを見つめ
それから頭を掻いた。
さっきまで憎らしくて
何度も何度も 引き裂いてやるって
思ってた男が……
「……はぁ……もう」
トールはどうしたらいいかわからなくなってた。
壊してしまいたかった物が
突然 二度と手に入れられないような
唯一無二のモノに変わり
強さが全てだとばかりに振る舞ってた暴君が
本当は この世の中の『普通』に怯えて
身を潜めて生きるしかない弱者だった。
それは少なからず自分も一緒で
大多数の『普通』に立ち向かえず
生涯ずっと隠れて生きてゆかねばならない
生まれた時から日陰者。
(僕も コイツも)
(だから、抗ったのか)
(あえて能力を使うことで
自分がこの世に存在する証明を
してみせようと)
「……やりすぎだよ、まったく」
「ん?」
「今日の事が周りにバレたら
もう二度と出来なくなるでしょ」
「……」
「もう少し考えてやりなよ」
「……ハハッ」
「?……なに笑ってんのさ」
「また相手してくれるんだなって」
「……は?」
「『出来なくなる』って事は
やりたいって気持ちがあるって事だろ?」
「……」
「ちがうか?」
(頭悪いクセに そーゆー切り返し方は
賢いんだな この馬鹿。
コイツのためを思って言ってやったのに)
「わりぃ、……ありがとな」
「……今日は引き分けね」
「あ!?なんで!!」
「地面壊して中断したから」
「だからそれはオレの勝ちだろ!?」
「『動いたら負け』なんてルールじゃない!
そもそも勝敗の基準は何さ!?」
「それはオレがその時、決める!!」
「この馬鹿!」
キーン コーン カーン コーン
午後4時のチャイムが鳴った。
「帰る」
「おい、次は?」
「来週」
「週1かよ!つまんねーな」
「僕は戦闘狂じゃないんで」
「せめて週2にしてくれよ」
「……」
「な!な!?」
「……いーよ」
「やった!!」
「その代わりケータイの弁償代持ってきて」
「すみません、来週でいいです」
こうして2人の
内緒の活動が始まった