ユエのスランプ
~ 図書室 ~
「………………」
ユエは いつも持ち歩いている
紫色の表紙で閉じられたホロスコープ表に
目を落として ため息をついた。
星座や天体の記号を見つめ
『水星』の記号を 指で優しくなぞった。
―――――――
~ 放課後 ・ 旧校舎 屋上 ~
「あれ、武藤さん?」
旧校舎の屋上にユエは 一人でやってきた。
屋上にはトールが一人で地面に座り本を読んでいた。
ユエは まずバトル目的で屋上には やってこない。
レミに用事があると たまに顔を出して観戦するのが
いつもの流れだった。
「レミ……来てない?」
「来てないよ。ケータイは つながらないの?」
「レミ、この間 壊したらしくて」
「あっ………あの時か」
(※ VS ダイゴの時にハルマの電流を浴びてショートした)
「教室にいなかったから 屋上だと思ったんだけど……」
ユエは視線を地面に落とした。
「…………どうしたの?」
なぜか気を落としているユエに気付いたトールは
本をバッグに戻して ユエに近付いた。
ユエの心臓が弾んだ。
トールに想いを寄せているが、想いを口にした事はない。
生徒会との対決の際に トールの胸で泣いた時から
2人は 煮え切らない関係になっていた。
トールは ユエに近付いてからハッと気付いた。
今 この屋上には2人しかいない。
突然 緊張感に襲われたトールの心臓も弾んだ。
「ご……ごめん、清水さん 探してるんだよね。
呼び止めたりして………」
「いえ……ここに来るかもしれないから」
煮え切らない2人は お互いにドギマギしあっている。
「…………樋村君、聞いてもいい?」
「なっな何?」
思わず 吃った返事をしたトールは赤面した。
だが、ユエが切り出した話は
そういった類いの話ではなかった。
――――――
「…………霊が見えるか?」
「ええ」
2人は屋上の柵を背に寄りかかりなかがら会話を続けた。
「樋村君って霊能力者でしょ?
だから……霊が見えるのかしら?
地縛霊とか……悪霊とか……」
「僕には見えないよ。
正確に言うと「映らない」ようにしてるんだ」
「………?」
「霊視ってわかるかな。霊を視る力だけど
僕には必要ないから取り除いてもらったんだ」
トールは 自分の生い立ちをユエに語り始めた。
「僕は産まれる前から 物凄い霊気を持ってたらしくてね……
それを喰らいにきた妖怪が僕の体の中で取り合いを始めて……
そのままの状態で産まれてきたから
僕と妖怪は一心同体になっちゃったんだ。
お祓いとか徐霊とか たくさんやったけど
どれも効かなかったから………
だから、僕自身が妖怪の力に負けないように鍛えるしかなくて
今の この状態になったんだ。
……前置きが長くなったけど
僕は自分の体に宿った妖怪を抑えるためだけに霊能力を使ってるから
普通の霊能力者がやってるような霊視だとか
徐霊とかの力は必要なくて覚えなかったの」
「………そうなのね」
「それが、何か関係あるの?」
「………私……未来が読めなくなっちゃったの」
「えっ?」
ユエは稀代の占星術師一家に産まれた生まれつきの占術師だった。
ホロスコープや星の動きを見ただけで
近い未来を読む力を持っていた。
現に、ユエはトール達と出会う前に
トール達の存在を知って「バトル倶楽部」に
引き込まれたくないからと避けていた事があった。
「前は……目を瞑れば 映像で見るかのように
未来を見ることができていたのに……
見えなくなってしまったの」
ユエの顔色が変わった。
「ちょうど……夏休みに あの人達と戦った後から……」
トールは ユエの深刻な悩みを聞き入れる体勢を取った。
――――――――
「クッソ、居残りなんてさせやがって……!!
オレの大事な放課後……!!」
「あっ!ハルマん!」
「ゴリか!お前も屋上来いよ」
「今 行っちゃダメ!」
「あぁ!?なんでだよ!!」
「女のカンよ」




