臨時教師の屋上破り
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「ぅおおぉぉーッ!!」
一人の男が歓喜の叫び声を上げた。
「なんて偶然なんだッ!!
久しぶりに燃えてきたぜ!!!」
男は本当に燃えていた。
―――――――
「交通事故で骨折?」
「そうみたい」
旧校舎の屋上で トールとハルマが
取っ組み合いをしながら
日常会話をしていた。
1学年の体育の授業を担当している
教員が交通事故により 学校を休むという話が流れた。
「代わりの先生が来るんだろうけど」
トールはハルマに蹴りをかます。
「だろうな。まっ、オレにゃ関係ねえ」
ハルマはトールの蹴りを避けて
右フックを繰り出す。
「ちゃんと授業出なよ。留年するよ?」
トールはハルマの右フックをガードして
白虎の手でハルマを引っ掻く。
「イッテ!留年して ずっとここで
バトって過ごすのも良いな!おりゃッ!!」
ハルマは仕返しに電流をまとわせた手で
トールのお腹を突いた。
「イッタ!この馬鹿!能無し!!」
「ンだと コラァ!!」
「あんた達 器用ね~」
戦いながら会話をするハルマとトールの
観戦をしながらレミは感心していた。
「臨時の教師が来るんでしょ?どんな先生かしらね~」
―――――――
~ 翌日・授業(体育) ~
バシィンッ!!
「今日から臨時で体育の授業を担当する遠藤 ダイゴだ!!」
大声で生徒の前に仁王立ちして
自己紹介をした遠藤ダイゴ教師は
一瞬の内に生徒からドン引きされた。
理由としては 大声もそうなのだが
今の時代に そんな格好の教師がいるなんて おかしいという事だ。
遠藤ダイゴ教師は 10月初旬の肌寒くなった時期にも関わらず
黒のタンクトップ 1枚と下は柔道着のズボンのような
ヒラヒラした白い布地 1枚。
そしてゲタを履き、竹刀を構えている。
筋骨隆々。顔は濃ゆいときた。
時代というか どこの漫画の世界から
飛び出てきたんだアンタはと
ツッコミたくなる出で立ちの 臨時教師がやってきてしまった。
遠藤ダイゴ教師は
校内では誰も知らない者はいない存在になった。
――――――
遠藤ダイゴが 体育の授業に就いてから
生徒からの不満と非難がすさまじかった。
授業内容はスパルタ。
竹刀で生徒を叩く事はないが
構えてるだけで威圧感は万歳。
特に男子生徒に厳しく、一分の隙も与えなかった。
「チンタラ走るなぁー!!」
「オラオラどうしたぁー!!」
「お前らは青春も知らんのかぁー!!」
とにかく うるさくて うざったい。
「貴様ら もっと心を燃やせー!!」
これが口癖だった。
――――――
~ 火曜日・放課後 ~
「ハルマ、ごめん……僕 今日ムリ」
「はぁ!?なんで!!」
「体育の授業がキツくて……筋肉痛になっちゃった」
「おまッ……毎週オレと戦ってるヤツが そんな事で」
「体育の授業出ろよ、赤嶺」
トールの隣でアキトも腰を押さえながら
痛そうな表情で訴えた。
「お前、サボってるから知らないだろ。
とんでもないぞ、あの臨時教師」
「参っちゃうよ……早くいなくならないかな あの人。
体が持たないよ、これじゃ」
「能力者が漏らす言葉じゃねぇな」
「あのね、一応僕らだって
怪しまれないように普通の身体能力で授業受けてるの!
ここと一緒にしないでよ」
「へーへー」
「ありゃ、みんな大丈夫?」
レミが屋上にやってきた。
レミはハルマと一緒でピンピンしている。
「清水さん、なんともないの?」
「あたしは大丈夫よ」
レミは天性の武道の才を持っているので
体力には自信があった。
「『一緒に世界目指さないか?』って言われたわ」
「なんだそりゃ」
「てかさ、あの先生 なんか熱いわよね?」
「口癖が『心を燃やせ!』だからな」
「そうじゃなくて物理的によ」
「物理的?……どーゆー事?」
「なんか近くに寄られた時、めっちゃ熱かったのよ。
あの先生の体温」
「寄られたって、お前………」
「ヤダ!勘違いしないで!!
だから『世界目指さないか』って言われた時よ。
ムワッとした感じがしてさぁ」
レミが 詳しく話そうとした時だった。
バタァーン!!!
「たのもぉぉーッ!!」
全員固まった。
屋上の扉を勢いよく開けて入ってきたのは
今、まさに話題にしていた
臨時教師の遠藤 ダイゴだった。
いきなりの出来事に 4人は 固まるしかなかった。
立入禁止の旧校舎に無断で侵入していることがバレた。
いや、なぜバレた?
薄野ソウタの能力で
自分たちの姿は外から見えないはず。
心臓がヒヤヒヤする感覚に落ちながら
4人はこの場をどう取り繕えばいいのか考えていた。
臨時とはいえ教師だ。
バレてしまった。もうこの屋上は使えなくなる………
「なるほど、貴様らか!」
「え………?」
遠藤ダイゴは 4人が無断で旧校舎にいることを
指摘しに来たのではないという発言を始めた。
「強い奴等がココにいると聞いたのだ!!」
「はっ………えっ………?」
「まさか1年生だったとは!!
お前は樋村だな?それと桐谷か!
オォォ!!清水!!やっぱり!!こりゃスゴいな!!
それと……………」
全員が唖然とした中で
遠藤ダイゴは ハルマを見て言葉を止めた。
「………ムッ!お前は一度も俺の授業に参加していない
赤嶺ハルマだな!!」
「…………なんだよ、アンタ」
「教師に向かってなんだ その口は!!」
「えっ遠藤先生!待ってください!!」
トールが 2人の間に割って入った。
「どーゆー事ですか?僕らが無断でここにいる事を
叱りに来たんじゃないんですか?」
「初めに「たのもう」と言っただろう。
ここに人が居る事は知っていた!」
「えっ!?」
「そしてこの場に来れば強い奴がいるとも聞いたッ!」
「えぇっ!?」
「勝負だ貴様らッ!!!」
「えぇーーーーッ!!??」
4人は訳のわからないまま
遠藤ダイゴの屋上破りに立ち向かう羽目になった。




