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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆大騒ぎ・2学期編◆
69/228

新入部員と微妙なカップル

「先輩」


アキトの手が モモの背中に触れた。


「先輩、俺です」


アキトは小声で優しく(ささや)いた。

モモの近くに来たためか、根の攻撃が止みはじめた。



アキトの体は泥と血にまみれて悲惨な状態だった。

モモが 自分の姿を見たら驚いて

余計なショックを与えてしまうだろうと思ったアキトは

無理にモモの顔を上げさせなかった。


背中に手を置いたまま

アキトは モモの隣に しゃがんだ。



「作り直しましょう。俺が手伝いますから……」



この言葉で ようやくモモは顔を少し上げた。


しっかり顔を見ぬまま モモは

アキトの膝の上に顔を(うず)めて

声を上げて泣きはじめた。


辛かったのと、アキトが来て安心したのとで

しゃくり上げて泣いている。


すると さっきまで乱暴にアキトを襲っていた根の軍は

地面へと帰って行った。


モモとアキトを残して

箱庭は静かに役目を終えた。




―――――――




『最後に助けてくれ』と

アキトに言われた言葉を理解したトールは

すぐに自分の能力(チカラ)

アキトの体を元に戻した。

モモを助けに行くと覚悟できたのは

トールの能力(チカラ)を当てにできたからだった。



「樋村がいなかったら無理だった

……ありがとう」


「ううん」


2人はモモが落ち着くまで

箱庭のあった場所に居続けた。




――――――




~ 火曜日・放課後 ~




(ちっちゃい………)


ユエ、レミの第一印象もこれだった。


アキトはモモを連れて旧校舎の屋上にやってきた。


ハルマ、トールも含めて全員が集まっている。


モモは 緊張からアキトの腰の端の

シャツをしっかり握ってアキトの背中に隠れた。



「かわいぃーーッ!!」


「レミ、 2年生の人よ。失礼。」


「チッ……たくよぉ」


ハルマは前回の騒ぎの時、

トールに言われて薄野(すすきの)ソウタを探しに走り回ったが

見つけられず、戻ってきたときには事が収まっていたので

骨折り損だったと不機嫌を隠せないでいた。



「そいつのせいで いろいろヤバかったんだぜ?」


「ハルマ!」



モモは相変わらずアキトの背中から

姿を見せなかった。

と、いうのも原因はハルマだった。

不良のハルマに脅えて 声すら出せないでいた。


「赤嶺、消えてくれ」


「言い方キツくねッ!?」


「ん?あぁ すまん。

じゃあ 申し訳ないが 消えてくれ」


「謝りゃいいってモンじゃねぇよ!バカかテメェは!!」


「ハルマ、話が進まないから とりあえず」


「あぁークソッ!」


ハルマは屋上の隅っこに移動して座って いじけた。



「もうコワイ人いないから大丈夫ですよー

モモちゃん先輩!」


「あなたフランク過ぎよ」


モモがアキトの影からチラッと顔を覗かせた。


「先輩、みんな俺の友達です」


「………………」


「会いたかったんでしょう?」


「…………ハ、ハハィ」


ようやくモモは皆の前に出てきた。

赤面しながらも 自己紹介を終えたモモは

まだ恥ずかしさがあるせいで再びアキトの横に戻った。



傍目(はため)から見たら兄妹ね」


「犯罪だぞー!桐谷!」


「うっさい!ハルマん!!見た目で言うな!!」



「あの、ところで………」


トールが話の本題を切り出した。


「この間の事、覚えてますか?若林先輩」


「こっここ………この前?」


モモは 箱庭で起こった騒動が

自分が引き起こしたものだと気づいていなかった。


ユエ、レミはトール達から話を聞いていて

モモが能力(チカラ)に目覚めた事を知っていた。



「トール君、ちょっと」


レミはトールだけ呼びつけて

アキト達から離れて話を始めた。


「モモちゃん先輩の花壇を壊した犯人は

アッキーのファンクラブの女子達だったわ」


「えっ?」


「ちゃんとシメといたから、もう大丈夫よ!」


「スケバンみたいだね清水さん」


「アッキーには内緒にしておいて。

ファンクラブの事、知らないみたいだけど

自分のせいでモモちゃん先輩の花壇を

壊しちゃったんだって思いかねないでしょ?

せっかくアッキー、イイ感じなのに……」


「そうだね……」



夏休みの生徒会との対決の後

アキトは少しずつ「愛」の感情に気づき始めていた。

モモの箱庭に引かれて通うようになったのも そのおかげなのに

真相を知って 責任を感じて モモから離れてしまったら

いくら不可抗力とはいえ、かわいそうだとレミもトールも思った。



「またあの体育館の裏庭に花壇作るのかな?」


「あそこ、陽当たり悪いっしょ。

もうちょっと良いとこにしてあげたいわよね」


「そうだけど……勝手に作れないし

またこの間みたいな事が起きたら……」


「モモちゃん先輩の能力(チカラ)のコントロールも教えなきゃね」


「うーん………」



トールは頭を項垂(うなだ)れて考え込んだ。


――――――その時だった。




――――――――――




「えっ!本当ですか!?」


『あぁ、全然 大丈夫だよ樋村くん』


トールは かかってきたケータイをとって

ある人と会話をしている。


相手はなんと生徒会長の薄野(すすきの)ソウタだった。


『同胞が出来たのだからね!

俺にとっては大歓迎な事だよ。

ちょっと「空間」広げるくらいワケないさ』


ソウタはモモの事を知って、

モモのために旧校舎の脇に残っていた

花壇の跡地まで『空間』を張ると言ってくれた。

そこならば誰にも気にされず園芸が出来るから。



『とりあえず俺が卒業するまでは そこで続ければいい。

その後の事は俺も考えているから……』


「あっ、ありがとうございます!薄野会長!」


『ノープロブレムさ!ははは』


「ところで薄野会長………

なんで僕の番号知ってるんですか?」


『それもノープロブレムだよ樋村くん』


「会話成立してませんよ。問題アリなんですけど」


『そうだ、近々その娘を生徒会室に連れてきてくれ。

それじゃあ!――プッ。』


「……………」



トールは思った。

姿は違うが この人もハルマと同じタイプだと………。





会長の話をアキトとモモに伝えると

モモは喜んでニッコリ笑った。

アキトもモモの顔を見て微笑んだ。



「カップル成立ね~~ステキだわ~~」


「レミってば、顔がニヤけすぎ」


「…………でも、なんか忘れてる気がするんだけど」


トールを含め、ユエ、レミも

ある事を失念していた。


ハルマがボソッと呟く。



「なんだよ、オレよりアイツの方がよっぽどコワイのに」


「!!!!」



全員気付いた。


アキトのもう一人の人格。


殺気を放つ戦闘狂。




モモが知ったら気絶では済まない。


即死レベルだ。



全員に冷や汗が流れた。




当のアキトはとっくに気付いていた。


(この人の前では能力(チカラ)を見せらんない……)




こうして「バトル倶楽部」に新しい部員と

緊張感たっぷりのカップルができた。


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