アキトと箱庭少女 2
「ひゃっ」
カランッ
「!」
アキトの後ろで変な甲高い声と
金属が落ちる音がして アキトは振り返った。
一人の女子生徒がアキトの姿を見て その場で固まっている。
女子生徒の足元にスコップが落ちていた。
「あ………すみません」
アキトが とりあえず謝ると
女子生徒は一目散に逃げていってしまった。
アキトは茫然と立ち尽くした。
(………スコップが……)
女子生徒は自分が落としたスコップに気付かなかったのか
忘れていってしまったので アキトは拾った。
~ 翌日 ~
アキトが部活を終えると
何人かの女子が声をかけてきた。
先日 レミが誕生日プレゼントを渡して
アキトが受け取ったのを知った女子たちが
自分のも……と、いろんな包みを持ってやってきた。
アキトは レミの時と同じ表情で
全員の包みを受け取った。
プレゼントを 詰め込んでパンパンになったリュックを背負って
アキトは体育館の裏庭へと降りた。
そっと箱庭へと近付く。
花壇で背中を丸めて何かをしている女子生徒がいた。
アキトは昨日の人だと確認すると静かに近付き声をかけた。
「あの」
「ひゃっ!!」
昨日と同じ変な甲高い声で 女子生徒がビクッと動いた。
女子生徒が一目散に逃げようとしたので
アキトが声を出した。
「スコップ!」
「……!!」
女子生徒がアキトの声に反応して
立ち止まり 振り返った。
「わた、わゎ……わたしの……」
アキトが近付いてスコップを女子生徒に渡す。
「あぁありがとうございます」
控えめで か細くて 申し訳なさそうな小さい声が お礼を言う。
アキトは気付いた。
この女子生徒、小さいのは声だけではない。
全てが小さい。身長も 手も足も小さい。
トールやユエも小柄だが さらに小柄。
自分の背が高いから そう見えるのではなく本当に小さい。
ただ ただ そう思った。
女子生徒が そそくさと箱庭へ戻るとアキトも箱庭に目を向けた。
植物や花に興味があるわけではない。
だが、すごくこの箱庭が気になる。
アキトは自分が箱庭に釘付けになっているのに
気付かないくらい ジッと見ていた。
「あぁ あのぅ」
「!」
「えぇ…え園芸 すす好きなんですか?」
「え、いや」
「!!!」
女子生徒が ショックで今にも泣き出しそうな顔になったので
アキトは慌てて言葉を繕った。
「そうじゃなくて 良い花壇だなって思って……」
「ほほ本当ですか!?」
「うん、ちょっと見たいんだけど」
「はっはははい!!」
女子生徒の声が明るくなりイキイキし始めた。
「こっこれは ローズマリーです!
あっちはレモンバームとバジル!
こっちにあるのがカモミールローマンで……」
聞いてないのに女子生徒が嬉しそうに話すので
アキトは黙って聞いていた。
なぜか全然 嫌じゃなかった。
なぜだろう………。
女子生徒の話を聞きながらアキトは考えていた。
さっきまで オドオドしていた女子生徒が
いきなり元気になって楽しそうに話している。
話の内容は植物や花の事ばかり。
「植物が好きなんだ?」
「ハッハイ!大好きです!!」
アキトは 理解した。
なぜ、この小さな箱庭に引かれたのか。
この箱庭にはアキトが求めているモノがたくさん込められていた。
また、この箱庭への想いを純粋に語る女子生徒がいる。
「あの」
「ハッハイ?」
「名前は?」
「あっこれはサルビア・セージです」
「違う、君の名前」
「ひぇえッ!?」
女子生徒は 驚いて後ろに 3歩も引いた。
アキトは生まれて初めて女子生徒に興味を持った。
と、言っても そーゆー感情のモノではなく
文字通りの「興味」を持った。
「わ、わゎわたしは若林 モモ……です」
若林 モモは モジモジしながら
恥ずかしそうに自分の名前をアキトに教えた。
「に、に、2年 A組です」
「2年ッ!?」
「ごっごごごめんなさい!!」
ちっちゃな女子生徒 若林 モモと
アキトの 不思議な交流が始まった。




