トール VS ハルマ
月曜日、初めての風紀委員会だったが
全く話が頭に入ってこなかった。
「樋村くん、大丈夫?」
「…あ、うん」
同じクラスの女子風紀委員に
心配されるトール。
明日の事が憂うつで仕方なかった。
あの馬鹿男、ハルマと約束した決闘が。
(あーもう……
単刀直入も言えない馬鹿がいる
高校になんで入学しちゃったんだろ
ってか、あんな頭でよく入学できたな あの馬鹿)
委員会が終わって帰り支度をするトール。
(明日、雨降ってくれないかなぁ……)
~次の日~
「やー、良い決闘日和だな♪」
旧校舎の屋上で
ハルマがご機嫌で待ってた。
「……黙れ」
「『黙れ、小僧!!』」
「やめろ。も〇のけ姫が汚れる」
「よくわかったな!オレのモノマネ!」
(こんなヤツに付き合ってる僕も馬鹿だ)
「……さっさと始めるよ。
それで二度と僕に近寄らないで」
「勝ってから言えよ」
トールはブレザーを脱いで
屋上の出入り口の角に畳んで置いた。
「あの中に新しいケータイ入ってるから
あれに何かしたら殺してやる」
「いいね、それ」
ハルマはずっとご機嫌だった。
トールはハルマのニヤニヤした顔が
とにかく腹立たしくて
どうしてやろうかいろいろ考えた。
バチバチッ
ハルマの体から火花が弾けた。
「よっしゃ、いくぞ!」
(コイツのスピード…不規則すぎて読めない。
白虎のスピードで互角だった)
トールの腕にいる封印された四匹の
妖怪はそれぞれ特徴があり
その特徴からトールは四神の
『青龍・白虎・朱雀・玄武』と名付けていた。
『白虎』はトールの右腕を
白色の獣の手に変えて物理的な
攻撃を可能にする。
身体能力も上がって常人離れの
力を手にいれるのだが
これに対抗できる人間がいるとは
思ってなかった。
(まずは この馬鹿の能力を把握しないと勝てない)
トールは左手首の封印札をほどいた。
左腕から緑色の気が放たれる。
「……?」
ハルマはトールの様子を見て
仕掛けて来なかった。
左腕から出た気はトールの
周囲をドーム状に囲んで
その形を成していく。
「『玄武の甲羅』」
ドーム状になった気は
薄いベールの様に透けていて
お互いの姿が確認できるように
なっていた。
「なんだそりゃ?」
「僕はここを動かないから」
「はぁ?!」
「お好きにどうぞ」
トールは腕組をして立つ。
ハルマはトールをひと睨みすると
トールの視界から消えた。
そして
ガガンッ!!!
トールの背後にハルマが現れたが
緑色のドームに遮られて攻撃に失敗し跳ね返された。
「あぁ!? クソッ!!
なんのつもりだお前!!」
「なんのつもりって…
自分の身を守るのも立派な戦闘方法だと思うけど」
「ざけんな!」
ハルマが赤い電撃をまとった
右ストレートで殴りかかったが
ドームに跳ね返される。
「コノヤロ…!卑怯だぞ!!」
トールはハルマの言葉を無視した。
トールは自分の身を守ると同時に
ハルマの体を観察することに徹した。
その間に何発もドームに向かって
殴りかかるハルマ。
ドームを壊そうとして奮闘している。
(人間には元々、微弱電流が流れてる。
たぶんコイツはその微弱電流を
自在に放出できるんだろう……微弱どころじゃないけど。
赤色なのは血液が関係してるのか?)
トールはハルマの分析をしながら
ハルマの攻撃を見続けた。
「ハァッ……クソッ!!」
疲れたのか諦めたのか
ハルマは腕を下ろした。
そして少し後ろに下がって
距離をとった。
(何するんだ?
また突進でもしてくるのか?)
バチンッ
バチンッ
バチバチバチバチバチッ
「!?」
ハルマは両手を上にかかげて
火花を大きく散らした。
それは次第にボール状に丸くなった
赤色の電撃に変わっていく。
トールは顔から冷や汗を流した。
(コイツ……まさか……!!!)
電撃は大玉になり
ハルマはそれをかかげたまま
トールの足下めがけて突っ込んでくる
(そんなもんぶつけたら地面が吹っ飛ぶ!
壊す気か、この屋上を!
こんな事、周りにバレたら大変な事に……)
ズドォォォォォーーーン!!!
トールの心配事は見事に的中した。
トールの足元付近が粉々に砕け
クレーターのように破壊された。
破壊音に地面損傷
見つかったら言い逃れのできない状況。
後先を考えないハルマの攻撃は
ただただトールの態勢を崩すためだけだった。
(この馬鹿!!
どうしてくれるんだ、この始末)