薄野 ソウタ
「『全部』にしよう」
「えっ?」
会長 薄野ソウタが突然切り出した。
「フィールドだよ。俺達が戦う。
旧校舎『全部』にしようじゃないか」
「はぁぁッ!!?」
ハルマは 驚愕のあまり大声をあげた。
トール達も驚いている。
「んなッ そんな事していいのかよ!」
「いまさら何を言うんだ。楽しもうじゃないか」
薄野ソウタの目は まるで子供のように
らんらん としている。
「君に 5分あげよう」
「!?」
「その間に旧校舎内のどこでもいいから
隠れてみてくれ」
「なんだそりゃ………ハンデのつもりか?」
ハルマの眉がつり上がる。
「違うさ、かくれんぼ だよ。
もちろん 攻撃してきてくれたって構わない」
「………ッ」
薄野ソウタの余裕な態度が気に入らない。
ハルマは睨み付けた。
「隠れて待てるほどオレは気ぃ長くねーぞ」
「それでもいいさ。
さぁ、そろそろ時間だ。行ってくれ」
ハルマは 薄野ソウタを もうひと睨みすると
屋上から出て下に降りていった。
「みんなは自由にしててくれ。
観戦についてきてくれてもいいが
巻き込まれないようにな」
薄野ソウタは、約束どおり
5分経つまで屋上に立ち尽くした。
まだ目は 子供のままだ。
トール達 4人はどうしたらいいのかわからず
お互いに目を合わせながら
とりあえず 薄野ソウタの 5分間に付き合った。
生徒会の4人も同じだった。
―――― 5分後。
「それじゃあ、行ってくる」
薄野ソウタは 自分の仲間の4人に
手を振ると屋上から出ていった。
「久々やなー、会長」
「そうですね」
「いーなー、ボクも遊びたーい」
「邪魔しちゃダメよ、イズミ」
生徒会の4人は口々に会話をする。
トール達 4人は まだ事の成り行きに身を任せられず
黙ったままだった。
――――――
カン カン カン ………
薄野ソウタの階段を降りる足音が
旧校舎の3階全体に広がる。
長い廊下、いくつかの教室、
窓は閉められ熱気が立ち込めている。
薄野ソウタは 3階の廊下を
一番奥に突き当たるまで歩いていった。
だがハルマの姿はない。
突き当たりに着くと また階段があり
今度は 2階へと降りていった。
2階も 3階と同じ構造。
薄野ソウタはまた長い廊下を歩く。
「隠れんの好きじゃねーんだよな」
ある教室の中からハルマの声がした。
薄野ソウタは教室に目をやると
ハルマが教壇に腰かけていた。
「隠れたって どうせわかるんだろ?」
「今は能力を使ってなかったさ。
純粋に君を探していたのにな」
薄野ソウタは ちょっと残念そうな顔で
ハルマのいる教室に入っていく。
「オレの能力は知ってるのか?」
「あぁ、少しだけ」
バチンッ!
ハルマは 火花を散らして
腰かけていた教壇から消えた。
薄野ソウタは 顔だけを動かして周りを見渡す。
「なるほど」
薄野ソウタは 教室から出た。
ハルマが教室からいなくなった事に気付いて
廊下に出た。
「そこだろ?」
「!!?」
まさにその瞬間だった。
廊下に出た薄野ソウタを狙って
ハルマが左から 電気をまとった状態で
殴りにかかる体勢だった。
だが、薄野ソウタと ばったり顔を合わせる形で
一瞬だけ時が止まった感覚になった。
ハルマは攻撃の勢いを抑えられず
バレたとわかっても そのまま殴りかかった。
薄野ソウタがハルマの拳を
片手の手のひらに包み込む。
そしてそのままクルッと手を回すと
ハルマも体ごと一緒にひっくり返って
背中から床に落ちた。
あっという間の出来事だった。
ハルマも自分に何が起きたのかわからず
廊下の天井を仰いだ。
「まだまだこんなモノじゃないだろ?」
薄野ソウタは 仰向けに倒れた
ハルマに向かって言う。
「楽しませてくれよ、赤嶺 ハルマ君」
いまだ その目は無邪気な子供の目のように
遊戯を楽しむ少年のように
とてつもない大きな能力を隠して
ハルマを弄ぶ。




