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放課後バトル倶楽部  作者: 斉藤玲子
◆ VS 生徒会編◆
49/228

会長の理想

夕立の雨は まだ引かずに

降り続いていた。


プール場から移動して

全員は旧校舎の保健室で雨宿りをしている。


トールは再び目を閉じていた。

ハルマに伝えたかった事を言った後

眠りに戻った。


クッションのない古びたベッドに

トールを寝かせ、ユエとレミが側で様子を見ている。

びしょ濡れだったトールの顔をユエがハンカチで拭った。


エナは ホコリの被ったソファに腰かけている。

エイジ、リュウ、イズミは

エナのソファの周りに寄りかかった。


ハルマは トールが横になってるベッドの近くの

窓際に立って 降り続く雨を眺めている。

その隣にアキトも立っている。



静まりかえった旧 保健室は

小さな世界を作っていた。


9人の人間離れした能力者が

広い敷地の狭い室内に集っている。




「………樋村くんは私たちの理想に近いわ」


エナが静寂を破って話し出した。


「誰かのために能力(チカラ)を惜しみ無く出せる……

きっと会長が気に入るわ」



「………あんた達の理想ってなんだ」


ハルマが窓の雨を見ながら

エナに聞いた。


「自分の未来と会長の理想のためって言ってただろ?

なんだよ、それって」


「…………私たちが『世界』に出ること」


エナは少し小さな声で

でもハッキリと自分の思想を語り始めた。


「私たちは特別な力を持って生きてる。

でも「異質」としか見られない。

力の使い方を間違えれば、私たちは

犯罪者よりも(たち)が悪い。

…………わかるわよね?」



イズミは過去に同級生を

自分の能力で廃人にしかけたことがある。


アキトは 人体兵器の実験で

生物を殺めたことがある。



他の者たちの過去はわからないが

一歩間違えれば 危険でしかない

能力者が 9人も集まっている。



「学校を舞台に『決闘ごっこ』なんて

子供のカワイイ遊戯に過ぎないのよ」


バチンッ


ハルマから火花が弾けた。

エナの今の言葉がハルマの(しゃく)に障った。


アキトが「やめろ」とハルマの

右肩に手を置いて引っ張る。


エナは続けて話した。



「使い方を正せば私たちは この世の中に

必要とされる生き方ができるのよ。


「異質」だと嘆いて泣く必要もなくなるし

親に捨てられる事もなくなる。

周りから変な目で見られる事も

陰に隠れて生きる必要もないの。


会長の理想は「能力者が表で生きていく世界を創る」事よ」



ユエとレミはトールの側にいるが

顔はエナの方に向いていた。


皆が一瞬、「会長の理想」に心を奪われた。


誰もが一度は自分の異質さに

落ち込んだことがあるから。

だから、「会長の理想」は自分達の

異質さを振り払ってくれるように聞こえた。

だが、ハルマは反発した。



「ざけんなよ」


「ふざけてないわ。本気よ」


「そんな世界を創ってどーすんだ」


「おかしな事を言うのね?

あなただって創ったじゃない」


「何?」


「「バトル倶楽部」よ。あなただって

自分の能力を使える場所が欲しくて

「バトル倶楽部」という世界を創ったのよね。

会長と一緒よ。あなた達が始めた事は」


「一緒にすんな!」


「悔しいの?あなたより先に会長が

この世界を創った事が」



ハルマがエナに向かって殴りかかりに

飛び出したのでアキトが

ハルマを羽交い締めに抑えこんだ。


エナをかばうように時任エイジと

布施リュウはハルマの前に立つ。



「仕方ないわね。まだ1年だもの」


エナはハルマを幼子扱いするような

口振りで吐き捨てた。

ハルマはムキになって全身に

赤い電流を(ほとばし)らせている。


ハルマを抑えているアキトが

痛々しそうな顔をしていた。



エナはスッと立ち上がった。

外を見ると雨が小降りに変わっていた。



「そのうち、あなた達もわかるわ。

そして会長の理想に賛同するでしょうね。

その時は私も会長も、あなた達を受け入れるわ」



ハルマ、アキト、ユエ、レミ、

そして眠り続けているトールに

目をやって微笑むと

エナは保健室から出ていった。


続いてリュウとエイジが

ハルマに警戒しながらエナの後を

追うように出ていった。


最後にイズミだけが残った。



「………ごめんね、みんな」


イズミが少し真面目な顔で言った。


「副かいちょー、会長の事 大好きだからさ。

あーゆー話すると神経張っちゃうんだよね。

悪気はないんだよ?

本当は君たちと仲良くなりたいはずなんだから」


イズミがニコッとハルマに笑顔を見せた。


「ボクは君たちの事 ともだち だと思ってるよ」



そう言うとイズミも保健室を出ていった。

(出てく間際にレミに向かって手を振った)




ハルマが自分の体の電流を抑えた。


「お前なぁ!ムキになんじゃねーよ!」


ハルマを抑えるため我慢して

電流を浴びてたアキトが怒った。


ハルマは怒りがおさまらないのか

黙ったままだった。


「ハルマん、落ち着きなって。

まだトール君寝てるんだから」



ハルマはトールの寝顔を見た。



もしトールがこの場で

目を覚ましていて、エナの話を聞いていたら

どう思っただろうか。



会長のいう「能力者が表で生きていく世界を創る」

思いに賛同しただろうか。



目を覚ました後、誰かがこの事を

トールに教えるだろう。

その時に会長の理想に共感するだろうか。



自分の思想と会長の思想は

とてもよく似ていた。



エナに図星をつかれムキになったし

意固地になってるのもわかっていた。



だからトールの言葉を聞きたかった。



お前はどっちに付いてきてくれるか、と。

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