トール VS エナ 2 ~乱舞~
◆登場人物◆
美作 エナ
18才・高3・女
身長160センチ・美人
貴金属を自在に操れる。武器に変えれば
その武器が壊れるまで使いこなせる。
生物の姿に変えれば壊れるまで生きた生物みたいに操れる。
美しさと能力を合わせて『鋼鉄聖女』と
布施リュウが名付けている。
会長の薄野ソウタを尊敬し、彼のために戦う。
「敗ける」なんて思った自分が情けなかった。
トールは自分の言葉に後悔した。
だが、それが逆にトールの戦う意志を強くさせた。
今まで以上に右手に まとっていた
白虎の気が強くなる。
エナが 槍を構えて攻めてきた。
トールは右手を 1回だけ大きく振り落とした。
バキンッと音を立て エナの槍の先が折れた。
エナはそれに気付くとトールから距離を取り
金属パイプの山へ手を伸ばした。
金属パイプは グニャグニャと変形していく。
次に姿を現したのは 2体の鳳凰のような美しい鳥だった。
2体の鳳凰は空を翔びトールの元へ迫る。
トールは自分の寸前まで鳳凰を引き寄せたあと
高く真上へ飛び上がった。
白虎の力を借りているので跳躍力が上がっている。
1体の鳳凰が飛び上がったトールの後を追って翔んできた。
トールの真下から鳳凰が突っ込んでくる。
逃げ場なしかと思いきや
トールは白虎化している右手を鳳凰に向かって振り下ろして
嘴の先からバキバキと
金属が砕け散る音を鳴らしながら
鳳凰を地面に叩きつける勢いで自分も地上へ着地した。
鳳凰は羽根の形だけを残して
地面に砕け散り静止した。
もう1体が近付く。
悲鳴のような鳴き声を上げて迫る鳳凰を
トールは左側に避け、同時に左側の翼を引っ掻け破壊した。
方翼を失った鳳凰は墜落し、
一角獣と同じように無様に地面を這いつくばった。
あっという間に2体の金属で出来た生物の攻撃を撃破し
エナは驚いた目をした。
それと同時に やる気が出たのか
手に力が入り今度は槍ではなく双剣に変えて
トールに迫ってきた。
エナは踊るように剣を振るいトールを翻弄させる。
トールも先程とはちがい 躊躇や迷いを無くした右手でエナに対抗する。
舞踏乱舞のプール場。
観戦している全員が息を飲んだ。
エナの美しい双剣の舞いに見とれているのか
トールの獣のような躍動に驚いているのか
おそらく どちらともだが
全員、一言も発することなく2人の乱舞を見続けた。
何分、何十分、経っただろうか
2人とも一歩も引かず戦いは続いた。
ふと、レミが空を見上げた。
入道雲が厚く空を覆い、今にも夕立が降ってきそうな
気候に変わっていっていることに気づいた。
キィンッ!!
つんざくような音が響き
トールとエナはお互いから離れ
間を取った。
長く続いた乱舞は決着がつかず
2人とも息を切らせていた。
気が付けば 試合終了まで10分を切っている。
トールは焦っていなかった。
それよりも、自分が何かのために
こんなに力を発揮できる事がわかって
正直嬉しい気持ちでいっぱいだった。
トールの顔を見たエナが決心したように言い出した。
「このまま時間切れじゃ、あなたに失礼だものね」
エナは 微笑むと金属パイプの山と
さらに サビて黒ずんだ鉄板の山にも手を触れた。
鉄板の山も 新品のような輝きを取り戻し
金属パイプと一緒にガラガラと音を立てて結合していき
今までで一番大きな物体へと形を変えていった。
「………!!」
「これで最後よ、樋村くん」
エナの背後には 3~4メートルの高さはある
三つ首の幻獣が咆哮を上げて具現化された。
獰猛で飛びつかれたら 右手の白虎だけでは
どうにも出来ないのがわかる。
エナは無理をしているのか冷や汗を顔に流していた。
エナがトールに向けて手をかざすと
大きな幻獣が
トールに向かって走ってくる。
トールは まだ息をあらげたままで
構えようとしない。
誰もがトールは疲れきって動けないと思っていた。
「トール!!!」
ハルマが叫んだ。
トールはハルマの声を確かに聞いた。
トールは微笑んだ。
僕は勝てるよ、と言いたそうに。
そして右手の白虎を消して
左手の封印札をほどき始めた。




